報酬が半分に?ビットコインのマイニング報酬の半減期と価格の関係を解説

[取材/文責]奥谷佳子

仮想空間の中だけで流通する通貨のことを「仮想通貨」「デジタル通貨」などと呼びます。その中の1つに、世界初のデジタル通貨である「ビットコイン」がありますが、取引が正しく記録されているかを検証するマイニング作業に対する報酬が半減するといわれています。今回はこのマイニングが及ぼす影響について解説します。

4年に1度訪れるマイニング報酬の「半減期」

ビットコインのマイニング報酬が半分になる

「ビットコイン」は「ブロックチェーン」と呼ばれる取引台帳方式を採用した世界初のデジタル通貨として登場しました。取引データを、登録されている個々のパソコン(ブロック)に分散保存し、ブロックを繋ぎ合わせること(チェーン)でデータの一貫性、整合性を確立するというユニークな方式を採用しています。これにより、ハッキングやシステム障害のリスクを大幅に減らすことに成功しています。しかし、ブロックチェーンを運用するためには、膨大な時間と労力を使ってブロックに分散した取引データが正しく格納されているかを検証する「マイニング」と呼ばれる作業をしなければなりません。「マイニング」に協力してくれた登録者には報酬としてビットコインが支払われます。ここで問題になるのが「ビットコインの発行枚数」です。ビットコインでは発行枚数に上限が設定されており、2,100万枚がその上限となっています。「マイニング報酬」の支払いはビットコインの発行で行われますので、このままマイニング作業が進めばやがて発行枚数の上限に達してしまいます。そこで、発行枚数の増加を抑制する目的で概ね4年に1度、マイニング報酬が半額になる「半減期」が設定されているのです。前回の「半減期」が2020年に起こったことから、4年後の2024年に半減期が到来すると予想されています。

「マイニング報酬」とは何か?

「マイニング(mining)」とは本来、発掘する、掘り起こすという意味です。ブロック内にある目的物(取引データ)に対して、膨大な数の計算を繰り返し行い正解値を導き出すことからこのように呼ばれています。「マイニング」によって取引データが正しく格納されていることが検証されれば報酬が支払われます。これが「マイニング報酬」であり、マイニングに成功した人が早い者勝ちでビットキャッシュを受け取ることができるのです。今回解説する「マイニング報酬の半減期」は、報酬がビットキャッシュで支払われるという点と深く関わってきます。先にも触れましたが、ビットキャッシュの発行枚数は上限2,100万枚と決まっており、そのうち約1,700万枚がマイニング報酬として既に発行されています。残り400万枚しか発行できない状態です。このまま報酬を支払い続け発行上限に到達した場合、それ以上の報酬は支払うことが出来ず、マイニングによりシステムを維持してきたビットコインの仕組みそのものが崩壊してしまいます。そこで、ビットコインの流通量を抑制するために、発行枚数が一定数に達した時、報酬を半分に減らす「半減期」を設定しているのです。

「マイニング報酬」とビットコイン価格の歴史

マイニング報酬の半減期は過去2回起こっている

2009年に登場して以来、ビットコインでは2012年、2016年、2020年と過去3回の「半減期」が起こっています。半減期が起こる周期は「21万ブロックが生成された時点」ですが、21万ブロックを生成するために要する時間が約4年であることから周期的に「半減期」が来ているように見えるのです。では、過去3回起こった「半減期」でビットキャッシュの価格はどのように変化したのでしょうか?結論から言うと、「半減期」到来前後で大きな価格変動は起こっていません。その他経済的要因によって、ビットキャッシュの需要が高まり結果的に価格は大きく上昇しましたが、「半減期」を直接的な要因とした価格変動は起こっていないように見えます。ただ、「半減期」の後はビットコインの供給量が少なくなることもあり価格が上昇する傾向にあるようです。

2024年に到来すると予想される半減期はどうなる?

2020年に起こった3回目から4年が経過する2024年に4回目の「半減期」が到来すると予想されています。過去3回の「半減期」と同様、2024年に到来する「半減期」も、それを直接的な要因とした大きな価格変動は起こらないと思われます。2009年当時と比較し仮想通貨を取り巻く環境が大きく変化していることも挙げられるでしょう。イーサリアム、リップル、カルダノといった他の仮想通貨が次々と登場し、仮想通貨を投資資産としてみた場合の選択肢が当時より大幅に増えています。かつてのように投資がビットコインに集中するという局面が昔より起こりにくい状況であることがその理由です。

ビットコインの価格は今後どう動くのか?

ビットコインの現物型ETFが登場

2024年に入り、ついにビットコインETFが上場されることになりました。上場されておらず、誰でも簡単に購入することができないビットコインに連動する形で資産運用することができるということもあり、今大きな注目を集めています。このビットコインETFは、ビットコインとETF(上場投資信託)を連動させた新しい金融商品です。連動することで、直接ビットコインを取得しなくてもETFを通して運用益を得ることができます。2009年の運用開始当初は1ビットコイン=1円程度の資産価値しか持たなかったものが、2012年の仮想通貨バブルを経て2023年には1ビットコイン=680万円の価格をつけるまでに成長しています。ビットコインETFが更なる仮想通貨バブルを起こす可能性は十分考えられるでしょう。

仮想通貨が抱えるデメリットにも注意を

将来的にもまだまだ伸びしろがあると思われるビットコインですが、デメリットもあります。最後に、ビットコインが抱えるデメリットについて列挙してみましょう。

1.乗っ取りのリスクが0ではない

「ブロックチェーン」を採用し、不正ログインやデータの書き換えに強いといわれるビットキャッシュですが、それでも乗っ取りのリスクが消えるわけではありません。マイニングを行っている個人や団体がマイニング能力の過半数を占有した場合、取引を自由自在に操ることができる「51%攻撃」を受ける可能性があるからです。現在、ビットコインの資産総額は1兆ドルを超えるといわれています。日本の国家予算に匹敵するような仮想通貨が乗っ取られたとしたら、世界の金融システムが大混乱に陥ることは必至です。

2.マイニングが環境問題を引き起こす

マイニングに使用するパソコンは、ライバルとの競争に勝つためどんどん高性能かつ大規模化しています。それに伴い大量の消費電力を必要とすることになります。世界規模で行われているこのようなマイニング能力の肥大化により、全体で消費する電力が年々増加し、環境問題にまで少なからぬ影響を与えているというのは驚きです。

3.取引処理の遅延

ビットコインはブロックチェーンを採用している関係で、取引記録が増加すればするほどブロックが増え取引処理に遅延が生じやすいという根本的な問題を抱えています。1ブロックに登録できる取引データが限られているため、この遅延問題は時間とともに顕在化していくものと予想されます。

まとめ

ETFに資金が流入した結果、ビットコインの時価総額が2年ぶりに1兆ドルを超えたというニュースがありました。時代と共に形を変えるスタイルを継続すれば、ビットキャッシュもまだまだ魅力的な投資資産であり続けるのかもしれません。

Webライター/ライター
フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。

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