アルトコインで収益がでたときの税金と確定申告について解説
通貨という名称が付いていますが、実際には手に取ることができない仮想通貨。代表例としてビットコインが有名ですが、最近ではアルトコインにも注目が集まっています。アルトコインで収益がでたという人も多くいるでしょう。ここでは、そんなアルトコインで収益がでたときの税金や確定申告について解説します。
アルトコインで収益がでたら確定申告が必要
アルトコインとビットコイン
仮想通貨には大きく分けてアルトコインとビットコインがあります。アルトコインとは、ビットコイン以外の仮想通貨のこと。ビットコインが有名なため、ビットコイン以外を「アルトコイン(代替通貨)」と呼んでいるのです。
アルトコインなどの仮想通貨は、2017年4月1日施行の改正資金決済法で、現金等と同じく物品等を購入したりサービスを受けた際の支払決済手段として位置づけられました。また、貨幣と同じような価値を持つものの、現金などの法定貨幣としては認められていないことも特徴の1つです。
アルトコインにはどのような税金がかかる?
では、アルトコインにはどのような税金がかかるのか見ていきましょう。
①所得税・住民税
国税庁では、アルトコインなどの仮想通貨を使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となる旨公表されました。そのため、アルトコインで収益がでた場合は、所得税や住民税がかかります。
②消費税
アルトコインなどの仮想通貨を売却した場合、消費税の取り扱いをどうするのかについてはいろいろな議論がありました。最終的に支払決済手段として位置づけを重視し、平成29年7月1日以後に売却したものについては消費税が非課税となりました。
※平成29年6月30日以前に売却したものについては消費税は課税ですが、消費税の課税事業者でない限りは影響はありません。
③相続税・贈与税
アルトコインなどの仮想通貨を相続したり贈与したりした場合は、相続税や贈与税の対象になると考えられます。ただし、相続税や贈与税で仮想通貨をどのように取り扱うかについて国税庁の見解がまだ公表されていないため、今後の動きを注視する必要があります。
アルトコインと確定申告
アルトコインで収益を得たら確定申告が必要
アルトコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。確定申告は、個人が1年間に得た収益や税金を自分で計算し、翌年の2月16日~3月15日までに申告・納付する制度です。そのため、アルトコインを使用することで利益が生じた場合は、原則確定申告が必要です。
サラリーマンの場合は確定申告書Aを、個人事業主の場合は確定申告書Bを使って申告します。
アルトコインで得た収益は雑所得で処理する
アルトコインを使用することで生じた利益は、原則「雑所得」とすることが国税庁から公表されました(事業所得等の起因となる行為に付随して生ずるものは除く)。
雑所得とは他のどの所得にも該当しない所得のことです。ただし、経費を計上することは認められているため、所得についても、事業所得と同じように「収入-経費」で計算します。例えば、収入200万円、経費80万円の場合は差し引き120万円が雑所得の金額です。
確定申告書で雑所得について記載する箇所は、第一表と第二表です。それぞれの記載箇所を見ていきましょう。
①第一表
・収入金額の雑・その他欄に収入金額を記載します。例の場合は200万円です。
・所得金額の雑欄に所得金額を記載します。例の場合は120万円です。
②第二表
・雑所得(公的年金等以外)、総合課税の配当所得 譲渡所得、一時所得に関する事項欄に必要事項を記載します。
所得の種類は雑、種目・所得の生じる場所は取引所の名前 ○○コインなど、収入金額に200万円、必要経費等に80万円、差引金額に120万円を記載します。
アルトコインで得た損失は損益通算できない
アルトコインを使うことで生じる所得は原則として、雑所得になります。事業所得と異なる点の1つは、雑所得では青色申告がないため、青色申告特別控除などの特典を受けることができないことです。また、事業所得と異なるもう一つの点が、損失がでても損益通算できないことです。
損益通算とは、その所得の損失と他の所得の黒字を相殺できるものです。例えば、事業所得が10万円の赤字、給与所得が500万円であれば、合算した490万円に税金がかかりますが、雑所得が10万円の赤字、給与所得が500万円であれば、雑所得の赤字は切り捨てられ、給与所得の500万円に税金がかかります。
アルトコインの収益の計算方法
保有しているアルトコインを売却した場合
確定申告するためには、アルトコインの収益がいくらになるかを正しく計算する必要があります。まずは、すでに保有しているアルトコインを売却した場合の収益の計算方法を確認しましょう。
①購入した日が同じアルトコインを売却した場合
購入したアルトコインを売却(日本円に換金)した場合は、売却金額が収入金額に、購入金額が経費の金額に、差額が所得の金額になります。
例)5月10日に400万円で2アルトコインを購入した。そのうち1アルトコインを9月10日に300万円で売却した。
この場合の、収入金額は売却価額の300万円、経費は400万円÷2アルトコイン=200万円です。
所得金額は、収入金額300万円-200万円=100万円です。
②購入した日が違うアルトコインを売却した場合
購入した日が違うアルトコインを売却した場合は、どのアルトコインを売却したのかが問題となります。実は、どのコインを売却したと指定するわけではなく、購入したアルトコインの平均を求めて計算します。
購入したアルトコインの平均を求める方法は移動平均法と総平均法の2つがあります。原則、移動平均法を持って計算することとなっていますが、継続を条件として総平均法で計算しても良いこととなっています。計算としては総平均法の方が断然簡単です。ここでは、総平均法での計算をご紹介します。
例)5月10日に400万円で2アルトコイン、9月10日に750万円で3アルトコインを購入し、4アルトコインを10月10日に1,000万円で売却した。
この場合の、収入金額は売却価額の1,000万円です。
経費は総平均法で計算します。総平均法とはその年度に購入したアルトコインの金額を合算して平均値を計算する方法です。具体的な計算例は以下のとおりです。
購入金額(400万円+750万円)÷購入アルトコイン数(2アルトコイン+3アルトコイン)=230万円(1アルトコイン)
経費の金額は、230万円×4アルトコイン=920万円です。
所得金額は、収入金額1,000万円-920万円=80万円です。
ビットコインとアルトコインを交換した場合
保有しているアルトコインを使って、ビットコインを取得した場合も損益が生じ、所得税の対象となります。具体例で確認していきます。
例)2月10日に240万円で3アルトコインを購入した。その後、5月10日に時価100万円のビットコインを1アルトコインと交換(購入)した。
この場合、2月10日に購入した1アルトコインあたりの価値は、240万円÷3ビットコイン=80万円です。5月10日に時価100万円のビットコインと80万円の価値のアルトコインを交換(購入)しているため、差額の20万円が所得となります。この場合の収入金額は100万円、経費の金額は80万円、所得金額は20万円です。
アルトコインで商品を購入した場合の収益
アルトコインで所得がでるのはアルトコインを売却したときだけではありません。じつは、商品購入の支払いにアルトコインを使用しても税金がかかる場合があります。この場合の基本的な考え方は、アルトコインとビットコインを交換した場合の考え方と同じです。
具体例を見て確認してみましょう。
例)5月10日に500万円で5アルトコインを購入した。そのうち1アルトコインを使い7月10日に150万円の商品を購入した。
この場合、4月10日に購入した1ビットコインあたりの価値は、500万円÷5アルトコイン=100万円です。7月10日に1アルトコインで150万円の商品を購入しているということは、100万円の価値のものと交換で150万円の価値のものを取得しているということになります。そのため差額の50万円が所得となり、所得税の対象になります。
この場合の収入金額は150万円、経費の金額は100万円、所得金額は50万円です。
アルトコインで得た収益は事業所得になる?
アルトコインを使って収益がでた場合は、事業所得等の起因となる行為に付随して生ずるものを除き、雑所得となります。実は、アルトコインにおいてどういう状態になれば事業所得として認められるかは、まだ公表されていません。アルトコイン以外の過去の事例を考えると、現金や預金と同じように常に支払決済手段として事業の経費の支払いに使っている場合や、個人で大規模な機械装置などをそろえマイニングしている場合などが事業所得になると考えられます。ちなみに、マイニングの場合は、マイニングで取得した金額が収入金額、マイニングにかかった費用が経費の金額、差額が所得金額になります。
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まとめ
仮想通貨といえばビットコインが有名ですが、ビットコインの価値の高騰とともに、アルトコインにも注目が集まっています。そのため、すでにアルトコインで収益がでたという人やこれからアルトコインを始める人も多いようです。ただし、アルトコインで収益がでれば確定申告が必要です。ぜひこの記事を読んで、正しい処理を行いましょう。
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会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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