海外移住で税金が安くなる?海外移住の税金事情を徹底解説
リタイアした人だけでなく、若い人でも海外移住をする人が増えています。最近では、海外に移住し、日本で仕事を続ける芸能人の話もよく耳にするようになりました。それは、海外移住で税金が安くなるケースが多いからです。
実際のところ、海外の税金はどのようになっているのでしょうか。この記事では、海外移住の税金事情を徹底解説します。
シンガポールやマレーシアの海外移住が盛んな理由
今、海外移住先として人気なのがシンガポールやマレーシアです。最近、有名なお笑い芸人がシンガポールに移住する話を聞いた事のある人も多いでしょう。
シンガポールやマレーシアが海外移住先として人気があるのはなぜでしょうか。日本から近いことや、居住環境が良いなどの理由もありますが、いちばんの理由は税金が安いことにあります。ここでは、シンガポールとマレーシアの税金事情について解説していきます。
日本とシンガポール・マレーシアの税金比較
比較表で税金を比較
日本とシンガポール・マレーシアの税金を比較してみましょう。日本とシンガポール・マレーシアの主な税金は、次のようになっています。
日本とシンガポール・マレーシアの税金比較表
国名 | 所得税 | 住民税 | 消費税 | 相続税 | 贈与税 |
---|---|---|---|---|---|
日本 | 累進課税 最大45% |
10% | 10% | 累進課税 最大55% |
累進課税 最大55% |
シンガポール | 累進課税 最大22% |
制度なし | 7% | 制度なし | 制度なし |
マレーシア | 累進課税 最大30% |
制度なし | 売上税0% (条件あり) サービス税6% |
制度なし | 制度なし |
日本の所得税や相続税・贈与税、シンガポールやマレーシアの所得税は、累進課税制度を採用しています。累進課税制度とは、所得が高ければ高いほど、税率が高くなる制度です。
例えば、日本の所得税の場合、所得金額195万円未満は所得税率5%、195万円以上330万円未満は所得税率10%と段階的に所得税率が高くなり、所得金額4,000万円以上で所得税率が最大の45%になります。
シンガポールやマレーシアでは相続税・贈与税、住民税が非課税
日本とシンガポール・マレーシアとの税制の違いで、最も大きいのが、相続税や贈与税、住民税が非課税ということです。それぞれの税金について見ていきましょう。
①相続税・贈与税
まずは、相続税と贈与税です。日本では、1億円の課税相続遺産を相続した場合、単純計算で1億円×30%=3,000万円の相続税が課されます。また、親から子へ2,000万円の課税財産を贈与した場合、単純計算で2,000万円×45%=900万円の贈与税が課されます。
シンガポールやマレーシアでは、相続税や贈与税は課されないため、日本に比べて税金面がかなり有利になっています。富裕層にとって、シンガポールやマレーシアの海外移住が進む大きな要因といえるでしょう。
②住民税
次に、住民税を見ていきましょう。所得金額が300万円の場合、日本では300万円×10%=30万円の住民税が課されるのに対し、シンガポールやマレーシアでは、住民税が0円です。
シンガポールやマレーシアでは住民税を所得税に加えているのではないかというと、そうではありません。所得税率も日本に比べてシンガポールやマレーシアのほうが低くなっています。
毎年かかる所得税や住民税の点だけ見ると、日本よりシンガポールやマレーシアの方が暮らしやすく、富裕層だけでなく、一般の人が海外移住するひとつの要因になっているといえます。
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相続税・贈与税の節税対策の落とし穴
相続税や贈与税の節税対策として、シンガポールやマレーシアのように相続税や贈与税が課されない国へ移住するケースは増えています。しかし、日本国も節税のための海外移住がしにくくなるように、法改正を繰り返しています。
例えば、海外に移住していたとしても、相続税や贈与税が課されるケースがあります。日本国内にある財産と日本国外にある財産に分けて、相続税や贈与税が課されるケースを見ていきましょう。
・日本国内にある財産
海外に移住していたとしても、日本国内にある財産を相続や贈与した場合は、日本の相続税や贈与税が課税されます。
・日本国外にある財産
海外に移住してる場合、日本国外にある財産は、原則、相続税や贈与税の課税対象外のため、日本の相続税や贈与税が課税されることはありません。
ただし、相続や贈与の時点で海外に移住している場合であっても、財産を渡す人(相続の場合は被相続人、贈与の場合は贈与者)と財産を受け取る人(相続の場合は相続人、贈与の場合は受贈者)がともに10年以上海外に移住していない場合は、日本の相続税や贈与税が課税されます。
つまり、相続税や贈与税の節税対策として海外に移住しても、日本国内にある財産には相続税や贈与税が課税され、海外に移住してから10年経っていない場合は、日本国外の財産にも相続税や贈与税が課税されます。
相続税や贈与税の節税対策として海外に移住する場合は、日本国内にある財産をできるだけ少なくし、財産を渡す人、財産を受け取る人ともに、海外に移住して10年以上経っている必要があります。
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財産を海外に移動させてもバレる!その理由とは
海外に移住する人が、税金とともに気になることのひとつに、国外にある財産を税務署が把握しているのかどうかでしょう。特に、節税を考えていない場合であっても、税務署が自分の財産を把握しているのかどうかは気になるところです。
実は、日本国外にある財産の多くは、税務署が把握しています。それは、税務署が把握できる仕組みがあるからです。税務署が日本人が持つ国外にある財産を把握できる仕組みには、CRSと国外財産調書の2つがあります。それぞれについて、見ていきましょう。
・CRS(共通報告基準)
CRSとは「共通報告基準」という意味で、国と国が金融口座情報を自動交換する制度のことです。近年、外国の金融機関の口座を利用した租税回避が各国で増加しています。そこで、経済協力開発機構(OECD)が中心となり、CRSの制度を策定しました。
CRSには、日本を含む100以上の国や地域が加盟しており、参加国にある金融機関は、その国の非居住者の口座情報を対象国に報告する義務があります。例えば、日本人がCRSに加入する国に口座を持っていると、その国から日本の税務署に口座情報が共有されることになります。
・国外財産調書
国外財産調書とは、居住者が5,000万円超の国外財産を所有している場合に、財産の内容や価額などを記載して税務署に提出する書類のことです。12月31日時点で5,000万円超の国外財産を所有している場合は、毎年翌3月15日までに国外財産調書を税務署に提出します。
国外財産調書は、あくまで居住者対象のため、海外移住者には関係しません(租税条約により異なることもある)。しかし、現在日本に住んでいて海外移住を考えている人の場合は、提出する必要があります。
国外財産調書を提出すれば、国外財産調書に記載された財産が相続税の申告などで漏れていた場合、過少申告加算税などの軽減措置を受けることができます。ただし、国外財産調書の提出がない、もしくは記載もれの財産が相続税の申告などで漏れていた場合には、逆に過少申告加算税などの加重措置がとられます。
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まとめ
シンガポールやマレーシアでは相続税・贈与税、住民税が非課税となるほか、所得税など他の税金についても日本よりも低い税率になっています。そのため、シンガポールやマレーシアは移住しやすい環境にあります。
しかし、相続税や贈与税の節税を目的とした移住には、日本国内に所有する財産には課税されたり、国外財産も課税されたりするなど落とし穴もあります。節税目的で海外移住を考えている場合は、事前に税理士などの専門家と打合せをしておく必要があるでしょう。
▼参照サイト
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2020/3240d5bc2269d430/20200209-202011.pdf
- https://www.jetro.go.jp/world/asia/my/invest_04.html
- https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/kojin_ju.html#gaiyo_02
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4138_qa.htm#q1
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7456.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875.htm
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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