異次元の少子化対策の予算を管理する「こども金庫」を徹底解説!

2023年1月に、岸田首相によって「異次元の少子化対策」が発表されました。まだ記憶に新しいという人も多いのではないでしょうか。今回は、異次元の少子化対策の予算を管理する「こども金庫」について解説します。こども金庫の概要や課題を見ていきましょう。また、異次元の少子化対策とはどのようなものかまで説明します。

こども金庫とはどんなもの?特別会計とは?

こども金庫とは?概要を確認

現在、少子化が大きな社会問題となっています。岸田首相も2023年1月に、「少子化は待ったなしの課題」と述べていました。国は現在、少子化への対策として異次元の少子化対策を検討しています。こども金庫とは、この異次元の少子化対策に関する予算を管理する特別会計のことです。特別会計と異次元の少子化対策の概要は、後ほどくわしく説明します。

特別会計とは?一般会計との違い

こども金庫が異次元の少子化対策のための予算を管理する特別会計ということは前述したとおりです。では、特別会計とはなんでしょうか。そもそも国や地方公共団体の経理は、「一般会計」と「特別会計」の2つに大きく分かれています。一般会計とは、基本的な行政サービスにかかる経費のことを指します。教育や福祉、公共施設の整備といった、毎年行われる事業に必要な経費と考えてもらうといいでしょう。公債や税金などを歳入とし、生活に不可欠な行政サービスに使います。

一方、特別会計とは一般会計に対して「特定の事業を行う場合に一般会計と切り離して管理される経理」のことです。本来、国や地方公共団体の経理は単一で行われなければなりません。しかし資金の運用状況を明確にするために、特定の事業に関しては個別の会計が認められているのです。今回の特別会計ですが、実は12年ぶりに設けられることになります。東日本大震災からの復興の目的でつくられた「東日本大震災復興特別会計」以来です。

こども金庫で予算が管理される「異次元の少子化対策」とは?

ここまで、こども金庫とはどのようなものか説明してきました。次に、こども金庫で予算を管理していく異次元の少子化対策について概要を確認していきましょう。

異次元の少子化対策とは?

まずは異次元の少子化対策がどのようなものか説明します。異次元の少子化対策とは、現在国が検討している少子化対策のことです。2023年1月の会見で岸田首相によって検討が発表されました。国は異次元の少子化対策の実現に向けて、「こども未来戦略方針」を閣議決定しています。こども未来戦略方針には、以下の3つの理念があります。

  • 若い世帯の所得を増やすこと
  • 社会全体の構造・意識を変えること
  • 全ての子ども・子育て世帯を切れ目なく支援すること

 

異次元の少子化対策の「加速化プラン」

こども未来戦略方針の3つの理念をもとに、異次元の少子化への具体策として「加速化プラン」がたてられています。具体的なプランをいくつか確認しておきましょう。

主に、次のプランがたてられています。

  • 児童手当の拡充
  • 出産費用の保険適用
  • 高等教育費の負担軽減
  • 子育て世帯への住宅支援の強化
  • 時短勤務への給付
  • 年収の壁への対応

 

それぞれ、内容を説明します。

【児童手当の拡充】

「所得制限の撤廃」「高校生まで支給期間を拡充」「第三子以降は3万円に倍増」を2024年までに実現できるように検討を進めています。

【出産費用の保険適用】

これまで保険が適用されず一時金で支援してきた出産費用について、2026年を目途に保険適用の導入を検討します。

【高等教育費の負担軽減】

大学などの高等教育費の負担軽減のために、奨学金の範囲拡大を検討しています。例えば減額返還制度が利用可能な年収を325万円から400万円まで(子ども2人世帯は500万円以下、子ども3人世帯は600万円以下)に引き上げます。
さらに、授業料後払い制度の創設も進めています。授業料後払い制度とは、在学中は授業料を払わず、卒業後に所得に応じて返済する制度です。日本版HECS(出世払い型貸与奨学金)とも呼ばれ、2024年から導入予定になっています。

【子育て世帯への住宅支援の強化】

子育て世帯の住宅支援も強化します。空き家を活用してひとり親世帯等が入居しやすくなるようにしたり、子育て環境に優れた賃貸住宅に子育て世帯が優先的に入居できる仕組みを導入したりして支援します。また、子育て世帯が住居を取得しやすくなるように住宅ローンの「フラット35」の金利優遇も行います。

【時短勤務への給付】

時短勤務をしていると、どうしても賃金が低下します。賃金の低下を補うために、2歳未満の期間に時短勤務する場合に給付金が受け取れる制度の導入を検討します。2025年を目指して検討を進めています。

【年収の壁への対応】

企業の規模によって社会保険料の負担が発生するいわゆる「106万円の壁」「130万円の壁」があります。壁を気にせず働けるよう、「短時間労働者への被用者保険の適用拡大」と「最低賃金の引上げ」に取り組みます。

こども金庫の現状の課題

新設されるこども金庫ですが、現時点で課題があります。ここで、こども金庫の課題を説明します。

財源確保ができていない

現状の課題として、財源の確保があげられます。現在の方針では、2024年からの3年間で年3兆円半ばの予算を捻出するとしています。主に、以下の方法で確保するとしています。

  • 徹底した歳出改革
  • 新たに作る支援制度

 

歳出改革の対象は社会保障費です。毎年伸び続けている社会保障費を対象に徹底した歳出改革を行い、財源を確保するとしました。なかでも医療や介護の分野で歳出改革が行われます。しかし改革によってどれだけ節約できるかはわかりませんし、新たな支援制度についても話し合いが始まっていません。また、すでに医療・介護関係者からは歳出改革に対して批判の声が出ています。確実な財源確保ができていないのは、こども金庫の現時点の課題と言っていいでしょう。

こども特例公債で先送り

異次元の少子化対策への財源確保の方法の1つとして、国は「こども特例公債」を発行する方針です。こども特例公債とは、将来、社会保険料の引き上げで確保する財源で返済するつなぎ国債(歳出と歳入の時期的ずれを補う目的で発行される特別な国債)を指します。将来の財源確保の方法を決めたうえで発行されるのがつなぎ国債ですから、計画性は確かにあります。しかし、増税や社会保険料の引き上げといった財源確保を先送りすることで、批判の声を避けているように感じる人もいるのではないでしょうか。こども金庫の財源確保については、まだまだ議論が続きそうです。

まとめ

今回は異次元の少子化対策の予算を管理するこども金庫について見てきました。少子化が深刻になっている現在、確かに異次元の少子対策に期待が高まります。しかし、財源確保への不安はぬぐえません。発行されるこども特例公債も、少し逃げ道のように感じます。安定した財源を確保し、異次元の少子化対策を実現させられるか。また、それによって現在の少子化にどう効果をもたらすのか、国の真の力が問われるときなのかもしれません。

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