2020年から個人事業主は減税に!でも、メリット享受には条件があります
2018年度税制改正に、個人事業主、フリーランスにとって影響の大きな施策が盛り込まれました。2020年分から所得税の「青色申告特別控除額」と「基礎控除額」が見直されるのですが、結論を言えば、青色申告の場合、条件を満たせば控除額は年10万円増え、その分減税になるのです(白色申告の控除額は、自動的に10万円の増額)。では、その条件とは何なのか? わかりやすく解説します。
青色申告特別控除は65万円→55万円が基本に
「青色申告特別控除」から説明しましょう。そもそも「青色申告」とは何か?
個人事業主の確定申告には、青色申告と白色申告があります。青色申告には、複式簿記という原則に基づいて日々の取引を記帳(帳簿付け)することが必要です。白色申告に比べて手間はかかりますが、そのぶんいくつかの特典が用意されていて、その1つが最高65万円の「特別控除」なのです。
所得税は、売上から売上のためにかかった経費などを差し引いた課税所得に、一定の税率を掛けて算出されます。この課税所得から65万円が控除(マイナス)されるわけですから、仮に税率が20%ならば、減税効果は65万円×20%=13万円。ありがたさが実感できると思います。
税制改正では、これが65万円から「55万円が基本」に改められます。「特別控除が減額される? それなら減税どころか、増税ではないか」と思われるかもしれません。実は改正にはさらに続きがあって、青色申告の適用要件を備えたうえで、①「e-Taxによる申告(電子申告)」を行うか、②「電子帳簿保存」を行うかすれば、今まで通り65万円の控除が受けられるのです。裏を返せば、「紙による申告」の場合は、特別控除額は55万円に減額になります、ということです。
特別控除の条件を満たすには
①、②について、簡単にみておきましょう。
①のe-Taxは「国税電子申告・納税システム」といい、所得税や法人税などの税金の申告や納税を、インターネットで行うことができます。その年の所得税の確定申告書、青色申告決算書などのデータをこのシステムを利用して提出すれば、「特別控除65万円枠」を確保することができる、というわけです。
ただし、個人でこの申告を行う場合には、原則として電子証明書が内蔵されたマイナンバーカードを取得し、その読み取りに対応したICカードリーダライタかスマートフォンを用意する必要があるので、注意が必要です。マイナンバーカードを取得していない場合、申請から発行までに多少時間がかかることなどを考慮し、早めに準備を始める必要があるでしょう。なお、カード未取得の場合、厳格な本人確認に基づき税務署長が通知したe-Tax用のID・パスワードによる電子申告も可能になる予定ですが、あくまでも暫定措置だとされています。
②の電子帳簿保存とは、一定の要件の下で、帳簿を紙に代わってデータとして保存できる制度のことです。ただし、こちらにも要注意点が。
この制度の適用を受けるためには、帳簿の備え付けを開始する3ヵ月前までに税務署に申請書を提出する必要があります。原則として課税期間の途中から適用することはできません。この承認を受けることなく、市販の会計ソフトなどを使ってデータ保存していても、それは65万円の特別控除の要件である「電子帳簿保存」とは認められないのです。
以上をざっくりまとめると、確定申告に関わる作業を紙ではなく電子データで行うようにすれば、引き続き「青色申告特別控除65万円」を確保することができる、ということになるでしょう。ただ、具体的な作業は、これからデータ化しようとする人にとっては、“越えるのに多少注意が要るハードル”と言えるかもしれません。
基礎控除は10万円の増額になる
と、ここまでは、「電子化していれば、特別控除額65万円を維持できる」というお話。18年度税制改正では、このほか「基礎控除額の38万円から48万円への増額」が盛り込まれました。基礎控除というのは、青色申告、白色申告に限らず、課税所得から無条件で差し引くことができる金額のことです。その額が10万円増えるということは、税率20%ならば、10万円×20%=2万円の減税になる計算です。
説明してきた「青色申告特別控除の見直し」、「基礎控除額の増額」という“合わせ技”の結果を整理すると、次のようになります。
- 青色申告で①か②をクリアした人
現行:基礎控除38万円+特別控除65万円=103万円→
20年度分以降:基礎控除48万円+特別控除65万円=113万円で、控除額は10万円アップ。 - 青色申告で①も②も満たさない人
現行:基礎控除38万円+特別控除65万円=103万円→
20年度分以降:基礎控除48万円+特別控除55万円=103万円で、控除額は変わらず。 - 白色申告の人
現行:基礎控除38万円+特別控除0円=38万円→
20年度分以降:基礎控除48万+特別控除0円=48万円で、控除額は10万円アップ。
ちなみに、これまで一律38万円だった基礎控除額には、改正に伴い所得制限が設けられました。48万円への増額が認められるのは、所得総額が2400万円以下の場合で、これを超えると控除額は徐々に減額され、2500万円超でゼロになります。
まとめ
2020年度分の所得税確定申告から、青色申告特別控除額65万円を確保するためには、「電子申告」か「電子帳簿保存」が必要になります。準備に時間がかかることや、誤解しやすい点もありますから、疑問があったら専門の税理士に相談することをお勧めします。
中小企業オーナー、個人事業主、フリーランス向けのお金に関する情報を発信しています。
新着記事
人気記事ランキング
-
「新型コロナ」10万円給付申請に必要な書類は?~申請・給付早わかり~
-
売上半減の個人事業主に、100万円の現金給付!中小企業も対象の「持続化給付金」を解説します
-
「新型コロナ」対策で、中小企業の家賃を2/3補助へ世帯向けの「住居確保給付金」も対象を拡充
-
「新型コロナ」対策でもらえる10万円の給付金には課税されるのか?高所得者対策は?
-
法人にかかる税金はどれぐらい?法人税の計算方法をわかりやすく解説
-
新型コロナで会社を休んでも傷病手当金がもらえる!傷病手当金の税金とは
-
増税前、駆け込んでも買うべきものあわてなくてもいいものとは?
-
法人が配当金を受け取った場合の処理方法税金や仕訳はどうなる?
-
【2024年最新版】確定申告と年末調整の両方が必要なケースとは?
-
もしも個人事業主がバイトをしたら?副収入がある場合は確定申告が必要