【終活のすすめ】親が突然「要介護」に慌てて自宅売却→介護施設入所が生む2つのデメリット
昨日まで元気だった親が、ある日倒れて、1人では生活できない状態に。介護施設に入ってもらわなくてはならない、という状況になったとき、まず問題になるのが“先立つもの”です。親に十分な蓄えがあればいいのですが、そうでない場合には、どうしたらいいのか? 焦ってお金をつくろうとすると、あとで後悔することになるかもしれません。
急ぎ実家を売却して、資金を捻出
そんな事例を紹介しましょう。3年前に夫を亡くし、自宅で一人暮らしをしていた85歳の女性。実家を出て、それぞれ家庭を築いた子どもが3人いました。年に数回は友人と旅行に行くのを楽しみにしているような、元気な高齢者だったのですが、ある日スーパーで買い物中に倒れて、病院に運ばれました。病名は、くも膜下出血でした。
病院でリハビリに励んだものの、医師からは高次機能障害と診断され、1人で在宅復帰するのは無理だとわかります。子どもが引き取るわけにもいかず、急遽、介護施設を探すことになりました。しかし、3人とも介護に対する知識はゼロ。介護申請は、どこにどうやってしたらいいのか? 同じ老人ホームでも、介護付きと住宅型はどう違うのか? 母親の介護など、まだずっと先の話だと思い込んでいたために、大いに慌てることになってしまいました。
最も困ったのは、お金のことです。母親は「狭くて古い施設は嫌だ」と言いますが、そうでないところに入るとなると、当然、大きな出費を覚悟しなくてはなりません。子どもたちは、そもそも母親にどのくらい預金があるのかも、全く把握していませんでした。
調べてみると、手持ちのお金は1,000万円ほど。母親の希望に沿うだろうと目をつけていた介護施設は、入居金だけで2,800万円必要でしたから、とても足りないことがわかりました。子どもたちにも余裕はなかったので、話し合いの末、母が住んでいた実家を売却して、介護施設入居の資金をつくることにしたのです。
ところが、病院の退院時期も迫っていて、あまり時間がありません。急いで大手の不動産会社に相談したところ、「仲介で買い手を待っていたら、時間がかかります。当社の直接買い取りならば、すぐに決済できますよ」とのこと。時価より安くなるだろうとは思いながらも、子どもたちは、とにかく「速さ」を優先して、不動産会社の提案に乗ったのでした。
グレードを落とした結果……
売却額は、4,000万円でした。希望の介護施設だと、入居金は賄えるものの、管理費などの月々の費用を考えると、長生きした場合には資金ショートの可能性もあります。結局、たまたま空きがあった、実家近くの入居金300万円の介護付き老人ホームで「妥協」することにしました。
しかし、そこは母親にとって、あまり居心地のいい介護施設ではありませんでした。介護スタッフは、法定の人員配置数はギリギリ満たしているものの、隅々まで気を配る余裕はない様子。子どもが面会に行くと、母親はいつも車椅子のまま、リビングで独りぼっちだったそう。これといったレクリエーションもなく、近くの公園に散歩に連れて行ってもらうようなこともありませんでした。体が不自由になる前、活発だった母親にとっては、不満が募る毎日だったのです。
落ち着いてから調べてみると、自宅の売却額は、時価の20~25%も割安でした。ちゃんと売っていたら、希望の介護施設に入れてあげられたのに、と子どもたちにも後悔だけが残りました。
自宅の売却を進めながら介護施設に入居する、という選択肢
実は、介護施設への入居が決まっても、病院に健康診断書の作成を依頼したり、ケアマネージャーの面談や実地調査があったりで、優に1ヵ月程度の時間が必要です。家を売るためには、当然、家具や荷物の整理、処分、それに引っ越し作業もしなくてはなりません。これらをバタバタと片付けるのは、忙しいだけでなく、失敗の原因にもなるでしょう。
かといって、家を売却して資金のめどが立ってから介護施設に入居するというのも、リスクを伴います。いつできるかわからない売却を待つ間に、介護度が上がって生活が辛くなり、認知症を発症したりすることがあるからです。待っている間に、希望の介護施設が満室になってしまうかもしれません。
そんなことにならないよう、自宅の売却で得たお金を介護施設への入居費用にしたいと考える場合には、「まず介護施設に入居してから、余裕を持って売却を進める」という方法もあります。それを、介護施設の側がサポートしてくれるケースもあるのです。
入居金の25%を支払えば入居OK ~クラーチ溝の口~
「クラーチ溝の口」(川崎市、運営=クラーチ)は、通常は入居時に全額必要になる入居金の支払いを猶予する特例を設けています。入居金を自宅売却資金で充当する場合には、その25%を支払えば入居OKというもので、残額は売却時(最長1年)に清算します。
35.34㎡~73.97㎡と、一般の介護付き老人ホームに比べて、部屋は広め。自立で入居して介護が必要になっても、変わらず同じ部屋で過ごすことができます。その快適空間は映画やドラマの撮影で使われることも多く、某局の弁護士ドラマではリアルに施設名を使われたほど。
■佐野善行相談員に話をうかがいました。
当施設は、246戸、定員323名という大規模シニア住宅です。現在は、64歳から最高齢は104歳の方が入居されています。ご夫婦や親子で入居されているケースもありますよ。ほとんどの方は自立で入居されて、通常のマンションと同様に、自由な時間を過ごされます。その後、介護が必要になった場合には、介護付き有料老人ホームとしてのサービスを提供させていただきます。
施設内には、在宅療養支援診療所「メディクスクリニック溝の口」のサテライトクリニックが併設されています。施設の外に出ることなく受診できる手軽さと、ホームドクターが身近にいる安心感は、大きなメリットといえるのではないでしょうか。もし居室内で体調不良になられたような場合には、24時間常駐のスタッフが駆けつける態勢も整っています。
大規模施設ですので、さまざまなサークル活動も盛んです。ダーツ、太極拳、ヨガ、カラオケ、麻雀、囲碁、書道などなど、本当に多彩です。入居されると担当のコンシュルジュをお付けして、身の回りの相談事のほか、こうしたサークルへのお誘いなどもさせていただきます。
こうした介護施設では、とかくご入居者同士の人間関係が問題になったりもするのですが、とても距離感がいいのが、うちの特徴だと私は感じています。開設(2003年)して18年たって、そういう「風土」のようなものが出来上がってきたように思うのです。
まとめ
自宅を売って高齢者施設に入る場合には、「売り方」に注意を。引っ越し準備なども含めて、焦らず、計画的に進めましょう。そうしたプランに見合った介護施設を探すことも大事です。
中小企業オーナー、個人事業主、フリーランス向けのお金に関する情報を発信しています。
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