“闇営業”芸人が修正申告。ところで「修正申告」って?しないとどうなる?

[取材/文責]マネーイズム編集部

反社会的勢力の主宰するパーティーへの出席も暴露された、お笑い芸人たちの“闇営業”問題。吉本興業は、詐欺グループの集会で宮迫博之さんが100万円、田村亮さんが50万円の謝礼を受け取っていたことを明らかにするとともに、他の若手芸人も含めて「税務修正申告を終えた」と発表しました。ところで、税金の「修正申告」とはどういうものなのでしょうか? すればお咎めなし? しないとどうなる? わかりやすく解説します。

税金の申告に間違いがあったら

正確に言うと、今回問題になったのは「確定申告の修正申告」です。給与所得者(サラリーマン)の場合は、通常、所得税などの税金を会社が源泉徴収し、本人に代わって申告、納税することになっていますが、個人事業主は自ら税金を計算して申告しなければなりません。サラリーマンでも、年収が2000万円を超える人や、副業を行っている場合などには、個人事業主などと同様に自ら確定申告をする必要があります。
 

宮迫さんが会社から給与をもらっていたのか、個人事業主の形だったのか、判然としない部分もありますが、いずれにしても会社を通さない“闇営業”による所得を申告していなかった。そこで「金額に間違いがありました」と、あらためて確定申告をやり直した、というわけです。

 

今回の「事件」以外でも、時々テレビなどで耳にする「修正申告」ですが、「間違っていました」とやり直せば、それで税務署に許してもらえるのでしょうか? 基本的に答えはYES。ただし、足りなかった分の税金を追加で納めるのとは別に、「延滞税」という税金が課税されることになります。

 

遅れた日数に応じて支払う利子のようなものなのですが、この延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヵ月を経過する日までは年2.6%、それ以降は年8.9%にハネ上がります。所得税の確定申告の納期限は3月15日です。吉本興業の発表では、芸人たちは「7月12日までに修正申告を終えた」となっていますから、恐らく後者の税率が適用されたのだと推測します。

 

ちなみに、3月15日の納期限の前に申告の間違いに気づいた場合には、「訂正申告」という手続きを取ることができます。新たに申告書を作成して税務署に提出する、いわば「確定申告のやり直し」で、この場合には延滞税などはかかりません。

もし税務署に「見つかった」らどうなる?

これら「訂正申告」、「修正申告」は、説明したように自ら進んで確定申告の間違いを申し出る行為です。では、間違っている(実際に納税すべき金額よりも申告額が少ない)にもかかわらず、そのままにしておいたら、どうなるのでしょうか?

 

もし税務署が税務調査(※)を行って、そういう事実が明らかになり、修正せざるを得なくなったような場合には、延滞税の支払いだけではすまなくなる可能性があります。具体的には、「新たに納めることになった税額のほかに、その税額の10%(場合によって15%)の過少申告加算税又は35%(場合によって40%)の重加算税」(国税庁ホームページ)が課税されるかもしれないのです。これらにさきほどの税率の延滞税が加味されるとなると、けっこう重いペナルティと言わざるをえません。

 

注意しなくてはならないのは、この場合、「忘れていました」「単純なミスでした」という言い訳が、通じるとは限らないこと。極論すれば、「税逃れをしてやろう」と内心考えていても、税務署の指摘がなければ「セーフ」。反対に、そうした悪意がなかったとしても、税務署が「悪質な脱税行為だ」と認識すれば、重加算税の支払いを求められる可能性があるということです。その人に「悪意があったか・なかったか」を判断するのが困難だから、にほかなりません。

 

※税務調査
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。

税金を「払い過ぎて」いたら……

あえて付け加えれば、申告の間違いは、納税額が「過少」な場合ばかりとは限らないでしょう。反対に「実際の所得に対して申告した税金の額が多すぎた」といった事態も起こりえます。その場合、いったん申告してしまうと、あとは“泣き寝入り”なのでしょうか?

 

そんなことはありません。税務署に対して「更正の請求」を行えば、払い過ぎた税金を取り戻すことができるのです。ただし、この請求ができるのは「確定申告の期限から5年間」となっていますから、気をつけましょう。

 

以上を整理すると、確定申告に誤りがあったときの対処法には、「訂正申告」、「修正申告」、「更正の請求」の3つがあることになります。間違いを正すのなら早いに越したことはないことも、理解していただけたと思います。

 

振り返ってみると、芸人の“闇営業”の一件も、傷を広げたのは結局「マネー」の問題でした。申告にミスがあったり、忘れていたり、ましてや一部の所得をわざと隠したり……。その結果、金銭的なペナルティを受けるだけでなく、事業の対外的な信用を失墜するようなことになったら、目も当てられません。しっかり節税しながら、払うべきものはきちんと払う。そんな正しい納税を心掛けたいものです。

まとめ

間違えた確定申告は、あとから「修正」が可能です。迷うことがあったら、税金のプロである税理士に相談しましょう。

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