会社の健康診断!経営者が知らないといけない決算書チェック方法5選

[取材/文責]細井山豊

会社の経営状態は大丈夫なのか、どのようにすれば会社は成長できるかなど、日頃から苦心している会社経営者の方もいるでしょう。今回は、決算書を使った会社の経営状態のチェック、健康診断の方法を5つ紹介します。

決算書の推移のチェック

最初に紹介するのは、シンプルに3つの決算書の過去数年分を並べることで推移を比較する方法です。3つの決算書とは1年間の期末日(決算日)における財政状況を記述したBS、期末日まで1年間の売上高などの収益と売上原価や販売費などの費用を表したPL、1年間のお金の流れを活動ごとに記述したCFのことです。例として以下の表1に示します。

表1 決算書の推移を比較
BS 14年期末 15年期末 構成比 16年期末 構成比 増減額 増減比
  現金及び預金 3500 3200 16% 4000 17% 800 25%
流動資産 合計 10000 9500 48% 13000 54% 3500 37%
  建物 1300 1200 6% 1200 5% 0 0%
固定資産 合計 12000 10500 53% 11000 46% 500 5%
資産 合計 22000 20000 100% 24000 100% 4000 20%
  支払手形 2400 2100 11% 2600 11% 500 24%
流動負債 合計 7000 6400 32% 7200 30% 800 13%
  長期借入金 4600 4800 24% 4600 19% -200 -4%
固定負債 合計 7000 7100 36% 7100 30% 0 0%
  資本金 900 700 4% 1300 5% 600 86%
純資産 合計 8000 6500 33% 9700 40% 3200 49%
負債・純資産 合計 22000 20000 100% 24000 100% 4000 20%
PL 14年期末 15年期末 構成比 16年期末 構成比 増減額 増減比
売上高 33000 30000 100% 32000 100% 2000 7%
売上原価 21000 19500 65% 22500 70% 3000 15%
 売上総利益 12000 10500 35% 9500 30% -1000 -10%
販管費 9400 8100 27% 7000 22% -1100 -14%
 営業利益 2600 2400 8% 2500 8% 100 4%
 経常利益 2520 2330 8% 2550 8% 220 9%
 税引前利益 2400 2380 8% 2450 8% 70 3%
法人税等 800 750 3% 850 3% 100 13%
当期利益 1600 1630 5% 1600 5% -30 -2%
CF 14年期末 15年期末 16年期末  - 増減額 増減比
キャッシュ期首残高 22000 3500   3200   -300 -9%
  税引前利益 2400 2380   2450   70 -9%
営業CF 合計 3400 3200   3600   400 13%
  設備投資額 -2400 -1500   -800   700 -47%
投資CF 合計 -4000 -3600   -2800   800 -22%
  借入金増減 1200 200   300   100 50%
財務CF 合計 1100 100   0   -100 -100%
キャッシュの増減 500 -300   800   1100 -367%
キャッシュ期末残高 3500 3200   4000   800 25%

表1のような形式でBS、PLとCFの各科目の数値が3年分横に並ぶと毎年の増減が比較しやすくなり、また表を縦に見ることでPLの売上高が増加した要因はどの科目か、というような分析も可能です。特に大きな流れを確認するにはBSの資産合計、PLの売上高と営業利益、CFのキャッシュの残高に注目するのが良いでしょう。たとえば、資産の合計値が大きく増えていても売上高や営業利益がそれほど上がっていない場合は、借入金などが増えているだけで利益に結びついていないなどの可能性があります。
また金額の比較だけでなく、BSでは資産合計を100%、PLであれば売上高を100%としたときの各科目の比率にあたる構成比を、金額の横に表示して同様に比較することをおすすめします。というのも、金額ベースの比較では減っているようにみえる科目が、構成比では大きく増えているというような結果が出るなど、経営方針を立てる上でより有益な情報が得られることもあるからです。

予算と実績の比較

次に、PLにおける実績値と予算目標の比較です。どれだけ利益が生まれたかを知ることができるPLにおいて実績が予算を下回っているとすれば、その利益の差はどこで生まれてしまったのかを分析して営業努力をする必要があります。
例として以下の表2を示します。この例では予算と実績で売上高に大きな違いはありませんが、売上原価の構成比が79%から88%と大きく増えたために粗利率が減少し、得られる営業利益が少なくなってしまっています。経営の損益構造を大きく左右する粗利率を高く維持するためにも、このような比較が便利になるでしょう。
経営を始めたばかりの頃は予算の立て方に問題がある場合もありますので、慣れるまでは注意が必要です。

表2 PLの予算と実績値の比較
  予算(目標) 実績
金額 構成比 金額 構成比
売上高 33000 100% 32000 100%
売上原価 26000 79% 28000 88%
粗利 7000 21% 4000 13%
販管費 1500 5% 1500 5%
営業利益 5500 17% 2500 8%

事業所別、商品別のデータ比較

同じくPLについては、事業所別や商品別、顧客データ別など様々な角度から分析する方法があります。以下の表3に、事業部別にPLを作成した例を示します。

表3 事業部ごとのPL
  事業部A 事業部B 事業部C 本部 合計
  金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比 金額 金額 構成比
売上高 15000 100% 10000 100% 7000 100% 0 32000 100%
売上原価 12500 83% 8000 80% 6000 86% 0 28000 88%
粗利 2500 17% 2000 20% 1000 14% 0 4000 13%
販管費(直接費) 800 5% 1200 12% 800 11% 900 3700 12%
貢献利益 1700 11% 800 8% 200 3% 0
販管費(間接費) 300 2% 200 2% 140 2% -900
営業利益 1400 9% 600 6% 60 1% 0 300 1%
従業員数(人) 20 13 12 21 66

ここで販管費(販売費及び一般管理費)は直接費と共通費に分けられていますが、直接費とは、たとえばいくつかある営業所における販管費のように、販売している商品ごとの経費が区別できる販管費のことをいいます。また共通費とは、たとえば本社における販管費のように商品ごとの経費が区別できない販管費のことをいい、販管費が共通費である場合は商品や事業部ごとに売上高の比率や人数比、人件費の比率、使用面積比などに合わせて割り振られるといった方法がよく取られます。上の表3においてもこの方法を用いて、90万円の共通費が事業部ごとの売上高比に割り振られているのが分かります。
実際にこの表3で事業部ごとの販売成績を比較してみると、売上高は事業部Aが1500万円と最も高いのに対し、粗利率でみると事業部Bが20%と最も高いと分かります。粗利以外にも、粗利から直接費である販管費を差し引いた貢献利益、そこからさらに共通費である販管費を差し引いた営業利益などの数値と、その構成比で事業部ごとの比較を行うことができます。

社員1人ごとの決算書を作る

次に紹介する方法はBSやPLといった決算書の数値を社員1人あたりに換算してみることで、より身近な数値にして考える方法です。決算書に書かれている数字は、どうしても紙面上のものというだけであまり実感がわきづらいものです。この方法を使うと、1人の社員がしている仕事がどのように会社の利益を上げているかを定量的に評価することができます。
表3から従業員1人あたりのPLの数値に換算すると、以下の表4のような比較をすることが可能になります。
表4の粗利の数値を比較すると、事業部Aのほうが全体での金額は大きいですが、1人あたりに計算しなおすと事業部Bがより効率が優れているといえます。このような比較を行うことで、事業所ごとの業績向上のためにより明確な社員1人1人の目標を立てることが可能となるでしょう。

表4 事業部ごと、従業員1人あたりのPL
(千円)
  事業部A 事業部B 事業部C
  金額 1人あたり 金額 1人あたり 金額 1人あたり
売上高 15000 750 10000 769 7000 583
売上原価 12500 625 8000 615 6000 500
粗利 2500 125 2000 154 1000 83
販管費(直接費) 800 40 1200 92 800 67
貢献利益 1700 85 800 62 200 17
販管費(間接費) 300 15

東京大学卒。現、同大学院所属。
ベンチャー企業の経営やビジネスを学んでおり、経営に役立つ様々な知識やノウハウを習得中。

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