コロナの影響が出た場合は消費税の中間申告が延長可能に!期限を知ってコロナ禍を乗り越えよう

[取材/文責]マネーイズム編集部

企業や個人事業主は、消費者から預かった消費税を納付する必要があります。新型コロナウイルスの影響でリモートを導入する企業も増え、特例として2020年に限り中間申告や確定申告の納税の特例猶予が認められました。しかし、その後もコロナの影響が続き、さらに遅れる場合は個別に申請することで期限を延長することが可能です。
この記事では、2020年の中間申告や確定申告の特例猶予の振り返りから、申告期限の個別延長の申請を行う方法まで解説します。

消費税中間申告とは

中間申告の概要

消費税の課税事業者は、確定申告を年に一度行う必要があります。それに加えて、前年度の年税額が48万円以下の場合を除き、中間申告も行う必要があります。

 

  • 中間申告の対象となる事業者
    中間申告を行う必要があるのは、前事業年度(個人の場合は前年)の消費税の年税額が48万円を超える事業者です。前事業年度の税額に応じて、中間申告の流れは以下の通り異なります。

  前事業年度(前年)の消費税の年税額
48万円超~400万円 400万円超~4800万円 4800万円超~
中間申告の回数 年1回 年3回 年11回
対象期間 1~6か月目 ①1~3か月目
②4~6か月目
③7~9か月目
毎月(1~11か月目まで)
1回あたりの
納税額
前年の年税額の6/12 前年の年税額の3/12 前年の年税額の1/12

 

申告および納税の期限は、各対象期間の末日から2か月以内です。規定された納付書を用いて納税する場合には、中間申告書の提出を省略することもできます。

なお、中間申告を仮決算で行う方法もあり、対象となる期間ごとにその期間の課税売上や課税仕入などの金額を集計して、納税額を算出します。この場合は、中間申告書を提出する必要があります。
実務上、仮決算の中間申告が行われることは少ないです。しかし、たとえばコロナウィルスの影響で、当該年度の課税売上高が前事業年度より大きく減少している場合には、仮決算の中間申告の納税額が少なくなることもあるでしょう。そのため、仮決算での中間申告の実施も検討すべきと言えます。

中間申告延長制度の振り返り

2020年に特例として認められた特例猶予の概要

2020年には、新型コロナウイルス感染症の影響により国税を一時に納付することが困難な場合に納税が猶予される「特例猶予」が導入されました。2020年4月30日に成立した「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」に基づく制度です。

 

特例猶予のもとでは、納税期限が2021年2月1日までに訪れる所得税・法人税・消費税などの国税を対象に、申請が認められれば、1年を限度とした納税の猶予が認められます。

 

猶予の対象になる金額は、以下の(ア)から(イ)を引いた金額です。

 

    ア)納付すべき国税額

    イ)納税者の預貯金等の金額から、以後6か月の運転資金(個人の場合は以後6か月の生活費も含む)を控除した金額

 

納税の猶予は従来から存在する制度ですが、2020年に導入された特例猶予においては、今後6か月の支出も加味して猶予が認められる点が異なります。

 

  • 特例猶予が認められる条件と対象者
    特例猶予が認められる対象者は、以下の①、②のいずれも満たす必要があります。
    ① 新型コロナウイルス感染症の影響により、 2020年2月1日以降の任意の期間(1か月以上)において、事業収益・不動産賃料・給与等の経常的な収入(譲渡所得や各種給付金など一時的な収入は除く) が前年同時期に比べて概ね20%以上減少していること。
    ② 一時に納税することが困難であること。
  • 特例猶予の期限
    特例猶予の申請期限は、原則として2021年2月1日までとされており、2021年8月31日現在では、当制度は終了しています。

期限後もコロナの影響で更に遅れる場合は個別延長も可能

特例猶予は2021年2月1日をもって終了しましたが、一般的な納税の猶予の制度は従来から存在しており、特例猶予の終了後も利用できます。また、納税の猶予の制度の他に、申告期限の個別延長という制度もあります。

 

この2つの制度の違いを簡単に説明すると、納税の猶予は、経済的な事情により納税資金の確保が難しいときに、申告・納付期限はそのままで、納税時期を遅らせる制度です。他方、申告期限の個別延長は、災害などの理由で申告・納付の手続きの遂行が困難な場合に、申告・納付の期限自体を延長してもらう制度です。

 

  • 国税の納税猶予
    まず、国税の納税猶予の制度は、国税を期限内に一時に納付することが困難な事情がある場合に、納税期限後に(必要に応じ分割して)納税できる制度です。猶予を受けるには一定の条件を満たす必要があります。
    「一時に納付が困難」とは、具体的には、納付可能金額(=手元資金ー事業継続のための1か月以内の支出予定額)が納付税額に満たない場合を指します。
  • 申告期限の個別延長
    続いて、申告期限の個別延長は、新型コロナウイルス感染症など外的な事情により期限内申告できないやむを得ない理由がある場合に、その事由が終えてから最長2か月の申告期限延長を認める制度です。
    また、消費税の中間申告書の提出が困難な状態が、確定申告書の提出期限まで続く場合には、中間申告書の提出は不要です。つまり、中間申告により納付する消費税は生じないことになります。この場合、確定申告書提出時に、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出する必要があります。

延長が認められる条件・対象者

納税の猶予が認められるのは、納税者の責任外の事情により、納税者が災害を受けた場合や事業上の著しい損失が生じた場合などです。

 

申告期限の個別延長が認められる一例としては、以下のような場合があります。

 

  • 税務代理等を行う税理士が感染症に感染した
  • 納税者や法人の役員、経理責任者などが外国に滞在し、入出国などに制限がある
  • 企業や個人事業者、税理士事務所などで、通常の業務体制を維持できない
  • 経理担当社員が感染や濃厚接触者となることで、経理部を相当の期間または閉鎖する
  • 感染拡大防止のため企業が休暇取得を推奨し、経理担当社員の多くが休暇を取得している
  • 感染防止のための外出自粛要請などにより、多くの経理担当社員が業務に従事できない
    • 適用期間
      特例猶予は2021年2月1日に納期を迎える国税が対象となる、時限立法でした。一方、納税の猶予や申告期限の個別延長は、以前から国税通則法に存在する制度のため、申請期限は特にありません。
    • 手続き方法
      納税の猶予も申告期限の個別延長も、所轄の税務署に申請をして許可を得る必要があります。

納税の猶予が許可された場合は、原則1年間の猶予が認められ、分割納付を行うことになります。「納税の猶予許可通知書」が納税者に発行されるので、猶予許可通知書に記載された分割納付金額を、各分割納付の日までに納付しなければなりません。

 

申告期限の個別延長は、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」に理由を記載して、提出します。認可された場合は、申告・納付できない事由が終えた日から2か月以内に申告・納付する必要があります。

 

☆ヒント
新型コロナウイルスの蔓延によって様々な延長制度が設けられたものの、影響の大きい企業では未だにスムーズに事務処理などが行えていない場合もあります。延長制度の期限が過ぎていても、やむを得ない理由がある場合は個別で延長できることもあることを把握しておきましょう。納税について起源や手続きなどが不安な場合は、いつでも相談できる税理士がいると安心です。

まとめ

新型コロナウィルスの影響により、経済的な観点で納税が困難な場合には納税の猶予制度、申告や納税の手続きの実施が困難になった場合には申告期限の個別延長を利用できます。消費税の中間申告は、税額が多いほど回数が多くなり、それだけ新型コロナウィルスの影響が発生する可能性も高くなると言えます。そのような状況で利用可能な制度を把握し、申告や納税の遅れによる罰則を受けないように備えましょう。

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