最近よく聞くスタグフレーションとは?定義や、経済への影響について解説
2021年12月現在、食料品を初めとする生活必需品やガス代、電気代の値上がりが相次いで発表されています。ニュース番組などでは、値上げの話題と共に「スタグフレーション」という言葉を聞くことも増えてきました。「スタグフレーションが何となく良くないことは分かる」という方も多いことでしょう。しかし、スタグフレーションがなぜ良くないのか、経済にどのような影響があるのかは詳しく分からない方も多いと思います。この記事では、スタグフレーションの定義や経済への影響について詳しく解説します。
スタグフレーションとは
スタグフレーションの定義
スタグフレーションは、景気停滞を意味する「スタグネーション(Stagnation)」と物価が上昇し続ける「インフレーション(Inflation)」を組み合わせた造語です。1965年に英国下院議員のイアン・マクラウド氏が演説の中で使用したのが最初といわれています。
スタグフレーションとは、景気が停滞しているのに物価が上昇している状態を指し、生活者や経済にとっては好ましくない状況です。
●景気が停滞
通常、景気が停滞すれば物価も下がります。これを「デフレーション」といいます。デフレーションは長期的に続けば経済に悪影響を与えますが、物価と景気が噛み合っていないスタグフレーションの方が経済に与える悪影響の方が深刻です。
●物価が上昇
景気が停滞すると労働者の収入が減ります。その状態で物価が上昇すれば、生活は大変苦しくなります。企業も製品が売れずにますます景気は冷え込むでしょう。物価上昇がいつまで続くかわからないため、企業も消費者も消費を抑え貯蓄に励もうとします。するとさらに景気の回復が遅くなるおそれもあります。
スタグフレーションが起こりかねない要因
スタグフレーションが起きる原因はさまざまです。2021年12月現在世界で起こっていることを例にとって解説します。
2021年春~夏にかけてだんだんとコロナの脅威が収まったことで、コロナ禍初期からダメージを受けていた世界経済が活発化してきました。工業製品や原油の需要も伸びてきましたが、それに供給が追いついていません。その一方で、旅行・飲食・アパレル・小売りなど多くの産業がコロナ禍の影響により大きく売り上げを減らし、正社員のリストラやパート・アルバイトの雇い止めなどを行いました。その結果、失業者や収入が大幅に減った人が増大した一方、原材料や原油の需要に対して供給が追いつかず、物の値段が上がっています。
スタグフレーションとなった過去事例
●オイルショック
オイルショックは、1973年と1979年に起きた原油の供給逼迫と価格高騰によって世界経済が混乱した事態の総称です。日本では長期的な経済成長率が低下し、トイレットペーパーをはじめとする生活必需品の買い占め騒動が起こりました。スーパーの棚からトイレットペーパーを奪い合う人々の映像をテレビなどで見た方もいるでしょう。このほか、新幹線の工事や本州四国連絡橋3ルートの着工が遅れるなどの影響も出ました。
このオイルショックにより、日本政府は1975年以降国債を大量に発行することになります。
●イギリスのEU離脱
2016年、イギリスは国民投票によってEU離脱を決定しました。これにより、市場ではポンド安が進行する一方で、輸入インフレが起こりました。また、ポンド安に伴って物価上昇が起こり、英国民の可処分所得と個人消費が減少します。イギリスに進出した日本企業も、コスト高とイギリスのEU離脱による悪影響のダブルパンチを受け、対応に苦慮しました。この影響は、現在も完全に回復していません。
スタグフレーションが経済に与える影響
賃金低下、物価上昇で貧困家庭が増加
前述したように、スタグフレーションが起こる前提に不景気があります。賃金が低下して物価が上昇すれば、人々の生活は当然苦しくなります。加えて、コロナ禍により、失業者も増大しています。この状態で物価高が続けば貧困家庭は増加することでしょう。特に、1人親家庭と呼ばれる「母子家庭」「父子家庭」の貧困化は深刻です。
貧困家庭が増大すれば、貧困由来の犯罪が増えて治安も悪くなります。また、貧困家庭の子どもがまた貧困家庭を作るという貧困の連鎖も考えられるでしょう。
金融政策が困難になる
日本銀行は、これまでも景気回復のためにさまざまな金融政策を行ってきました。しかし、スタグフレーションが続いてしまうと税収も減り、国庫に入ってくるお金も少なくなります。その結果、景気回復のために有効な金融政策も採りにくくなるでしょう。また、スタグフレーションの多くは思いがけない外部の要因で起こることが多いものです。そのため、それを見据えた金融政策を取るのも難しいでしょう。
企業がスタグフレーションに備える方法
スタグフレーションがいつ、どのようなタイミングで発生するか正確に予測するのは困難です。しかし、2021年12月現在、景気動向の鈍化の兆しや物価の上昇からスタグフレーションになりかけているのではという懸念の声も上がっています。では、企業はどのようにスタグフレーションに備えればいいのでしょうか。対処法の一例を紹介します。
自社サービスの価値を高める
自社サービスの価値を高めておけば、原材料および人件費の高騰などで価格が上昇しても、利用者が極端に減ることはないでしょう。自社サービスの価値を高めるためには、常に現状に満足し続けず、研究を続けていくことが大切です。どのタイミングで研究開発費などのサービス向上のための投資を注ぎ込むべきか、景気状況を見定めながら判断すると良いでしょう。
消費者のニーズを正確に把握する
消費者のニーズは常に変化し続けます。インターネットが発達し、世界中の情報がほぼリアルタイムで取得できるようになって以来、変化する速度も増してきました。例えば、電気やガスといったインフラも「電力自由化」が実現された今、消費者は常に損をしないように情報を集め、ニーズが満たせる場所へ移動することでしょう。このようなニーズの遷移を把握しながら、企業も常に進歩していくことが求められています。
経営分析を行う
収益性、安全性、生産性、成長性などの観点から財務諸表を分析して、経営状況を見直してみると良いでしょう。例えば安全性の分析として、短期財務安全性分析と長期財務安全性分析が挙げられます。短期財務安全性分析では流動比率と当座比率を、長期財務安全性分析では固定比率や固定長期適合比率、自己資本比率、負債比率などが分析事項。加えてキャッシュフローの分析も行い、安定した財務基盤を保てているか確認してみると良いでしょう。
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まとめ
スタグフレーションは世界中のさまざまな要因が絡まり合って起こるものであり、個々の努力で発生を防ぐのは難しいものです。しかし、ある日突然発生するものでもないので、対策を立てる時間はあります。企業は、自社が提供するサービスの付加価値を高め、今後の投資について顧問税理士に相談しておくと心強いことでしょう。
法律・金融に詳しいフリーライター。フリーランスのための税に関する記事を多数執筆。
税以外のさまざまなメディア媒体への執筆経験、及び自分自身の納税経験も活かし、初心者でも分かりやすい解説をしていきます。
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