【終活のすすめ】認知症の引き金に!?コロナで家族との面会制限が原因?

[取材/文責]マネーイズム編集部

高齢者が新型コロナへの感染を恐れて外出や、通所リハビリなどの施設利用、あるいは親族の訪問を「自粛」した結果、認知機能の遅れをきたす事実が報告されています。リスクは、介護施設などに入居していても同じ。“コロナ時代”には、それに適応した施設選びも大事になりそうです。実際にあった事例も踏まえて、考えてみましょう。

相続の話を始めようとした矢先に

夫に先立たれて3年。東京都内の一戸建てに、1人で住む83歳の女性の事例です。子どもは3人いて、誰かが月に1度は孫を連れて遊びに来るような、良好な親子関係でした。ただ、子どもの目には、母親が1人で買い物に行ったり、家事をこなしたりというのが、日に日に大変そうになってきているように映りました。とはいえ、自分たちの狭いマンションで同居は難しい。そこで、体調不良で寝込んだことがあったのを機に、母親の施設への入居を考えるようになったのです。

 

長男が探してみると、比較的近くに、よさそうな老人ホームがありました。建物や設備は新しくてきれい。入居一時金は不要で、月額料金20万円程度というのも、年金と賃貸駐車場の収入でカバーできる金額でした。お母さんにも異存はなく、喜んで入居を決めました。

 

環境が変わったのを機に、親子で相続のことを考えよう、という話し合いもしました。ちなみに、お母さんの財産は、夫が残した預金などが8,000万円、自宅と賃貸駐車場の不動産が計1億5,000万円。分け方を決めておかないと、揉め事が起こりかねない資産であるのは確かでした。ところが、入居間もなく起こったのが、新型コロナの感染拡大という想定外の事態だったのです。

厳しい面会ルールが仇に

入居者の感染を恐れる施設側は、入居者の外出や家族との面会を厳しく制限します。実施されていたレクリエーションなども、すべて中止になってしましました。2020年10月、厚生労働省から、「面会者に対して、体温を計測してもらい、発熱が認められる場合には面会を断ること」といった条件付きで、社会福祉施設などの面会制限を緩和する通知があった後も、厳しいルールは変わりません。

 

そうなってわかったのですが、その施設は、職員の人員配置が法定基準ギリギリで、入居者に対するサービスには、限界がありました。家族の面会についても、事前予約で認められてはいたものの、100人近い入居者がいたため、土日の予約はすぐに埋まってしまう状況だったのです。

 

結局、子どもの面会もかなわぬ中、1日中ほとんど1人で部屋にいるだけのお母さんは、筋力の低下をきたしただけでなく、悪いことに認知症を発症してしまいました。結果的に、母親に寂しい思いをさせていること、相続の話も危うくなったことで、子どもはその施設への入居を勧めたことを、大いに後悔することになりました。

認知症は一気に発症、進行することがある

コロナの感染が収まらない状況では、自宅にいても施設でも、生活は単調になりがちです。高齢者の場合、そうした状況で認知症を発症し、一気に症状を深刻化させてしまうことが珍しくありません。家族がこまめに電話をする、可能ならばオンラインでの面会を行うなど、普段以上に「親の様子」に気を配ることが必要になるでしょう。

 

介護施設の多くは、入居者が生活に困難をきたさないための「介護」が務めで、それ以外のこと、例えば認知症予防までは深く関与しないのが実態です。紹介した事例のような不幸を招かないためには、介護プラスアルファで、どれだけ入居者やその家族のニーズに寄り添ってくれる施設なのかを、しっかり見極める必要があります。

コロナを機に“コミュ力”がアップした施設もある~トラストガーデン用賀の杜~

述べてきたように、コロナ禍は、老人ホームの運営にも入居者の生活にも困難をもたらしているわけですが、中にはその逆境を逆手にとって活性化を実現している施設もあります。

 

介護付き有料老人ホーム「トラストガーデン用賀の杜」(東京都世田谷区、運営=トラストガーデン)は、居室129室、定員139名(夫婦10室)の規模で、職員体制は「1.5(職員数):1(要支援2以上の入居者)」以上と、法的な基準の倍を超える手厚さ。24時間の看護体制に加え、専属の理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、柔道整復師が常駐するなど、リハビリの体制、設備が充実していることも“売り”の施設です。

■武内正憲支配人、澤千裕相談員に、お話をうかがいました。

入居者の最年少は66歳、上は106歳の方がいらっしゃいます。平均年齢は88歳、平均介護度は2.5くらいです。

 

実は、施設ができた頃は、「ホテルライク」な落ち着いた住環境をコンセプトにしていました。ところが、これだけ広くて静かだと、逆に落ち着かないのか、もっと小さな施設だとかに移られてしまう入居者の方が、けっこういらっしゃったんですね。そこで、180度考え方を変えまして、共用部分に卓球台を置き、ゴルフのパットを打てるコーナーを作ったりと、従来の介護施設ではあり得ないようなことも、いろいろとやってみたのです。そうしたら、入居者様同士だけでなく、入居者とスタッフ、あるいはスタッフ同士の新しいつながりが生まれました。開放的な環境をつくったのが、功を奏したのだと思います。

 

特にまだ元気な方は、家族に勧められたとしても、施設への入居を躊躇するケースが少なくないでしょう。87歳の男性で、こんな方がいらっしゃいました。やはり息子さんに勧められて、渋々1ヵ月のうち2週間ずつを施設と自宅で過ごす、という条件で体験入居されたのですが、最初の2週間を終えて家に帰ったら、寂しくて仕方がない。だから、すぐに入居したい、とそのまま施設に戻ってこられたのです。2週間の間に、同じフロアの方々と、しっかり交流を深められていたわけです。

 

こういうつながりの「伝統」は、コロナ禍でも生きました。例えば、入居者の方々が、自主的に新しく入居される方の歓迎会を開いたりして、盛り上げているんですよ。ご家族との面会が制限されている入居者をどのようにフォローすべきか、というスタッフの意識も高まって、相乗効果で施設全体が活性化しているように感じます。

 

こういうことは、私たちが話すとどうしてもセールストークに取られてしまうのですが、施設見学に来られたご家族などがあると、入居者の方が同じ説明をしてくださいます(笑)。施設見学の際には、実際にそこで暮らしている方の話をうかがってみるのも、いいのではないでしょうか。

 

まとめ

新型コロナの感染拡大で、家族との面会などが制限された高齢者は、認知症に注意を。介護施設を選ぶ際には、その予防などにどこまで関わってくれるのかも、チェックポイントになるでしょう。

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