死亡退職金とは?課税対象になるの?非課税の範囲も解説
亡くなった方の代わりに遺族が受け取るお金に「死亡退職金」があります。生活資金として頼りになる一方、税金の存在が気になるのではないでしょうか。今回は、死亡退職金と相続税について説明していきます。また、弔慰金についても見ていきましょう。受け取ったという遺族の方は、ぜひ参考にしてください。
死亡退職金とは?まずは概要を確認
まず、死亡退職金がどのようなお金を指すか説明します。会社に勤めていて、在職中に亡くなってしまう方もなかにはいます。在職中に亡くなると、本人は退職金を受け取ることができません。その場合、死亡退職金として遺族は本人が受け取るはずだった退職金を受け取ることができます。
死亡退職金は任意制度のため、全ての方が受け取れるわけではありません。そもそも会社に退職金の制度がなければ死亡退職金もありませんし、就業規則にもよるため金額もさまざまです。
また、死亡退職金の制度がない会社でも「功労金」という名目で支給される場合があります。
死亡退職金は課税対象!非課税になる範囲は?
実際に死亡退職金を受け取った遺族の方が気になるのが「死亡退職金は課税対象になるのだろうか」ということではないでしょうか。ここで、死亡退職金と税金についてくわしく説明します。
死亡退職金はみなし相続財産として課税対象になる
まず、死亡退職金に税金がかかるのか確認しておきましょう。結論として、死亡退職金は相続税の課税対象だということを押さえておいてください。相続財産は民法上の財産である「本来の相続財産」と、相続税を計算する上で財産として扱われる「みなし相続財産」に大きくわかれます。
亡くなった時点で所有していた財産が本来の財産であることに対し、みなし相続財産とは亡くなったことがきっかけで受け取る財産を言います。死亡退職金も、死亡がきっかけで受け取った財産ですから、みなし相続財産として扱われることになります。
本来の相続財産もみなし相続財産も、相続税の課税対象です。みなし相続財産にあたる死亡退職金も、課税対象になるわけです。
ただし、亡くなってから3年を経過した後に支給が確定したものは、相続税の課税対象にはなりません。亡くなった方の「一時所得」として、所得税の課税対象になります。つまり、死亡退職金は死亡後3年以内に支給が確定した場合は相続税、死亡後3年経過後に支給が確定した場合は所得税と、時期によって対象になる税目が変わることになるのです。
死亡退職金が非課税になる範囲
死亡退職金が相続税の課税対象になることは前述したとおりです。しかし、死亡退職金は残された家族の生活保障が目的のお金です。そのため非課税枠が設けられているのです。死亡退職金の非課税枠は、法定相続人数によって変わってきます。非課税枠の計算式は以下のとおりです。
【死亡退職金の非課税枠の計算式】
500万円×法定相続人数
500万円に法定相続人数をかけた金額が非課税枠になります。例えば、法定相続人が3人いる場合「500万円×3人」になりますから、1,500万円までが非課税枠です。
非課税枠を計算するとき、法定相続人のうちだれかが相続放棄(プラス、マイナス全ての財産について放棄すること)をしている場合も考えられます。仮に相続放棄をした人がいても、非課税枠を求めるときは人数に含めて計算しなければなりません。また養子が複数いる場合、実子がいるときは1人まで、いないときは2人まで人数に含めて計算します。
なお、この非課税枠を使えるのは法定相続人になっている人だけです。法定相続人ではない人が受け取った場合、非課税枠は適用されませんので注意してください。相続放棄をした人も法定相続人ではないと判断されるため、非課税枠は使えないことになります。
課税対象になる死亡退職金額は?
非課税枠の計算方法がわかったところで、実際に課税対象になる死亡退職金額をみていきましょう。以下の計算式で求められます。
【課税対象になる死亡退職金額の計算式】
相続人が受け取った死亡退職金額-非課税枠×(相続人が受け取った死亡退職金額÷全相続人が受け取った死亡退職金総額)
わかりやすく、モデルケースを使って課税対象になる死亡退職金額を計算してみます。次のモデルケースで見ていきましょう。
【モデルケース】
3,000万円
<法定相続人>
配偶者と子ども2人の計3人
<受け取った死亡退職金>
配偶者:1,500万円
子ども:750万円ずつ
【ステップ1】
まずは非課税枠を計算します。モデルケースの場合、法定相続人は3人ですから「500万円×3人」で求められます。1,500万円が非課税枠です。
【ステップ2】
次に、それぞれの法定相続人に非課税枠を振り分けていきましょう。「非課税枠×(相続人が受け取った死亡退職金額÷全相続人が受け取った死亡退職金総額)」で計算します。以下のように非課税枠が振り分けられます。
1,500万円×(1,500万円÷3,000万円)=750万円
子ども
1,500万円×(750万円÷3,000万円)=375万円ずつ
【ステップ3】
最後に受け取った死亡退職金額から非課税枠を引けば、相続税の課税対象になる死亡退職金額がわかります。モデルケースでは、以下の金額になります。
1,500万円-750万円=750万円
子ども
750万円-375万円=375万円ずつ
弔慰金も課税対象になるの?
会社勤めをしている人が亡くなったときに会社から支給されるお金として、死亡退職金とは別に「弔慰金」と呼ばれるものもあります。ここで、弔慰金について説明します。
死亡退職金は「本来受け取るはずだった退職金を遺族に支給する」という意味がありますが、弔慰金は「亡くなった方を弔い、遺族を慰める」ために支給されるお金です。
この弔慰金は、原則として非課税になります。亡くなった方が保有していた財産ではないため、税法上、相続財産にはならないのです。
しかし、一定額を超えた場合は死亡退職金として扱われることになります。役職や勤続年数によっては弔慰金が高額になる場合もありますから注意しましょう。以下の範囲内であれば、課税対象にはなりません。
- 業務上の死亡の場合…給与月額の3年(36カ月)分相当額
- 業務上の死亡でない場合…給与月額の6カ月分相当額
なお、普通給与とは俸給・給料・賃金・扶養手当・勤務地手当・特殊勤務地手当などの合計額を言います。ここに賞与が含まれていないことに注意してください。
まとめ
今回は死亡退職金について見てきました。死亡退職金は、取り扱いが非常に難しいお金です。支給が確定した時期によって税目も変わりますし、非課税枠や課税対象になる金額の計算も簡単ではありません。また、死亡退職金のほかに相続財産があるかによっても、相続税の計算が変わってきます。受け取ったという人は、税理士に相談すると安心です。死亡退職金は亡くなった方が一生懸命働いて遺族にのこしてくれたお金でもあります。大切に使うためにも、正しく取り扱っていきましょう。
▼参照サイト
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