電子申告義務化!準備しておくことまとめ!

[取材/文責]岡田桃子

財務省と国税庁は企業が法人税と消費税の税務申告をする際にインターネットを使った電子申告を義務化することを方針として打ち出しています。税務申告の電子申告は作業効率化など様々なメリットがあるため、財務省や国税庁は完全な義務化を平成30年度の税制改正大綱に盛り込むことを目処に取り組んでいます。
今回は、いずれ訪れる電子申告の義務化に対応できるよう、電子申告義務化の内容や電子申告の方法、メリット・デメリットについて解説していきます。

電子申告(e-Tax)とは?

国税庁が提供している電子納税システムe-Taxはインターネットで所得税や法人税などの国税に関する申告や納税、申請、届出などの手続きが可能となるサービスです。
e-Taxを利用することで税務署に出向くことなくインターネット上で国税の申告ができるため作業の効率化を図れます。

電子申告のやり方

①利用環境の確認
e-Taxで電子申請を利用する場合、国税庁において動作を確認した推奨環境を満たしている必要があります。自身の利用するパソコンが推奨環境を満たしているかどうかの確認は国税庁のホームページから行うことができます。
②マイナンバーカードを取得
e-Taxで電子申請をするために電子証明書が組み込まれたマイナンバーカードや住民基本台帳カードなどが必要です。
③マイナンバーカードに対応したICカードリーダライタの取得
パソコンでマイナンバーカード内の電子証明書を読み込むため、ICカードリーダライタが必要になります。またICカードリーダライタをパソコンで利用するためのドライバのインストールも必要になります。
④事前準備セットアップ
e-Taxが国税庁から提供されたものであることを確認するためのルート証明書のインストールや電子証明書を利用するための「公的個人認証サービス利用者クライアントソフト」のインストールが必要です。
⑤e-Taxの利用登録
「電子申告・納税等開始届出書」をインターネット上又は紙面で税務署へ提出し、利用者識別番号を取得します。その後、利用者識別番号とマイナンバーカードを紐つける電子証明書の登録を行います。

以上の5つの過程を終えることでe-Taxを利用した申告書の作成や納税などを行うことができるようになります。

電子申告の企業側のメリット、デメリット

・メリット
e-Taxを利用するメリットは作業効率化と電子記録にあります。紙面での税務申告では税務署に直接出向いて申告しなくてはいけませんでしたが、e-Taxを利用するとインターネット上で24時間いつでも税務申告を行うことができます。
また、医療費の領収書や源泉徴収票などは記載内容の入力をすることで添付を省略でき、還付金の還付が紙面の場合よりも1~3週間ほど早く処理されるため申請がスムーズになります。
そして、過去の申告書や届出書などを保存しておくことができるため、必要な時に印刷することができ紛失の恐れもありません。

・デメリット
e-Taxを利用する上での一番のデメリットは上記に挙げた利用開始の手順が煩雑であることです。マイナンバーカードの発行には2週間ほどの時間がかかり、ICカードリーダライタの購入には数千円の費用がかかります。
こうした煩雑さや従来の紙面での税務申告の慣習から、特に大企業においてe-Taxの利用開始は滞っています。

☆ヒント
e-Taxを利用することで事務作業は大幅に軽減することができますが、その利用手続きは「電子申告・納税等開始届出書」や電子証明書の取得、パソコン上の各種事前準備、ICカードリーダライタの購入等、様々な作業が必要です。
そこで、そのような面倒な手続きをすべて税理士に代理してもらう「代理送信」という方法があります。代理送信を利用することで、e-Taxの利用開始手続きのみでなく実際の電子申告まで税理士に代理してもらうことが可能です。
e-Taxの面倒な部分は税理士に任せ、作業軽減の恩恵を受けるためにもe-Taxの代理送信を取り扱っている税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

電子申告義務化について

早ければ2019年度からの導入を調整していると言われている電子申告義務化ですが電子申告義務化によってどのように作業が効率化するのか、義務化に備えてe-Taxの利用を導入する場合どのような準備が必要なのかを解説していきます。

企業、行政双方の事務負担軽減化

電子申告を導入する上での企業側のメリットは上記にも挙げた通り、大きく分けて以下の三点が考えられます。
・税務署に出向くことなく社内で24時間いつでも税務申告が可能になる
・還付申告をe-Taxで行なった場合、紙面での申告では還付に4~6週間程度の時間を要するが2~3週間程度に短縮できる
・医療費の領収書や源泉徴収票などの添付が必要なくなる

以上のような点は事務の省略化やペーパーレスに繋がり、e-Taxの利用を導入することは、導入の際の煩雑さを考慮したとしても効率化を目指す上で必要なことであると考えられます。
しかし、財務省や国税庁がe-Taxによる電子申告の利用を推進している以上、企業のみでなく行政側にもメリットが存在するのは明らかでしょう。

行政側のメリットとしては以下のような点が考えられます。
・税務署で直接、税務申告の受付を行わなくなるため申告書の収受、入力等の作業を軽減することができる
・申告書をまとめ、保管する作業の軽減と保管スペースの縮小が望める
・地方税当局とシステムを連携することで作業の効率化を図れる

以上のように企業側、行政側のどちらにもメリットが存在するため電子申告義務化に向けて準備が進んでいます。

適用期間

電子申告の義務化は早ければ2019年度より実施される予定で、2018年度の税制改正大綱にその内容が盛り込まれることになっています。

電子申告を採用する際の準備

紙面での決算申告をするには社内で社印を押してもらう必要があります。一方でe-Taxを利用した電子申請では捺印の必要はなく電子証明書での署名により代替することができます。電子証明書での署名を利用することでたくさんの紙面に捺印をするよりも作業が軽減され効率化を望めますが、決算申告の際のルールが変更されるため社内規定の変更など様々な面倒が伴います。
また、e-Taxを使い始めるには事前準備としてパソコン上でソフトやドライブのインストールが必要になるなどある程度のパソコン作業能力が必要となります。ご年配の方にとって、こうしたパソコンの操作は難しく、このこともe-Taxの利用率が伸び悩んでいる要因の一つとなっています。

まとめ

電子申告の義務化に向けて財務省や国税庁が中心となって準備が進められている中、未だにe-Taxを利用していない企業も多数存在します。e-Taxの利用手続きには面倒が伴いますが、企業と行政のどちらにも作業軽減の恩恵がもたらされるため積極的に利用してみてはいかがでしょうか?

東京大学卒。
経理業務で得た知見や、中央官庁時代に得た法律や制度に関するナレッジを分かりやすく解説します。

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