【法人・個人事業主】費用対効果を最大化する税金の相談方法について解説

[取材/文責]阿部正仁

税金について相談する場所はたくさんあり、相談内容も多岐にわたります。そのため、単に質問内容について回答を得られれば大丈夫というレベルから節税のアドバイスなど付加価値を求めるレベルまで、相談者の目的はさまざまです。そこで、今回は費用対効果を最大化するという視点から税金の相談方法について解説します。

税金の相談場所を紹介

おもな相談場所について紹介します。

「国税庁=税務署」の無料相談

「国税庁=税務署」の無料相談は各税務署に電話をすると、国税局の税務相談室に転送される仕組みになっています。おもな特徴は次の通りです。

(1)完全無料

税目に関係なく、相談料は全くかかりません。しかも、軽減税率など税制改正にも対応しています。

(2)匿名で相談できる

相談の電話をしても税務相談室から氏名を質問されることはなく、匿名で相談することができます。

(3)時間帯

税務相談室の受付時間帯は役所と同じく、午前8時30分~午後5時までになります。システム上、受付時間外には税務相談室への電話はつながりませんので、時間厳守になります。

(4)相談できる内容は一般的なものに限られる

たとえば、「この接待費は事業と関連あるかどうか」など税務調査で争点(いわゆるグレーゾーン)になるような内容について、税務相談室では対応できません。そのため、住宅ローン控除が適用できるかどうかなど一般的な税金についての相談が税務相談室の守備範囲になります。

(5)積極的な節税のアドバイスは受けられない

税務相談室は一般的な税金についての質問内容について回答するという立場を採っています。たとえば、「100万円のソフトウェアを購入した」などの事実を伝えても、「特別控除による税額控除の優遇税制が受けられる」などの節税のアドバイスは受けられません。あくまでも税務相談室は「購入したソフトウェアが優遇税制は受けられるかどうか」の質問に対して回答する立場です。

日本税理士会連合会の相談会

日本税理士会連合会は各地域に所在します。今回は東京税理士会と近畿税理士会の相談会について見ていきましょう。

(1)東京税理士会

一般的な税金・会計の質問について、無料で税理士が対応します。すでに税理士と顧問契約を結んでいる法人・個人事業主は相談の対象外です。具体的には次の通りです。

  • 相談日時:月~金(祝日等を除く)の午前10時~午後4時(正午~午後1時まで休憩)  ※受付は午後3時30分まで
  • 場所:東京税理士協同組合会館内
  • 電話相談:TEL03‐3356‐7137

(2)近畿税理士会

一般的な税金・会計の質問について、無料で税理士が対応します。近畿税理士会の場合、「近畿税理士会館」ほか近畿2府4県の各地に税務相談センターを設置して、面談形式で税金に関する相談を受け付けています。東京税理士会と同じように税理士と顧問契約を結んでいる法人・個人事業主は相談の対象外です。税務相談センターの一つである近畿税理士会館を例にすると、次の通りです。

  • 開設日:毎週木曜日
  • 休室日:祝祭日及び夏期(8月10日~20日)、年末年始(12月21日~1月10日)
  • 相談時間:午後1時~同4時(受付は午後3時30分まで)

青色申告会の記帳・決算・申告の相談

青色申告会の記帳・決算・申告の相談は会員サービスの一つであり、入会金や会費を負担して、入会することが相談するための条件になります。また、相談対象者が個人事業主に限定されているのが青色申告会の特徴といえます。

商工会議所の経営相談

商工会議所の経営相談のひとつに税務相談があり、税理士が対応します。たとえば、東京商工会議所の場合、経理処理、法人・個人事業主の確定申告、決算などの質問について事前予約をすれば、無料相談をすることができます。相談日時は各支部によって異なるため、事前に確認しましょう。

法人会の税務相談

各法人会でも税務相談を受け付けています。たとえば、公益社団法人日本橋法人会の場合、会員以外でも30分2,000円で相談することが可能です。2019年度の相談日時は次の通りになります。

税理士・税理士法人の初回相談サービス

初回無料サービスを提供する税理士・税理士法人は多い傾向にあります。税理士は積極的な節税のアドバイスができる立場であり、相談者である法人・個人事業主に寄り添って対応するのが特徴でしょう。相談者の中には顧問契約に至り、節税対策などのメリットを最大限に享受しているケースもあります。

税務相談のポイント

税務相談のメリットを最大限に享受するポイントについて説明します。

費用対効果を最大化する

そもそも税務相談は質問の仕方や相談相手によって、享受できるメリットの度合いが違ってきます。たとえば、100万円の自動車の購入を検討し相談するとします。相談相手のアドバイスによって、効果的な節税につながるケースがあったり、自動車代金100万円を購入年度に経費計上できなかったりします。

事前準備をきちんとする

メリットを最大限に享受するためには、相談相手に質問内容を的確に伝える必要があります。そのためには、相談内容を整理するなどの事前準備は欠かせません。

相談内容に精通した相談相手を選択する

「大規模な設備投資を検討するなど影響する税額が多額な場合」や「海外進出などに伴う税金など複雑・難しい内容」などについて相談する場合、相談内容に精通した相談者を選ぶことが大切になってきます。たとえば、相続税対策について相談する場合、専門家によって納付税額が違ってくる以上、資産税に精通した税理士に相談したほうが無難でしょう。

事前準備をきちんとするポイント

事前準備をきちんとするポイントは相談相手に的確に伝えることであり、その方法について説明します。

相談内容に関係する資料をできるだけ用意する

相談相手は「節税をしたい」など相談者のニーズと同じくらい、相談内容の事実確認を重視します。事実確認をスムーズにするためにも、相談内容に関する資料をできるだけ用意しましょう。たとえば、相続税について相談をする場合、親族関係図を裏付ける戸籍謄本などを用意すると相談相手はアドバイスしやすくなるでしょう。また、別の例として、設備投資をした場合には、購入先からの見積書・納品書・請求書などを用意したほうがベターです。

可能なら税金について勉強する

勉強時間の確保が可能なら、相談内容の税金について最低限の知識を身に付けたほうがいいでしょう。たとえば、個人事業主がある接待費を経費に計上するかどうかを検討しているとします。身に付けた税金の知識より、事業との関連性の有無が経費に計上できるかどうかの分岐点であることを知っていれば、事業との関連性にポイントを絞って相談相手に質問することが可能です。

相談内容に精通した相談相手を探すポイント

相談内容に精通した相談相手にたどり着けるかどうかが税務相談のメリットを最大限に享受するかどうかのカギを握っています。そこで、相談内容に精通した相談相手を探すポイントについて説明します。

「税目」と「業種」の軸で考える

税目と業種との軸で相談内容に精通しているかどうかを判断する必要があります。前述の通り、相続税について相談する場合は、相談する税目に精通していることがポイントになるでしょう。一方、医療など業界の商慣習が独特な場合、その業界に精通した相談相手を探すことが大切になってきます。

相談相手の探し方

相談相手の探し方はおもに2つあります。

(1)キーワード検索

インターネットでのキーワード検索により、相談内容に精通した相談相手を探すことができます。たとえば、医療に精通した税理士を探す場合、「医療 税理士」というキーワードで検索すれば、税理士・税理士法人がヒットします。

(2) 税理士紹介サイト

税理士紹介サイトを利用すれば、単に相談内容に精通した相談相手を探せるだけでなく、運営サイト側が相談者のニーズにあった税理士・税理士法人をコーディネートしてくれます。コーディネートしてくれるスタッフが間に入ることで、ミスマッチのリスクをより軽減することが可能です。

まとめ

税務相談のポイントは「費用対効果を最大化する」ことといっていいでしょう。相談内容に精通した相談相手を探すことがカギを握り、税目と業種の軸で考えることがポイントになってきます。そのためにも、インターネットや税理士紹介サイトを最大限に利用することをおすすめします。

TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。

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