“持続化給付金詐欺”事件簿!事件簿から学ぶ税理士の選び方

[取材/文責]マネーイズム編集部

コロナ禍により収入が大幅に減少した個人や法人に支給される「持続化給付金」。制度自体は、昨年末で打ち切られましたが(申請受け付けは、2月15日まで延長)、これを悪用して不正に給付金を受け取った事例が、相次いで発覚しています。驚くべきことに、その不祥事に「税のプロ」である税理士の関わるケースが、少なくありません。そうした税理士が、常日頃から「正しい納税」のサポートを行っていたとは、考えにくいでしょう。顧客の側からみれば、知らずにそういう先生に税務を依頼したら、大変な不利益を被ることになるかもしれないのです。税理士選びにも、注意が必要です。

不正受給の総額は数十億円に?

持続化給付金は、新型コロナの感染拡大により、前年度よりも収入が大幅に減った事業者に対し、要件を満たせば個人事業主が最高100万円、法人は同200万円が受け取れる制度です。支給要件の1つである「対象月」(減収になった月)は昨年12月までで、今年に入ってからの減収は制度の対象にはなりません。一方、コロナ感染“第3波”に配慮して、申請の受け付けは、当初の1月15日から1ヵ月延長されています。

 

経済的に厳しい状況の中、この給付金のおかげで一息ついたという事業者は、少なくありません。半面、スタート当初から問題視されたのは、支給対象にはならない人間が給付金を受け取るといった不正行為です。

 

新型コロナに関連する他の補助金や給付金などに比べて、持続化給付金の不正が目立つのは、支給スピードを優先したために、審査が緩やかだったこと。パソコンやスマートフォンから簡単に申請できることも、悪事を助長する結果になりました。

 

報道によれば、こうした不正の疑われる申請が、確認されているだけで約6,000件、金額は少なくとも30億円に上るそう。昨年12月半ばの話ですから、件数も総額もさらに増えているものと考えられます。

組織的犯罪が多発

こうした不正には、個人や1企業が売上数字をごまかすというパターンもありましたが、目立ったのは、サラリーマンや学生や主婦といった本来受給資格のない人たちを集めて申請させ、振り込まれた給付金の上前をはねる、という組織的な犯罪です。そして、その指南役や、不正に必要な確定申告(※)を代行するなどの形で、税理士の関わるケースが少なからずあったわけです。今年に入っても、沖縄県と京都府で、現役と元税理士が逮捕されています。

 

彼らの主な手口は、実際には事業をしていない学生などに、2019年に事業所得があったかのような確定申告を行わせてから、2020年にそこから大きく「減収」した虚偽の売上台帳を作成し、申請を行わせる--という単純なもの。とはいえ、抜かりなく実行するためには、税務に関するそれなりの知識が必要です。主体的に、あるいは「組織」に勧誘されて手を染めた税理士たちは、培ってきたスキルをそこに「活用」したことになります。

 

ちなみに、税理士がこの手の不正に関与した場合には、刑法上の詐欺罪に問われる可能性があるほか、税理士法の脱税相談等の禁止違反などに触れ、業務停止などの懲戒処分を受けることもあります。ネット上では、持続化給付金に関して「悪意を持つ人間の甘い誘いに乗らないように」といった税理士向けの警告を発するサイトも見られます。裏を返せば、それくらい「誘いに乗っている」税理士がたくさんいる、ということなのかもしれません。

※確定申告 その年の所得を計算して税務署に申告し、税金を納めるための手続き。

「知らなかった」では済まないことも

税理士のアドバイスに従って申請を行った人も、発覚すれば「無傷」というわけにはいきません。実際、そのパターンで給付金を受け取った学生なども、逮捕、起訴されるケースが出ています。

 

実は、通常の税務においても、無理な節税(税逃れ)を指南する税理士はいます。他の税理士のできない税金対策を提供すれば、それだけ高い報酬が取れる、顧客を増やすことができる、というモチベーションが働くのでしょう。しかし、それに従ったために痛い目に遭うリスクも、しっかり認識しておくべきだと思います。

 

顧客にとっても、目先の納税額が減るのは、ありがたいことです。しかし、後々税務署から「申告漏れ」を指摘されれば、本来支払うべき税金に加えて、加算税や延滞税などのペナルティを課せられて、節税どころか「大損」になることもあるのです。「先生のアドバイスに従っただけ」「申告漏れになるとは思わなかった」という抗弁が認められる可能性は、まずないと考えてください。

税理士紹介会社を使う方法もある

税理士に顧問や税務申告を頼むとしたら、「認められた範囲で、適切な節税を実行してくれる先生」がベスト。そうは言っても、見つけるのはなかなか難しいようにも感じます。

 

税理士の見つけ方として思い浮かぶのは、

 

  • 仕事場に近い事務所にする
  • ネットで探す(ホームページを見比べる)
  • 知人に紹介してもらう

 

などでしょうか。

 

ただ、どれも一長一短があります。例えば、事務所のホームページからは、さまざまな情報を得ることができます。ただ、それにどの程度の信憑性があるのかは、実際に会ってみないとわかりません。信頼できる知人の紹介ならば、「悪徳税理士」に出会うリスクはなくなりますが、万が一自分のニーズに合わなくても、なかなか他の先生には替えにくくなるかもしれません。

 

これらとは別に、実績のある税理士紹介会社に頼んでみるという方法もあります。「してもらいたい仕事」などの希望を伝えれば、幅広いネットワークの中からチョイスしてくれて、紹介料もかからないのです。問題のある税理士を紹介したりすれば、「実績」に傷が付きますから、そういう面でのリスクも防ぐことができるでしょう。

まとめ

持続化給付金詐欺に税理士が加担していた事例が報告され、逮捕者も出ています。税務を依頼するのならば、「正しく節税」してくれる、信頼できる税理士に。実績のある税理士紹介会社を利用するのも、1つの方法です。

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