“巣ごもり需要”で増える「ふるさと納税」来年の確定申告(2021年分)から手続が簡素化!

[取材/文責]マネーイズム編集部

好きな自治体に寄付を行うと、その全額が所得税、住民税から控除され、自治体からお礼の品(返礼品)が届く「ふるさと納税」。新型コロナ感染拡大に伴う“巣ごもり需要”などが後押しして、寄付額が伸びています。ところで、来年の確定申告から、その手続が簡素化されるのをご存知でしょうか。ますます使いやすくなったこの制度について、解説します。

2020年度の寄付額は過去最高に

ふるさと納税の仕組み

最初に、制度の仕組みをおさらいしておきましょう。ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)を行った場合に、寄付額のうち2,000円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される(差し引かれる)制度です。加えて、寄付した自治体から返礼品が届くのが、普通の寄付と違うところ。

 

イメージとしては、1年間に2,000円の手数料を支払って好きな自治体に寄付をすれば、その総額を「減税」してもらえるうえに、リクエストした地域の特産品がもらえる仕組み、と言えばいいでしょう。寄付する自治体は、いくつでも可。返礼品の価値が2,000円を超えたら、そのぶん得をするというわけです。

 

とはいえ、際限なく寄付できるわけではありませんから、その点には注意してください。上限額は、後で説明するふるさと納税サイトなどでシミュレーションすることもできます。

金額も件数も5割近く伸びた

総務省が7月30日に発表した「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、2020年度の寄付額は前年比約4割増の6,725億円、寄付件数も同5割増の3,488万件となり、いずれも2008年の制度開始以来、最高を記録しました。コロナ禍のステイホームにより高まった「お取り寄せ消費」のほか、新型コロナに立ち向かう医療従事者派の支援などを目的にした寄付が、全体を押し上げたものとみられています。

魅力が増した返礼品

ほぼ右肩上がりに「市場」を広げてきたふるさと納税ですが、実は19年度には寄付額が減少していました。寄付を集めるために高額化していた返礼品に対し、その調達費は寄付額の3割以下とする、といった規制がかけられたうえ、従わない一部自治体が制度から除外されたことなどが原因でした。

 

さきほど説明したように、この制度は、どこかの自治体に寄付を行うと、その人の住む自治体の住民税が削られる仕組みになっているため、特に魅力的な地場産品の乏しい都市部の税収には少なくない影響も与えました。「返礼品競走」の規制には、そうした状況を緩和する目的があったわけです。

 

ところが、皮肉なことに、コロナ禍の長期化が返礼品の値打ちを高める結果になりました。飲食店の休業により行き場を失った食材などが返礼品市場に回ったために、ディスカウントが起こったのです。平たく言えば、同じ寄付金額でも以前よりグレードの高い、あるいは増量された返礼品がもらえる状況が生まれました。寄付額が増加に転じたのには、そういう背景もあったものと思われます。

申告手続きはどのように簡素化されるのか

控除を受けるためには、原則として確定申告が必要

では、来年の確定申告からどこが変わるのか、具体的にみていくことにしましょう。

 

話の前提として、ふるさと納税による所得税、住民税の控除を受けるためには、原則として確定申告(※)が必要になります。「原則として」と言ったのは、サラリーマン(給与所得者)などの場合には、「ワンストップ特例制度」という仕組みがあって、確定申告が必要ないからです。ただし、この制度を使えるのは、1年間の寄付先が5自治体以内の場合で、それを超えるときには、やはり申告が必要になります。

「証明書」は1枚でよくなった

ふるさと納税で寄付を行うと、毎回その自治体から「寄付金受領証明書」が送られてきます。今年の確定申告までは、年末まで保管しておいたそれを、1枚ずつ貼り付けて郵送したり、何度もデータを入力したり、という手間が発生していました。

 

しかし、来年(2021年分)の申告からは、「特定事業者」ごとに発行される「寄付金控除に関する証明書」が1枚あれば、手続きができるようになります。「特定事業者」というのは、国税庁指定のふるさと納税サイト運営者(後述)のことで、ふるさと納税は基本的にこれらのサイトを通して行います。

 

来年からは、個々に発行されていた寄付金受領証明書を見ながら、寄付額の合計を自分で計算する必要もなくなりました。確定申告書には、寄付額の合計を記入する欄がありますが、今後は、特定事業者発行の証明書に書かれている合計額を、そのまま転記するだけでOKです。

 

※確定申告 その年の所得を計算して税務署に申告し、税金を納めるための手続き。原則として、翌年3月15日が申告期限となっている。

特定指定業者とは?

国税庁長官が指定した特定事業者は、以下の通りです(2021年7月30日現在)。

 

  • ふるなび
  • さとふる
  • 楽天ふるさと納税
  • ふるさとチョイス
  • ふるさとパレット
  • ふるさとプレミアム
  • ふるさとぷらす
  • セゾンのふるさと納税
  • ANAのふるさと納税
  • ふるさと本舗
  • 三越伊勢丹ふるさと納税
  • JALふるさと納税

手続きはこうやる!

さらに、具体的な申告手続の方法を解説します。

 

まず、さきほど述べた「寄付金控除証明書」を入手します。上記の特定事業者のサイト(マイページ)から、XMLファイルの形でダウンロードすることができます。ふるさと納税はその年の12月31日が締め切りですから、今回は、各サイトとも21年1月をめどに入手が可能になるものと思われます。

 

⇒電子申告(「e-Tax」)の場合 ダウンロードした証明書データを、申告書に添付して送信します。

 

⇒税務署に持参、郵送の場合 ダウンロードした証明書データを、国税庁が提供する「QRコード付き証明書等作成システム」で読み込み、これをプリントアウトした書類を申告書に添付して申告します。なお、「証明書等作成システム」は、21年10月頃に更新し、「寄付金控除証明書」に対応する予定だとしています。

注意すべき点は?

特にふるさと納税制度を使って多くの自治体に寄付を行い、自分で確定申告している人にとっては、今回の手続の簡素化はメリットが大きいと思います。ただし、複数のサイトから寄付を行った場合には、事業者ごとに証明書を入手する必要がありますから、忘れないようにしましょう。

 

なお、来年以降も、自治体から「寄付金受領証明書」が送られてきますから、従来通りそれを使って申告することも可能です。また、「寄付金控除証明書」で確定申告できないようなケースに備えて、しっかり保管しておくようにしましょう。

 

「ワンストップ特例制度」を利用する給与所得者の場合は、そもそも確定申告は不要ですから、従来とやり方は変わりません。寄付ごとに、自治体に対して「ワンストップ特例申請書」を送付する必要があります。

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まとめ

来年から、ふるさと納税の確定申告の手続きが簡素化されます。コロナ禍に苦しむ生産者支援の意味も込めて、利用してみるのもいいのではないでしょうか。

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