会社設立と事業活動を円滑にする印鑑の作成方法と印鑑証明書の取得方法
印鑑は会社の顔の役割を果たすため、会社設立の段階で対外的に印象をよくする印鑑を作成することが大切です。また、印鑑証明書の取得方法を合理化すると、事務の合理化にもつなげられます。そこで、会社設立と事業活動を円滑にする視点から信用度がアップする印鑑の作成方法と印鑑証明書の取得方法について解説します。
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会社設立に必要な印鑑とは
会社設立の手続きと事業活動に必要な印鑑について説明します。
作成する印鑑は4種類
作成する印鑑は用途別に4種類必要になります。
(1)会社の実印(代表者印)
会社設立の手続きや重要な契約書類などに押印するのに必要です。会社の実印さえあれば、法人のすべての取引が完結できるため、紛失しないように注意しましょう。
(2)会社の銀行印
会社の実印を銀行印としての使用も可能ですが、紛失によるリスク分散のために専用の銀行印を作成するのが一般的です。銀行印は会社の資金繰りの管理に直結するため、悪用されないように厳重に管理しましょう。
(3)角印(社印)
角印は会社の認印の位置づけになり、請求書や社内文書などで使用されます。実印や銀行印よりも重要度は低くなりますが、書類に角印が押されているほうが相手に与える印象がよくなります。
(4)住所印(ゴム印)
住所印はなくても対外的に問題ありませんが、書類に住所を記入する手間を省くのに便利です。特に設立当初はさまざまな手続きに必要な書類に住所を書く機会が多いため、住所印が威力を発揮します。たとえば、「東京都中央区銀座〇丁目〇番〇号 △△ビル303」を手で記入するのと、住所印を押すのとでは、事務的手間に差が生じてしまいます。
印鑑証明書も忘れずに入手しよう
押印した印鑑が実印であると証明するのが印鑑証明書です。会社設立後は必ず法務局から入手しましょう。おもに次の用途で必要になるためです。
- 法人口座の開設
- 法人用のクレジットカードを作るとき
- 事務所などの賃貸物件を借りるとき
特に法人口座の開設の遅れは、入金口座を代表者などの個人名義にせざるを得なくなるため、対外的な信用低下につながる可能性があります。
印鑑を作成するポイント
実印や銀行印などの印鑑は事業経営に重要な影響を及ぼすため、作成方法をきちんと押さえることが大切です。印鑑の見た目の印象はもちろん、購入場所をどこにするかも大事なポイントになります。
商号の確定後に作成するのが原則
そもそも「〇〇株式会社」など商号のついた印鑑を使用するため、確定する前に作成したのでは二度手間になる可能性があります。たとえば、「合同会社□□サービス」の社名を検討し、すでに印鑑を作成しているとします。類似商号の調査の結果、別法人が似たような社名のため、「サービス」の文字を取り除いて「合同会社□□」とした場合、印鑑を作り直さなければなりません。
印鑑の作成手順
実印、銀行印、角印ごとに基本的な作成手順を説明します。
(1)サイズを決める
一般的に奨励されているサイズは次の通りです。
- ①実印
実印は「一辺が10.00mm〜30.00mmの正方形に納まるもの」と規定されているため、その範囲内のサイズにする必要があります。奨励されているサイズは18.00mmであり、実印としての風格を求める場合は21.00mmがよいとされています。 - ②銀行印
銀行印は18.00mm前後の実印との混同さけるため、違うサイズにするのがポイントです。一般的には16.5mmと少し小さめにします - ③角印
角印は実印や銀行印よりも大きくするのが一般的であり、ある通販サイトでは21.00mmまたは 24.00mmを法人が選べるようになっています。
(2)形状を選択する
「丸印・角印」と「天丸・寸胴」の組み合わせにより形状を選択します。たとえば、丸印と天丸を組み合わせた印鑑は右の画像の通りです。
→例)丸印天丸
一方、丸印と寸胴を組み合わせた印鑑は右の画像の通りです。
→例)丸印寸胴
天丸は、持ちやすく一般的に選ばれる形状の印鑑です。一方、寸銅は天丸よりも費用が安く済みます。
(3)書体を決める
偽造防止のために可読性が低く、威厳のある書体にするのがポイントであり、篆書体(てんしょたい)または印相体(いんそうたい)が一般的です。
(4)素材・印材を決める
会社の印鑑で一般的に使用されている素材・印材を紹介します。
- ①チタン:耐久性に優れている
- ②象牙:高級感がある
- ③黒水牛:費用が安く済み、耐久性にも優れている
購入場所を検討する
購入費用、品数や耐久性などの品質、注文から手元に届くまでの時間などを加味しながら印鑑の購入場所を検討しましょう。それでは購入場所の種類ごとのメリット・デメリットを紹介します。
(1) 専門店以外の100円ショップや文房具屋など
- メリット:値段が安い
- デメリット:耐久性が低い
(2)実店舗のはんこ屋
- メリット:質問や相談がしやすい
- デメリット:注文して印鑑の到着までに時間がかかる、値段が高い、印鑑の種類が少ない
(3)ネット通販
- メリット:リアル店舗よりも値段が安い、即日発送が可能、品数が豊富
- デメリット:実物を確認できない、印鑑の作成方法についてインターネットから自分で情報収集する必要がある、細かい要望が対面でないため、実店舗よりも伝えにくい
(4)印鑑作成フリーソフトを使う(電子印鑑)
- メリット:完全オリジナルの印鑑が作れる、購入するよりも安い
- デメリット:手間がかかる、実印や銀行員として使用するのにはセキュリティ面で不安
印鑑カードの取得方法
印鑑証明書の取得に印鑑カードが必要になるため、取得方法について説明します。
印鑑カード交付申請書を用意する
印鑑届書に登録した実印を印鑑カード交付申請書に押印して、法務局の窓口に提出し、印鑑カードを取得します。印鑑届書と印鑑カード交付申請書は似たような言葉ですが、違いは次の通りです。
- 印鑑届書:会社設立の際に登記書類と一緒に提出するもの
- 印鑑カード交付申請書:会社設立登記完了後に法務局(登記所)の窓口に提出するもの
なお、会社設立時に印鑑カードを取得する場合、設立登記の完了と同時に取得するのが一般的です。
印鑑カード交付申請書の記入方法
- ①商号・名称:会社の正式名称を記入する
- ②本店・主たる事務所:会社の住所を正確に記入する
- ③印鑑提出者:代表取締役、取締役などから選択し、生年月日と氏名を記入する
- ④会社法人等番号:登記簿謄本に記載されている番号を参照する
- ⑤申請人:印鑑提出者または代理人を選択する
- ⑥委任状:代表取締役以外の代理人が申請する場合には、委任状の欄に代理人と印鑑提出者の住所・氏名を記入し、会社の実印を押印する
印鑑証明書の取得方法
前述の印鑑カードと全く別物である印鑑証明書の取得方法について説明します。
取得方法は4種類
印鑑証明書とは、登録された印鑑が本物であることを証明する書類です。印鑑カードは印鑑証明書の発行で必要であり、取得後、次の4種類の取得方法を選択できます。
(1)法務局の窓口
窓口に手数料に相当する収入印紙を貼り付けた「印鑑登録証明書交付申請書」を提出します。
(2)証明書発行請求機
証明書発行請求機のある法務局に限定された取得方法です。おもに法務局の本局や都市部の出張所に設置されている傾向にあります。
(3)郵送での請求
印鑑証明書を郵送で請求する場合、申請書、収入印紙、返信用の封筒と郵便切手、印鑑カードが必要になります。
(4)オンライン申請
最も手間がかからない取得方法がオンライン申請であり、メリットは次の通りです。
- 申請のための往復交通費、移動時間や待ち時間が節約できる
- 申請窓口の対応時間外でも申請できる
具体的には法務局の登記・供託オンライン申請システムを利用し、印鑑証明書を取得します。
オンライン申請には電子証明書が必要
オンライン申請には事前に電子証明書を取得する必要があります。この手続きは1回限りです。手続きの場所は近くの法人を管轄する法務局になります。
他の手続きにも電子証明書は活用できる
電子証明書は登記・供託オンライン申請システム以外でも、以下のような場面で活用できます。
申請手続 | 利用可能な電子証明書 (各システムホームページへのリンク) |
---|---|
e-Tax(国税電子申告・納税システム) | 国税庁(e-Tax)ホームページ |
eLTAX(地方税電子申告) | eLTAX地方税ポータルシステム |
社会保険・労働保険関係手続 | 日本年金機構ホームページ |
電子証明書を取得するまでの流れ
電子証明書を取得するまでの流れは次の通りです。
STEP1:申請書等を作成する
法務省ホームページの『商業登記電子認証ソフト』を無償でダウンロードし、電子データの電子署名などで用いる鍵ペアファイル、登記所に提出するファイル(「SHINSEI」ファイル)、PDFファイルの申請書を作成します。
STEP2:法務局で申請する
PDFファイルの申請書、「SHINSEI」ファイルのみを保存したCD、DVD、USBメモリなどの電子媒体、印鑑カードを持参します。法務局からは「電子証明書発行確認票」を受け取ります。
STEP3:電子証明書の取得(ダウンロード)
鍵ペアファイルと電子証明書発行確認票を用意して、電子証明書を取得します。
まとめ
印鑑を作成するポイントは、対外的な信用を得るために品質を追及しながらも、費用との兼ね合いをつけることでしょう。一方、印鑑証明書の取得方法はオンライン申請を可能にし、時短につなげられるようにするのがポイントになります。そのためにも会社の設立時に電子証明書の取得をおすすめします。
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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