仮想通貨の取引所FTXが経営破綻、創業者が逮捕!大谷選手・大坂選手など広告塔の提訴はどうなる?
2022年11月仮想通貨取引所FTXが経営破綻したニュースにより、仮想通貨「ビットコイン」は急落しました。翌月には創業者のサム・バンクマン・フリード氏が、証券詐欺・電信詐欺・マネーロンダリングの罪などに問われ逮捕されています。FTXの仕組みや経営破綻の原因と逮捕の理由、投資家が大谷選手など著名人を提訴した件を解説していきます。
仮想通貨取引所「FTX」が経営破綻、創業者がバハマで逮捕される
仮想通貨取引所「FTX」が経営破綻。
投資家が広告に携わった著名人を提訴、そして創業者が逮捕に
FTXとはサム・バンクマン・フリード氏が2019年に香港で創設した仮想通貨の海外取引所で、バハマに本社があります。
日本にも「FTX Japan株式会社」があり、仮想通貨取引プラットフォーム「Liquid by FTX(リキッドバイエフティーエックス)」を開発・運営しています。
日本ではMLBの大谷翔平選手がテレビCMに出演し、テニスの大坂なおみ選手はパートナーシップを締結しています。
FTXは仮想通貨の取引手数料が安価、取引オプションが豊富なことから人気が高く、近年は最大手の「Binance(バイナンス)」に次ぐ世界第2位の取引高に成長していました。
2022年1月には同社の企業価値の評価額は320億ドル(約4.4兆円)に達しましたが、11月11日にアメリカで連邦破産法11条を申請したと公表され経営破綻が明るみになりました。
FTXの経営破綻によりアメリカの投資家が「損害を受けた投資家が同社の宣伝に関わった著名人にも賠償責任がある」として大谷翔平選手や大坂なおみ選手らを米南部フロリダ州の裁判所に提訴したと報じられました。
2022年12月12日には創業者のサム・バンクマン・フリード氏がバハマで逮捕され、アメリカ当局では同氏の刑事訴追手続きを開始しました。
サム・バンクマン・フリード氏は頭文字の「SBF」という愛称で知られ業界の「白馬の騎士」「風雲児」と呼ばれていました。なぜFTXは経営破綻に至り、サム・バンクマン・フリード氏は逮捕される事態に陥ったのでしょうか?
仮想通貨取引所「FTX」とは
仮想通貨取引所FTXとはユーザーが暗号資産・仮想通貨を取引できるプラットフォームを運営しています。日本ではFTX Japan株式会社が「Liquid by FTX」を運営しており、「ビットコイン」「イーサリアム」「リップル」など11種類の仮想通貨・暗号資産を取り扱っています。
仮想通貨取引所は、ユーザーが通貨を持っている他のユーザーと売買条件が一致した場合に取引ができるシステムです。株のように「〇円で売りたい」投資家と「〇円で買いたい」と希望する投資家の条件が一致した際に取引が成立し、取引所を通じて買い手のウォレットに仮想通貨が送られます。取引所は取引を仲介した対価としてユーザーから売買手数料を受け取ります。売買手数料の他にも手数料がかかり、取引所は手数料で儲かる仕組みとなっています。
上記のように仮想通貨・暗号資産は、個人間で財産的な価値のあるものをやり取りすることができるシステムとして高い注目を集めました。
現在のように仮想通貨の需要が高まる前は取引方法が非効率的でした。自身もトレードを行うサム・バンクマン・フリード氏は効率性を高めたサービスの収益や将来性を見通し、FTXの前身となるアラメダリサーチ社を創設しました。
アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)がコロナ禍の対策として大規模な金融緩和を実行しました。金融緩和による「金余り」の状況、テスラ社のCEOイーロン・マスク氏のBTC(ビットコイン)への投資、BTCのETFが誕生したことなどから人気が高まり仮想通貨は高騰しました。
仮想通貨市場の急拡大とともに、2021年にFTXは前年比で10倍以上の約1,400億円(10.2億ドル)の収益を計上したと報じられました。
さらに2022年1月には企業価値の評価額は320億ドル(約4.4兆円)にのぼり、大手金融機関の時価総額を上回りました。
仮想通貨「FTX」が破綻したのはなぜ?
2022年11月11日に、FTXは日本の民事再生法にあたる米連邦破産法11条の適用を申請しました。FTXの経営破綻は、債権者数が100万人を超える可能性があり暗号資産業界で過去最大の規模とされています。
同社破綻のきっかけは「取り付け騒ぎ」により、資金繰りが悪化したことと見られています。まず11月始めにFTXの財務の健全性を疑問視するニュースが流れました。
その後、業界最大手「Binance」のCEOは「FTX発行の資産を清算する」とツイッターに投稿しました。「Binance」はFTXの買収を検討しましたが翌日に撤回され、経営に不安を抱いた投資家はFTXから資金を引き出しました。
日本ではFTXJapanに対し関東財務局が2022年12月10日から業務停止命令・資産の国内保有命令を発令しています。同社のホームページには「お客様の資産を速やかに返還できる状況ではありません」と記載されています。
約130にのぼるグループ会社も適用対象で、顧客からの資金の引き出しは最大で80億ドル(約1兆1,000億円)不足していると言われています。
2021年は約1,400億円(10.2億ドル)の収益を計上し、バンクマンフリード氏はインタビューでもFTXが利益を上げていると繰り返し発言していました。
しかし11月20日にデラウェア州地方裁判所に提出された書類からは、FTXとアラメダリサーチが実際には合計37億ドル(約5,240億円)の繰越欠損金を計上していたことが明らかになりました。
サム・バンクマンフリード氏の逮捕で明らかになった
ずさんな経営と相場操縦疑惑
2022年12月12日にバハマでバンクマンフリード氏が逮捕されました。
翌日にはアメリカ証券取引委員会(SEC)が同氏を起訴したことを発表しています。
同氏はFTXの顧客資産をアラメダリサーチで流用していた、違法な政治献金を行った、財務状況で虚偽または誤解を招く情報を提供したなどの疑惑があります。
特にFTXの顧客資産を不正に流用し、投資会社アラメダリサーチの債務やリスク投資に充てたことは注目を集めています。
アメリカ議会下院の金融サービス委員会は13日にFTXが経営破綻に至った経緯などを明らかにするため公聴会を開きました。公聴会には当初バンクマンフリード氏もオンラインで参加予定でした。
公聴会でFTXの新CEOに就任したジョン・レイ氏が、破綻の原因としてずさんな経営を指摘しています。「問題は一夜にして起きたのではなく、数カ月前、数年前から起きていた」と述べ、会社の幹部・経営陣らが長年に渡り顧客のデータ・資産に自由にアクセスできる状況が問題と証言しています。
アメリカ司法省は有罪と認定された場合に電信詐欺とマネーロンダリングの罪(それぞれ最大20年)、商品・証券詐欺、選挙資金不正の罪(それぞれ最大5年)の刑が言い渡される可能性があるという声明を発表しています。
同氏はアメリカで刑事責任を問うための身柄引き渡しに抵抗し争う方針で、引き渡しの審理は2023年2月8日に行われる予定です。
仮想通貨への影響は?米投資家の著名人提訴はどうなる?
FTX破産申請によりビットコインは急落しましたが、12月14日時点では回復の傾向にあります。しかし、いまだFTX経営破綻以前の水準には戻っていません。
FRBの利上げペースも仮想通貨に影響を及ぼします。15日にはFOMC(連邦公開市場委員会)を控えており、FTX事件の全貌が明らかになっていない中で先行きは不透明と言えるでしょう。
投資家が「FTXは詐欺的行為で経験の浅い投資家をだまし、米国の投資家に110億ドル(約1.5兆円)超の損害を与えた。著名人は宣伝に加担した」と11人の著名人を提訴した件では「広告をした有名人も罪に問われるのか」という点が注目されています。
仮想通貨業界に加え、広告業界にも波紋を広げているFTXの経営破綻問題と創業者の逮捕。今後の動向を注視していきましょう。
まとめ
仮想通貨取引所FTXの経営破綻はずさんな経営に加え、創業者や経営陣がマネーロンダリングや相場操縦に関与したという疑惑があります。
仮想通貨は近年急激に人気が高まり、新興企業が乱立している状況にあります。取引時にはプラットフォームも慎重に検討しましょう。
▼参照サイト
大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFなどを中心に資産運用中。CFP(R)の相続・事業承継に科目合格、現在も資格取得に向けて勉強中。
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