ゼロゼロ融資の返済が本格化!倒産企業が増加する背景や借換制度について

[取材/文責]なかもとともあき

ゼロゼロ融資とは新型コロナウイルスの影響で売上が落ち、経営が厳しくなった企業を対象に実質無利子・無担保で融資を行う制度です。ゼロゼロ融資の返済が2023年7月頃から本格化するにあたって、倒産する企業が増えるのではないかと言われています。その理由や返済に困った際の対応方法について詳しく説明します。

ゼロゼロ融資とはなにか

ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルス(以下、コロナ)で影響を受けた中小企業が対象の、実質無利子(利子ゼロ)・無担保(担保ゼロ)で融資を受けられる制度の総称です。
コロナが全国的に流行した2020年4月に第1回目の緊急事態宣言が出されました。行動制限やイベントの中止が相次ぎ、多くの企業の売上が減少したことをうけ、ゼロゼロ融資が実施されました。ゼロゼロ融資は実質無利子で長期間借入できるため、中小企業の資金繰り改善や倒産を防ぐ効果が期待されていました。
当初、ゼロゼロ融資は2020年3月から2022年6月まで行われる予定でしたが、コロナの影響が長引き需要が多かったため2022年9月まで延長されました。

ゼロゼロ融資の仕組み

ゼロゼロ融資の対象は、コロナの影響で売上が減少した中小企業や個人事業主です。はじめは政府系金融機関の日本政策金融公庫や商工組合中央金庫が行っていましたが、利用者が増えたため2020年5月から民間の金融機関によるゼロゼロ融資もスタートしました。
ゼロゼロ融資では融資開始から3年間は都道府県が利子分を負担してくれるため、実質は無利子で借入することができます。
上限額や融資期間は融資の種類によって異なりますので、この後詳しく解説していきます。

返済開始日について

返済開始日は借入した日によって異なります。2020年5月に民間の金融機関によるゼロゼロ融資がスタートしたため、実質無利子期間の3年が経過し、利払いが開始される企業が2023年5月から増え始めています。そして2023年7月には返済開始のピークを迎えると言われています。
3年間の実質無利子と5年間の据置期間を設定していた企業はこれまで返済はありませんでした。借入から3年を経過し返済がスタートする企業は、返済金の負担や物価高などから、経営が圧迫される企業が増えると予想されています。
ちなみに帝国データバンクの調査によると2023年6月時点では、コロナ融資後の倒産数は前年比で約1.6倍に増えたという結果が出ています。

ゼロゼロ融資の種類

ゼロゼロ融資とはいくつかの融資の総称ですが、具体的に1つずつ見ていきましょう。

新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)

対象者 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、次の1または2のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方
1.次のいずれかに該当する方
(1)最近1カ月間の売上高または過去6カ月(最近1カ月含む)の平均売上高が前5年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している方
(2)業歴3カ月以上1年1カ月未満の場合等は、最近1カ月間の売上高または過去6カ月(最近1カ月を含む)の平均売上高(業歴6カ月未満の場合は、開業から最近1カ月までの平均売上高)が次のいずれかと比較して5%以上減少している方
ア.過去3カ月(最近1カ月含む)の平均売上高
イ.令和元年12月の売上高
ウ.令和元年10月から12月の平均売上高
2.債務負債が重くなっている方
資金使途 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等により必要とする設備資金および運転資金
融資限度額 8,000万円
融資期間 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金:20年以内(うち据置期間5年以内)
担保 無担保

参考:新型コロナウイルス感染症特別貸付❘ 日本政策金融公庫

新型コロナウイルス感染症特別貸付(中小企業向け制度)(商工組合中央金庫)

対象者 新型コロナウイルス感染症の影響により直近1カ月の売上高が、前年または前々年の同期比5%以上減少している方
資金使途 設備資金
運転資金
融資限度額 元金:20億円以内
残高:3億円以内
融資期間 設備資金:20年以内(据置5年以内)
運転資金:15年以内(据置5年以内)

参考:新型コロナウイルス感染症特別貸付❘ 商工中金

新型コロナウイルス感染症対応資金(民間金融機関)

都道府県の制度として、民間の金融機関から融資を行います。

対象者 次の1および2に該当する中小企業者または組合
1.経営行動計画書を策定していること
2.(ア)から(オ)のいずれかに該当すること
(ア)セーフティネット保証4号の認定の取得
(イ)セーフティネット保証5号の認定の取得
(ウ)最近1カ月の売上高が前年同月に比して5%以上減少している
(エ)最近1カ月間の売上高総利益率が前年同月・直近決算のいずれかの売上高総利益率と比較して5%以上減少しているまたは直近決算の売上高総利益率が直近決算前期の売上高営業利益率と比較して5%以上減少している
(オ)最近1カ月間の売上高営業利益率が前年同月・直近決算のいずれかの売上高営業利益率と比較して5%以上減少しているまたは直近決算の売上高営業利益率が直近決算前期の売上高営業利益率と比較して5%以上減少している
資金使途 運転資金
設備資金
融資限度額 1億円
融資期間 10年以内(据置5年以内)
一括返済は1年以内

参考:参考:新型コロナウイルス感染症対応融資(伴走全国)❘ 商工中金

特別利子補給制度

ゼロゼロ融資により倒産の危機を切り抜けた企業は多くありました。
2020年2月頃のコロナが直撃した時期は、コロナ・ショックと言われ、2008年のリーマンショックを超えて1930年代の大恐慌に匹敵すると言われるほどの不況でした。しかしゼロゼロ融資を行ったことで、コロナ・ショックという不況期にも関わらず、企業の倒産件数は歴史的低水準に抑えられました。

ゼロゼロ融資の効果とリスク

ゼロゼロ融資は、コロナで経営が厳しかった企業が資金繰りを改善できるという反面、リスクがあるとも言われています。

ゼロゼロ融資の効果

ゼロゼロ融資により倒産の危機を切り抜けた企業は多くありました。
2020年2月頃のコロナが直撃した時期は、コロナ・ショックと言われ、2008年のリーマンショックを超えて1930年代の大恐慌に匹敵すると言われるほどの不況でした。しかしゼロゼロ融資を行ったことで、コロナ・ショックという不況期にも関わらず、企業の倒産件数は歴史的低水準に抑えられました。

帝国データバンクの調査によると、2020年度の倒産件数は、20年ぶりに8,000件を下回る7,314件という低水準で、業種によっては過去最少となったということです。

また、2021年度の倒産件数は6,015件で、半世紀ぶりの歴史的低水準という結果でした。

ゼロゼロ融資のリスク

コロナの不況にも関わらず倒産企業が激減したのは、返済能力のない企業への過剰な融資が原因とも言われています。
コロナ禍に売上が減少して業績が厳しくなった企業が、ゼロゼロ融資を受けることで、なんとか倒産を免れたとしても、返済時に売上が回復していなければ返済不能により倒産してしまいます。
このような状況から結局、ゼロゼロ融資は一時的な延命措置のようなものだったのではないかともいわれていますまた、ゼロゼロ融資を返済できずに借入した企業が倒産した場合、補てんする財源は税金からまかなわれるという点に、批判する声も上がっています。

ゼロゼロ融資の返済負担を軽減する、コロナ借換保証制度とは?

いまだにコロナの影響で売上が回復せず、ゼロゼロ融資の返済が厳しいという企業が利用できる「コロナ借換保証制度」が創設されました。借換とは、ある金融機関から借入して、他の金融機関から借入している既存の融資を返済することです。

コロナ借換保証の内容

当初の予想よりコロナの影響が長期化していることや、最近の物価高などの影響により多くの中小企業が引き続き厳しい状況にあることから、コロナ借換保証制度が創設されました。
コロナ借換保証制度を利用すれば、新たに借入する際の信用保証料を大幅に引き下げることが可能となります。
2023年1月10日より開始され、対象者は「売上または利益率が5%以上減少している方など」です。

保証限度額 1億円
保証期間 10年以内
据置期間 5年以内
金利 金融機関所定
保証料(事業者負担) 0.2%等(補助前は0.85%等)

参考:民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度(コロナ借換保証)を開始します。❘ 中小企業庁

申請手続きの流れ

コロナ借換保証を受けるには、金融機関との対話を通じて「経営行動計画書」を作成したうえで、金融機関による継続的な伴走支援を受けることが条件になります。

①経営行動計画書を作成
②金融機関へ申込
③金融機関が認定申請や保証審査を依頼
④金融機関からの融資と継続的な伴走支援

YouTubeで「ゼロゼロ融資」について解説中!

【ゼロゼロ融資】これから倒産する会社が急増する?

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まとめ

ゼロゼロ融資はコロナの不況時に中小企業を倒産から救いましたが、返済が本格化した昨今、経営が回復していない企業は同様に倒産の危機に陥っているため、単なる延命措置だったとも言われています。
いまだに売上が回復せずに経営が厳しい中小企業は、返済による更なる経営悪化を防ぐため、コロナ借換保証制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

法政大学を卒業後、地方銀行で3年間勤務。その後、ITベンチャー企業に転職し立ち上げ期の経理や人事労務を経験。補助金代理申請の担当も行っていました。読者の視点に近い、わかりやすい文章を書くことを意識しています。卒業後は大手建設会社で営業として勤務しており、その後大手コンサルティング会社に転職。不動産や税金、建築の専門知識を保有。経験や知識を活かして、中学生でも分かりやすい記事を心がけています。

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