10月以降政府が新型コロナウイルス治療薬支援を見直し

[取材/文責]鈴木林太郎

新型コロナウイルス治療薬の治療費について、政府は10月からの支援策を見直す方針を示しました。9月末までは治療費全額が公費でカバーされますが、今後は患者の負担が増え、最大で月9000円の負担が求められます。
この見直しでは、患者の負担を軽減するため、治療1回あたりの患者負担に上限を設ける予定です。窓口負担が1割の場合、患者は3000円を負担し、2割の場合は6000円になります。

患者負担の段階的上限設定

高額な治療費がかかる場合、特に重症化リスクの高い患者を対象に、負担額の上限を設け、その上限を超える費用は公費でサポートされます。治療薬の種類によっても費用に差があります。
たとえば、重症化リスクの高い患者を対象とした、米メルク社の治療薬「ラゲブリオ」は約9万4000円(1治療あたりの費用)、重症化リスクの低い患者でも使用できる塩野義製薬の「ゾコーバ」は約5万2000円(1治療あたりの費用)、米ファイザーの「パキロビッドパック」は約9万9000円(1治療あたりの費用)の見込みですが、患者負担分の上限額を設けて、上回った分は公費で負担します。

そして、入院費用についても変更があり、従来の月2万円の補助は減額されるものの、公費支援は10月以降も継続される見通しです。
政府はこの決定を、他の感染症との公平性を検討しながら行っています。
今年5月8日に新型コロナウイルスが季節性インフルエンザと同じ5類感染症に指定されたあと、入院および外来患者の対応は平常時に近づいてきました。
国は、外来患者を対象とする医療施設を6.4万カ所、入院患者を対象とする病院を8200カ所提供する目標を設定しています。しかし、2023年8月時点で、新型コロナウイルスに対応する外来患者を受け入れている施設は4.9万カ所、入院患者を受け入れている病院は7300カ所に過ぎません。
今後、冬季の感染拡大に備えて、高齢者施設における行政検査は継続される予定であり、自治体の受診相談窓口への支援も同様に維持されます。
さらに、病床確保料の支払い対象が重症患者に重点化されることが検討されています。
オミクロン型流行時の最大入院者数を踏まえて、国が感染状況の目安となる基準を示す計画です。

感染がピークに達した際に、流行状況が通常の3分の1を超える場合、病床確保料の支払いが行われる予定です。このため、都道府県は感染の段階に応じて確保する病床数を設定することになります。

新型コロナウイルス治療薬の支援策は、患者負担の公平性や感染拡大への備えを考慮しながら調整されています。
これらの変更については、患者と社会全体に影響を及ぼす重要な政策変更であり、今後、患者や医療機関に対する影響を適切に調整しながら、安全かつ効果的な治療へのアクセスを確保するための取り組みが求められることでしょう。

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