成年後見人制度が利用しやすくなる?一時利用などが検討される

[取材/文責]澤田泰弥

小泉龍司法相は2月13日、成年後見人制度の見直しについて、15日に開かれる法制審議会総会へ諮問することを発表しました。

法制審での議論を踏まえた上で、2026年度までに民法などの関連法改正を目指す見通しです。

現行の制限が厳しく成年後見人制度の利用者数は少ない

成年後見人制度とは、認知症や知的障害、精神障害などの理由により、法律行為をひとりで判断し行うのが困難な場合に、本人以外が代わりに法律手続きを担う制度のことです。

主に、財産管理(不動産や預貯金の相続手続きなど)や、身内保護(介護・福祉サービスの利用契約、施設入所手続きなど)のサポートを対象とし、親族以外にも、司法書士や社会福祉士などの専門資格を有した人が後見人として選ばれます。

本制度の目的は、被後見人に不利益な契約を回避するなどし、悪徳商法の被害に合うリスクを減らし、判断能力が低下した本人の権利と利益を守ることです。

そして今回、成年後見人制度の改正案として検討されているのは、以下のとおりです。

利用期間の変更
∟現行の終身制から期間限定の利用を可能にする
利用範囲の変更
∟現行の日常生活から財産管理までの幅広いサポートから被後見人の同意によってサポート内容を細分化できる
後見人の交代制導入
∟現行の1人体制から状況に応じて後見人を交代できる

 

現在の成年後見人制度は、一度利用されると、基本的には自身が亡くなるまで利用をやめられません。

そのため、専門家を後見人にした場合、後見人の著しい不正が見つからない限りは変更できず、毎月数万円の報酬を生涯払い続けなければならないなどの縛りがあります。

また、希望する後見人が必ずしも選ばれるわけではなく、家庭裁判所への申し立てで「候補者欄」に名前を記入しても、親族以外になるケースもめずらしくありません。最高裁判所が行った調査によると、2021年に成年後見人として親族が選ばれた割合は「19.8%」となっています。

厚生労働省によると、成年後見制度の利用者数は2022年末時点で25万人ほどと少なく、認知症患者は2025年には推計700万人以上になると考えられていることから、政府は成年後見制度の普及を急ぐとしています。

このことから、成年後見人制度を利用する際に、後見人を柔軟に選任できるようにしたり、専門家に払う毎月の報酬負担を減らしたりなど、現行よりも利用のハードルを下げる法改正が提案されました。

神奈川横浜市を中心に活動しているWebライターの澤田です。2023年3月にFP3級を取得、2023年7月にFP2級を取得しました。新しく身につけた専門知識を活かし、あなたの悩みを解決できるわかりやすい記事を目指しています。

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