日本向けベンチャーキャピタル、スタートアップへの資金供給で過去最高1.4兆円に

[取材/文責]鈴木林太郎

スタートアップに投資をするベンチャーキャピタル(以下、VC)の注目が日本に注がれています。2023年末の資金供給能力が過去最高額となる97億ドル(約1兆4000億円)を記録し、今後、日本経済を牽引するような企業が新たに台頭することが期待されます。

資金供給力向上に向けた官民一体の連携が必須

スタートアップ投資に日本政府も本気を出しています。
2022年11月28日に「スタートアップ育成5か年計画」を発表しており、日本経済の活性化に向けたスタートアップを誕生させるエコシステムの創出を目指しています。現状、2027年度のスタートアップ投資額を10兆円に増加させることを目標に掲げています。
一方で課題もあります。スタートアップ情報プラットフォームを手がけるINITIALによれば、2023年のスタートアップへの投資額は8,500億円となり、これは前年比10%減少となります。
これは世界経済の減速などの要因もあり、VC側が投資にやや慎重な姿勢であることが数字に表れています。

そもそも日本のVCは米国のVCと比較するとスケールダウンすることが指摘されてきました。日本のスタートアップ市場も一昔前と比べ、上場企業から転職するビジネスパーソンが増加するなど、確実に流れが変わっています。
近年の代表的な日本のVCとしては、グロービス・キャピタル・パートナーズが2022年に組み立てたファンドの資金調達額は727億円に上り、1社あたりは最大100億円を予定しているといいます。

ちなみに政府が2027年度に目標としている10兆円のうち、4割程度をVCによる投資を見込んでいることもあり、今後、日本のVCの資金供給能力の拡大も期待されます。

またグローバルな視点でみれば、世界のVCが運用する日本向けファンドの「待機資金」にも注目です。これは日本向けの投資を募った資金ですが、2013年末時点で13億3000万ドルから2023年末の待機資金は7倍へと膨らんでいます。
この待機資金が日本発のユニコーン企業のポテンシャルを持った企業や起業家にとって、チャンス拡大の基盤となることが期待されます。

日本のスタートアップ投資のなかでも投資が乏しい分野のひとつに「ディープテック」があります。
ディープテックとは、通常の技術革新やイノベーションよりも高度な科学的知識が必要な分野に焦点を当てています。たとえばAI(人工知能)や生命科学、ナノテクノロジー、量子コンピューティングなどが該当し、開発には基礎研究や先端技術の発展が欠かせません。そのため長期間にわたって事業化するのかわからない高いリスクが伴います。
しかし、成功した場合、地球規模の問題であるエネルギーや環境問題、医療などに多大な貢献が期待される分野であり、爆発的な経済成長が期待できる分野でもあります。

今後、さまざまな分野で日本を代表するスタートアップ企業を輩出し、日本経済の中核を担う企業が増加することが期待されます。
そのためには、リスクを取る起業家が増加し、たとえ失敗しても再挑戦しやすい環境をつくれるような豊富な資金供給力が必要となるでしょう。

官民が一体となり、日本のスタートアップ投資が発展していくことが期待されます。

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