大統領選でトランプが当選したら?影響を受ける業界や銘柄を紹介

[取材/文責]マネーイズム編集部

アメリカの大統領選挙は、世界中の経済や政治に大きな影響を与える重要なイベントです。トランプ前大統領が再び当選すると、政策やスタンスによって市場や企業に様々な影響が生じる可能性があります。本記事では、トランプ氏の当選が日本や銘柄に与える影響や、どのように備えるべきかを紹介します。

トランプが当選したら何が起こるの?

 

 
トランプ氏は大統領在任中に、関税戦争や移民政策の強化、そして国内産業の保護主義を強調していました。再び政策が実行に移されると、どの業界や銘柄がポジティブな影響を受け、またどの業界がネガティブな影響を受けるのでしょうか。ここでは、大統領選挙におけるトランプ氏の勝利がもたらす可能性について、影響を受けやすい業界や銘柄を見ていきます。

大統領になれば何でもできるわけではない

トランプ氏が再び大統領に就任したとしても、公約や政策がすぐに実行されるわけではありません。アメリカの政治制度が、大統領の権限を一定の範囲に制約しているためです。アメリカの予算や法律の策定は議会の役割であり、大統領には法案を提出する権限はありません。大統領は議会で通過した法案に対して署名するか拒否するかは決められますが、議員たちの賛否をコントロールする権限はないのです。アメリカの政治は議会と大統領が協力しなければ大きな政策を実行することが難しい仕組みになっています。
 
例えば、日本でもよく見かけるのが「アメリカ大統領が予算を通せなかった」という批判です。しかし、実際には予算編成は議会の仕事であり、大統領が単独で予算を通すことはできません。外交政策においても、例えばウクライナへの支援金など、議会の支持を得ない限り大規模な支出は困難です。
 
大統領としての権限は、世間が期待するほど絶対的なものではなく、多くの局面で議会に依存しています。そのため、トランプ氏が再び当選しても、議会の構成や協力関係が政策の実行に大きな影響を与えるでしょう。

大きな影響を受ける可能性がある業界・会社はある

トランプ氏が大統領に再選された場合、政策が米国経済や世界経済に与える影響は大きいと考えられています。特に米国の減税政策や保護主義的な貿易政策は、特定の業界や企業にポジティブまたはネガティブな影響をおよぼす可能性があるでしょう。
 
例えば、トランプ氏が再び関税を強化した場合、アメリカ国内の製造業は恩恵を受ける可能性があります。国内の生産が促進され多くの産業が保護されるでしょう。現在、日本とアメリカは日米貿易協定の発行により、日本の農産物市場に対するアメリカの参入の窓口が拡大しています。また、日本企業の電気自動車やバッテリーなどのアメリカでの生産拡大の動きもみられます。トランプ氏が再選して日本車への関税引き上げを実施すれば日本の自動車業界から大きな反発が起こるでしょう。
 
一方で、電気自動車の普及を進めてきた政策が大幅に修正されれば、結果的にトヨタ自動車をはじめとした現時点でガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車に依存しているメーカーにとってはプラスに働く可能性もあります。
 
現在、日本では急速な円安による物価高により、日本国民一人ひとりの消費を悪化させています。もしトランプ氏再選によって緩やかにドル高円安が修正されるのであれば、日本経済にプラスの働きをもたらすといえるでしょう。
 
しかし、ドル高円安の調整が必ず緩やかに進むという保証はありません。実質実効ドルが歴史的高水準にある中で、アメリカの政権が事実上の基軸通貨となるドルの価値を引き下げると正式に掲げるのは、世界経済や金融市場に大きな打撃を与えるリスクをもっています。そのため、ドル高円安の調整が急激に行われる可能性も十分あるでしょう。円高が急速に進めば、輸出企業の収益に悪影響をおよぼすおそれがあり、株価を大きく下落させることにつながります。下落が進めば日本経済にも大きな打撃を与えるでしょう。アメリカの保護主義政策と経済の大幅減速による輸出環境の悪化が重なってしまうと、日本は景気後退に陥るおそれがあります。

トランプが当選したらどんな銘柄が影響を受けるの?

 

 
トランプ氏が大統領選に当選した場合、彼の政策が株式市場に大きな影響を与えることは避けられないでしょう。再び大統領に就任した場合、特定の業界や企業は恩恵を受ける一方で、他の業界は逆風を受ける可能性があります。ここでは、トランプ氏の政策がポジティブまたはネガティブな影響を与えると予測される銘柄について見ていきます。

ポジティブな影響を受ける可能性がある銘柄

トランプ氏は、石油や天然ガス投資、掘削活動の拡大を政策方針として掲げており、エクソンモービルをはじめとした石油生産会社やガソリン車メーカーは、当選の恩恵を受けられる可能性があります。また、トランプ氏はバイデン政権による電気自動車の普及政策をたびたび非難していました。今回、トランプ氏が電気自動車購入に対する連邦税控除の廃止や関税の引き上げを実施すると、競争が激化しているEV市場でテスラが恩恵を受ける可能性が高いでしょう。
 
また、トランプ政権では金融規制が緩和され、JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカなどの銀行株も恩恵を受けるのではと予想されています。しかし、共和党副大統領候補にバンス上院議員が選ばれたため、トランプ政権誕生後に従来の共和党路線とは異なる企業の合併や買収の審査が厳格化されると考えられています。両者とも合併時の提出要件の厳格化を支持しており、大型合併の税優遇措置を廃止する法案にも署名しているのです。そのため、投資銀行をはじめとしたM&A関連銘柄には逆風が吹く可能性があるでしょう。
 
トランプ氏当選後にポジティブな影響を受けると考えられる銘柄には、トヨタ自動車、ジオグループ、バンク・オブ・アメリカ、コスモエネルギーホールディングスなどがあります。

ネガティブな影響を受ける可能性がある銘柄

トランプ氏が推進する「アメリカ第一主義」の影響を強く受ける輸出産業や、グローバルなサプライチェーンに依存する企業はリスクが高いと考えられるでしょう。保護主義的な貿易政策が再び強化される可能性があるため、外国企業や国際的に活動する日本企業は影響を受ける可能性があります。
 
前回の政権時に米中貿易摩擦が深刻化した際、多くの輸出企業が影響を受け、株式市場が大きく動揺しました。輸出依存度の高い日本企業にとっては、対中関係の不安定化が大きな懸念材料となるでしょう。
 
また、トランプ氏は大規模なM&Aに対しても批判的な姿勢を示しています。また、トランプ氏は大規模なM&A(合併・買収)に対しても批判的な姿勢を示しています。2023年に日本製鉄が米大手鉄鋼メーカーUSスチールを買収すると発表した際、トランプ氏はこれに反対の意を表明しました。トランプ氏が当選すれば大型買収が阻止される可能性が高く、日本製鉄のような企業にはネガティブな影響が予測されます。

トランプ当選に備えて何をすればいいの?

 

 
2024年の大統領選挙でトランプ氏が再び当選する可能性が高まる中、投資家たちはその影響を事前に考慮する必要があります。トランプ氏が大統領に就任すれば、彼の政策が市場に多大な影響を与えることは確実でしょう。投資家としては、トランプ氏の政策に敏感に対応し、ポジティブな影響を受ける可能性のある銘柄に注目しつつ、リスクを管理するための戦略を練ることが大切です。ここでは、どのようにしてトランプ氏の再選に備えるかを具体的に見ていきます。

ポジティブな影響を受けそうな銘柄を買っておく

トランプ氏が再び大統領に当選する可能性がある場合、ポジティブな影響を受けると予測される銘柄を事前に購入しておくのは一つの戦略です。トランプ氏が再選すれば、彼の政策に合致する業界や企業が大きな恩恵を受ける可能性があります。特定の業界や分野は、彼の政策や発言によって恩恵を受ける可能性が高まると考えられます。例えば、エネルギーやインフラ整備の拡充に関する方針が打ち出されれば、それらに関連する企業が成長する機会を得やすくなるでしょう。

投資先を増やし、リスクを分散する

投資で成功するためには、リスクを最小限に抑えながら利益を狙うことが大切です。トランプ氏の再選が市場に与える影響は予測が難しいため、特定の銘柄に集中して投資するのではなく、複数の銘柄や資産に投資する「分散投資」がリスク管理のポイントとなります。例えば、エネルギー銘柄や自動車銘柄だけでなく、金融業界やテクノロジー分野にも投資を広げることで、特定の業界が不調に陥った際にも全体の損失を抑えることが可能です。
 
仮に、A社だけに全額を投資していた場合、その会社が業績不振や市場変動で大きく損失を出した場合には、投資資金が大きく減少するリスクがあります。しかし、B社やC社にも資金を分散して投資しておけば、A社が不調でもB社やC社の利益でその損失をカバーできる可能性があります。複数の企業に分散投資することで、予期せぬリスクに対応する柔軟性を持てるため、投資全体の安定性が向上するでしょう。
 
トランプ氏の政策は短期的な市場変動を引き起こす可能性があるため、ポジティブに見える銘柄にもリスクが存在します。分散投資を行っておけば、不確定要素に備え、投資のリスクを低減できるでしょう。リスクを管理しつつ、将来的な市場変動にも対応できる戦略を立てることが、長期的な投資成功の鍵となります。

大統領選の結果に関わらず、株の売買は「慌てない」のが鉄則


政治的な変化に対する市場の反応は予測が難しく、短期的な動きに焦って売買することは逆効果になりかねません。どのような結果になっても、冷静に状況を分析し、長期的な視点で資産運用を続けることが大切です。大統領選に左右されず、慌てずに投資の基本方針を守ることが、安定した資産形成の鍵となるでしょう。

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