適用は2025年3月31日まで 「中小企業投資促進税制」について解説
中小企業が設備投資を行った際に、税金の控除などが受けられる「中小企業投資促進税制」の適用期限が迫っています。適用の要件、優遇の中身や手続きの方法などについて、あらためてまとめました。
中小企業投資促進税制の対象は
この制度は、その名の通り中小事業者(個人事業主も含む)の設備投資を促進し、生産性のアップなどに結びつけてもらうのが目的です。設備投資を検討している事業者にとっては、大きなメリットが期待できるでしょう。
対象となる事業者
制度が利用できるのは、青色申告書を提出する「中小企業者等」で、具体的には次のような事業者が該当します。
- 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
- 資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
- 協同組合等(中小企業等協同組合、出資組合である商工組合など)
ただし、以下の法人は対象外です。
- 同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける、ないし2つ以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人(大企業の子会社など)
- 前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人
対象となる業種
制度が使えるのは、以下のような事業者です。
次のような業種は、対象外です。
・性風俗関連特殊営業に該当するもの
また、料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する飲食店業は、「生活衛生同業組合の組合員が営むもの」のみが指定事業となります。
対象となる設備
この制度の対象となる設備投資は、次のようなものになります。
- 機械及び装置⇒1台160万円以上
- 測定工具及び検査工具⇒1台120万円以上、あるいは1台30万円以上かつ複数合計120万円以上
- 一定のソフトウェア⇒1つのソフトウェアが70万円以上(複数合計70万円以上のものを含む)
- ただし、複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く
- 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
- 内航船舶(取得価格の75%が対象)
いずれも中古品、貸付用の設備は、対象外となります。
どんな優遇があるのか
この制度の税の優遇措置には次の2つがあり、どちらかが適用されます。
- 設備取得価額の「特別償却」(30%)
- 設備取得価額の「税額控除」(7%)
- 資本金3,000万円超の中小企業⇒①特別償却のみ利用可能
- 資本金3,000万円以下の中小企業と個人事業主⇒①特別償却と②税額控除のどちらかを選択可能
優遇措置それぞれについて、みていきましょう。
30%の特別償却
これを適用すれば、設備を取得した年度に、通常の減価償却(※)に加えて30%の償却を行うことができます。つまり、それだけ多くの経費計上ができるということです。経費を増やせば、その年の課税所得(税金がかかる所得)が圧縮され、法人税(個人事業は所得税)の節税につながります。
ただし、この特別償却は、将来の償却分の“前倒し”であることには、注意が必要です。この制度を利用しても、減価償却の期間を通じて計上できる費用の総額は、変わりません。投資した年に大きく節税し、当面の安定的な資金繰りを確保したい場合などに、有効な手立てとなるでしょう。
なお、特別償却は、限度額まで償却費を計上しなかった場合、その償却不足額を翌事業年度に繰り越すことができます。
7%の税額控除
一方、こちらを選ぶと、設備を取得した年度の課税所得に対する法人税(所得税)額から、取得価額の7%相当額を直接控除(差し引き)できます。通常の7%引きで設備投資を行ったのと同じ効果が得られるわけです。
この税額控除は、中小企業経営強化税制(※)の税額控除との合計で、その事業年度の法人税(所得税)額の20%が上限となっています。税額控除限度額を超える金額については、翌事業年度に繰り越すことができます。
「特別償却」か「税額控除」か
どちらかを選べる場合、説明したように、確かな「実利」が得られるのは税額控除といえます。考え方としては、あえて特別償却にする必要性がないと考えられる場合には、税額控除を選択すればいいのではないでしょうか。
一方、当面の税負担を大きく減らしたいときには、特別償却が効果的な場合もあります。自社の財務状況や利益の見通しを明らかにしたうえで、検討するようにしましょう。
個人事業主に課税される所得税は、所得が増えるほど税率も上がる累進課税になっていますから、利益が出そうな年に多くの経費を計上してそれを抑えることで、節税効果が期待できます。そのため、設備投資をした年に大きく利益が出る場合には、特別償却を行うメリットが大きいと考えられるでしょう。逆に、翌年以降に利益が伸びそうなケースで償却の“前倒し”を行うと、節税効果が薄れる可能性があります。
適用を受けるための手続きは
この制度の利用に、特別な手続きは必要ありません。確定申告書に必要書類を記載し、必要書類を添付して申請します。
個人事業主
- 特別償却の場合、青色申告決算書の「減価償却の計算」の「㋬割増(特別)償却費」の欄に特別償却の額を、「摘要」の欄に特例名(措法10の5の3)を記入し、特別償却に関する明細書を確定申告書に添付する
- 税額控除の場合、明細書を確定申告書に添付する
法人
- 特別償却の場合、法人税の確定申告書に特別償却の付表と適用額明細書を添付する
- 税額控除の場合、法人税の確定申告書に別表と適用額明細書を添付する
適用期間は2025年3月末
この制度の適用を受けるためには、2025年3月31日までに、「対象設備の取得等をして指定事業の用に供すること」が条件となっています。対象となる設備投資を考えている場合には、制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
一方、高額の出費を伴うものですから、必要性が測りきれない投資を「駆け込み」で行うようなことは慎むべきでしょう。不要な設備にコストをかければ、逆に経営の圧迫要因になる可能性のあることには、注意が必要です。
まとめ
中小企業投資促進税制の適用期限が迫っています。生産性向上に向けた設備投資を考えている事業者の方は、活用を検討してみてはいかがでしょうか。特別償却か税額控除かの選択など判断に迷う場合には、早めに税理士をはじめとする専門家に相談することをお勧めします。
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