資産管理会社を設立したほうがよい資産額の目安は?メリット・デメリットも解説
近年、富裕層だけではなく、一般の会社員も資産管理会社を設立するようになりました。なぜなら、資産管理会社を設立すると、節税や資産保全など多くのメリットがあるからです。しかし、会社を設立する以上、ある程度の資産が必要です。それでは、一体どれくらいの資産があったら資産管理会社を設立したらよいのでしょうか 本記事では、資産管理会社の概要やメリット、注意点について解説します。
資産管理会社とは
資産管理会社とは、所有している土地や不動産、株式などの資産管理をするために設立された法人を指します。会社の形式は「合同会社」「株式会社」が多いため、社名だけ聞くと、一般的な会社とさほど変わりません。その上、法人設立する際の手続きや、法人として契約行為ができることは一般的な法人と同じです。
資産管理会社と一般的な法人の違いは、商品販売やサービスの提供など、営業活動をしないところです。営業活動をしない分、資産管理をしているため「プライベートカンパニー」と呼ばれるケースもあります。
資産管理会社を設立する目的
近年、なぜ資産管理会社を設立している法人が増えてきているのでしょうか。なぜなら、個人で資産を保有するよりも、会社を設立して資産を移転させた方が、さまざまなメリットを得られるためです。
主なメリットは節税対策ですが、それ以外にも多くのメリットがあるため、ぜひ資産管理会社の設立を検討してみてはいかがでしょうか。しかし、設立した方がいいのか、そのまま個人で保有していた方がいいのか、分からない方も多いでしょう。次に、資産管理会社を設立した方が良い人の特徴について紹介します。
資産管理会社を設立したほうがよい資産額の目安
一般的に、個人の所得が800万円から900万円を超える場合、資産管理会社を設立するメリットが出てくるといわれています。収入から必要経費を差し引いた後の「所得」がこの水準を超えると、個人での税率よりも法人税率の方が低くなるためです。
特に不動産事業を営んでいる方は、所得が800万円に達する前に資産管理会社の設立を検討するのがおすすめです。不動産の評価方法を活用すれば、相続対策や節税の効果をさらに高められます。
資産管理会社を設立した方が良い人
資産管理会社を設立した方が良い人は以下の通りです。
- 資産運用や副業をしているサラリーマン
- 相続税が発生する予定がある資産家
- オーナー社長
- 個人の投資家
上記に当てはまる人は、資産管理会社を設立した方が得られるメリットが大きいと言われています。では、資産管理会社を設立すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
次に、資産管理会社を設立するメリットについて解説します。
資産管理会社を設立するメリット
資産管理会社を設立した以上、多くのメリットを享受したいと思う方がほとんどなのではないでしょうか。ここからは、得られるメリットについて具体的に解説していきます。
これから資産管理会社を設立しようと考えている方はもちろん、最大限に活用していきたい方もぜひ参考にしてください。
節税効果が大きくなる
資産管理会社を設立すると、節税効果をより大きくできるメリットがあります。
まずは、所得税から見ていきましょう。個人所得の場合、課税される所得税は「累進課税制」です。「累進課税制」とは、課税金額が高くなるほど税金が高くなる制度です。そのため、所得金額によって5%〜45%まで段階的に引き上げられます。
一方、法人所得の場合、課税されるのは法人税です。法人税は800万円まで15%、800万円を超えた分は23.2%課税されるため、資産管理会社を設立して法人化すると、節税効果が大きくなるのです。さらに、配偶者や親など、血縁関係にある人物を従業員として雇うことも節税効果につながります。これを「所得分散効果」と言います。血縁関係に当たる人物を従業員にすると、役員報酬を支給しなくてはなりません。報酬を支給し、所得を分散することで、さらなる節税が見込めるのです。
さらに、損益通算の範囲拡大も期待できます。損益通算とは、利益と損失を相殺することです。資産管理会社においては、黒字所得から赤字所得を差し引くと、節税につながります。
個人事業だと、損益通算できる所得は限られており、できない所得もあるため注意が必要です。損益通算できる所得、損益通算できない所得は以下の通りです。
【損益通算できる所得】
・不動産所得(ただし土地に係る利子以外)
・事業所得
・譲渡所得(ただし不動産・株式等以外)
・山林所得
【損益通算できない所得】
・利子所得
・配当所得
・給与所得
・退職所得
・譲渡所得(不動産・株式等)
・一時所得
・雑所得
このように、個人事業では損益通算できない所得があります。そこで登場するのが資産管理会社の設立です。資産管理会社を設立し、法人化すれば、損益は一本化されます。すると、利益と損失は自動的に一本化されるため、個人事業のように損益通算できない所得は出てこないのです。資産管理会社を設立し、損益通算の範囲を拡大させると、節税につながるためおすすめです。
また、資産家が資産管理会社を設立すると、相続税の節税にも役立ちます。相続税は所得税と同様「累進課税制」で、なんと最大55%もの税金が課されるのです。約半分が税金となってしまうため、多額の資産を持っている資産家にとって、痛手と言えるでしょう。そのような時におすすめしたいのが資産管理会社の設立です。
資産管理会社を設立すれば、相続税の節税につながります。相続税は相続人になってから10カ月以内に現金で納付しなければなりません。場合によっては現金の用意が難しいこともあるでしょう。資産家の方はぜひ、この機会に資産管理会社の設立を検討してみてください。
経費として扱える範囲が広がる
資産管理会社を設立し、法人化すると、経費として扱える範囲が広がります。法人化すれば、事業活動に必要な費用だけではなく、一部の間接的な経費も認められます。例えば、会社が借りている社宅の家賃や、社用車として購入した法人名義の車の維持費などが経費として認められるのです。さらに、従業員として雇っている血縁関係にある人物への報酬や退職金、一部の生命保険料なども経費扱いが可能になるため、ぜひ活用してみましょう。
このように、資産管理会社を設立すると、今まで経費としてカウントできなかった出費も経費として扱えるため、法人税の負担を減らせるのです。
社会保険に加入できる
資産管理会社の役員は、役員報酬を受け取るため、給与所得者として扱えます。そして、給与所得者になると社会保険に加入できるのです。
法人化すると、厚生年金や各種健康保険に加入できるのは大きなメリットとなります。なぜなら、これらは個人事業主が加入する国民年金や国民健康保険より保障が手厚いためです。社会保険は親族を扶養に入れるための追加費用がかかりません。それに対し、国民健康保険や国民年金には扶養という概念がないため、大きなメリットと言えるでしょう。
資産管理会社を設立する上での注意点
資産会社の設立は、一見メリットが多いように感じますが、注意点をよく理解しておかないと、会社経営に暗雲が立ち込めるかもしれません。資産管理会社の設立を検討している方は、これから解説する注意点を覚えておきましょう。
設立や維持にコストがかかる
資産管理会社は営業活動がないものの、会社である以上、設立や維持にコストがかかります。まず直面するのは会社を設立するコストです。最初に、法定費用がかかります。費用負担項目は以下の通りです。
定款印紙代 | 4万円 |
定款認証手数料 | 5万円 |
登録免許税 | 15万円 |
印鑑作成・印鑑証明書取得費用・謄本取得費用 | 数千円 |
このように、資産管理会社を設立し、法人化するには最低でも25万円前後の費用がかかるのです。では、法定費用を抑えるには一体どうしたら良いのでしょうか。
1つは合同会社として、資産管理会社を設立する方法です。合同会社なら、設立時の認証手続きが不要であるため、定款認証手数料は必要ありません。もう1つは、資本金の金額を下げて登録免許税の負担を減らす方法です。資本金の金額を下げると、最低10万円前後の費用負担に抑えられます。
また、電子定款で公証役場の手続きをペーパーレス化し、定款印紙代を節約する方法もあります。しかし、電子定款の作成には特別な機械が用いられるため、個人で作成することは困難です。かといって、資産管理会社設立の手続きを司法書士などの専門家に依頼すると、6〜10万円程度の費用が別途追加でかかるため、結果として余計にコストがかかってしまうのです。
もちろん、資産管理会社を維持していくにも、毎月コストがかかります。会社として利益が出れば、その分税金が課税されます。それだけではなく、個人事業では自力でできていた会計処理も、法人化すると複雑になるため、相応の知識がない場合、税理士や会計士などの専門家に依頼しなくてはなりません。もし、税理士や会計士へ実際に依頼するとなれば、年間数十万円の依頼料がかかるでしょう。
それ以外に、社会保険料の負担ものしかかります。通常、社会保険料は雇用主と従業員で折半して負担しますが、法人化した場合、社会保険料はオーナーの全額負担です。役員として雇用している血縁関係にある人物が社会保険に加入していると、加入した人数分、オーナーの負担が大きくなることを覚えておきましょう。
会社所有の財産は自由に利用できない
資産管理会社を設立すると、資産は会社の所有物に変わります。そのため、たとえオーナーであっても会社所有の財産は自由に使えません。もし、資産を個人に戻したい場合、役員報酬として支払わなくてはならないのです。その上、役員報酬には金額に応じて所得税が課されます。
また、役員報酬の金額も自由に設定できません。役員報酬の金額は、定款または株主総会の決議によって決められます。ですから、急に資金繰りが厳しくなったからといって、簡単に増額できないのです。
このように会社の所有物となった資産は自由に利用できないため、配分は慎重に検討してください。
まとめ
これまでは、メリットを得るために、資産家が節税や相続、事業継承を目的として会社を設立するのがほとんどでした。近年では個人や会社員でもメリットが得られることから、投資家や副業を営むサラリーマンなどからも注目を集めています。
法人化すると節税につながるだけではなく、多くのメリットが得られるほか、資産の相続、継承にも大きく役立ちます。しかし、資産管理会社の設立や税金対策に関しては、専門的な知識が必要になる場面も多いため、税務や節税に精通した税理士に相談するのがおすすめです。専門家のアドバイスを聞いて自分にとって最適な方法を見つけましょう。
中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。
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