遺族が知っておきたい!死亡後に行うべき手続きの流れと注意点

[取材/文責]マネーイズム編集部

大切な人が亡くなった後、遺族には多くの手続きが求められます。突然の悲しみに暮れる中でも、法律や行政手続きには期限が設けられているため、迅速かつ的確に進めることが大切です。
 
本記事では、死亡後に行うべき基本的な手続きから相続に関する注意点まで、遺族が知っておくべきポイントを詳しく解説します。必要な手続きについての知識を事前に理解することで、スムーズな手続きと負担の軽減につながります。

死亡後に最初に行うべき手続き

大切な人が亡くなると、悲しみや混乱の中で多くの手続きに直面することになるでしょう。死亡後の初期段階では、法律や行政上の手続きが迅速に求められます。ここでは、具体的に行うべき最初の手続きを解説します。

医師による死亡診断書の取得

大切な家族が亡くなった際、まず行うべき手続きの一つが、医師から死亡診断書を受け取ることです。故人の死亡を医学的かつ法的に証明するものであり、以後の多くの手続きに必要となります。死亡診断書がなければ、火葬や埋葬はもちろん、各種行政手続きや金融機関の手続きも進められません。そのため、受け取った際には紛失を防ぐためにコピーを数枚用意しておくとよいでしょう。
 
死亡診断書とは、故人の死亡時の状況を記録し、医師が記入する書類です。病院で治療を受けていた場合、主治医が治療歴や死亡原因をもとに作成します。場合によっては、病院で亡くなった直後の状況や治療経過について簡易的な診察が行われることもあります。亡くなる前の診察から24時間以内に死亡した場合は、診断なしで死亡診断書が発行されるケースがほとんどです。
 
一方で、病院で診察を受けていなかった方が亡くなった場合に発行されるのは、死体検案書と呼ばれる書類です。書式や内容はほぼ同じですが、死因や状況の特定をより正確に行う必要があるケースで適用されます。

死亡届の提出と火葬許可証の取得

死亡診断書を受け取った後は、死亡届の提出と火葬許可証の取得を行います。2つの手続きは通常セットで行われ、提出期限は死亡日を含めて7日以内と定められています。死亡届を提出して埋火葬許可証を受け取らないと、法律的に故人の死亡が認められず、火葬や埋葬の準備を進められません。そのため、葬儀を計画する前に手続きを速やかに済ませる必要があります。
 
死亡届を提出する市区町村役場の窓口は、故人が亡くなった場所、故人の本籍地、あるいは届出人の居住地のいずれかです。届出人には親族の署名が必要ですが、実際の提出は葬儀社に代行を依頼することも可能です。
 
火葬許可証は、火葬を行うために必要な許可証であり、火葬後にその執行を証明する印が押されて返却されます。この書類は遺骨をお墓に納める際に再度必要となるため、大切に保管しておきましょう。
 
なお、厳密には埋火葬許可証と呼ばれていますが、現代の日本では大半の方が火葬を選択しているため、実際には火葬許可証が発行されるケースがほとんどです。

関連する公的手続き

故人が亡くなった後、さまざまな公的手続きが必要です。法律や行政のルールにもとづき、期限が定められているものが多く、速やかに対応することが求められます。健康保険証や年金手帳の返却など社会保険関連の手続きに加え、相続に関する準備や銀行口座の凍結解除などのステップも含まれます。それぞれの手続きは、遺族がスムーズに故人の財産や権利を整理し、適切に引き継ぐために欠かせません。ここでは、公的手続きについて詳しく解説します。

健康保険証や年金手帳の返却

故人が加入していた健康保険の種類に応じて、健康保険証の返却や資格喪失の手続きが必要です。例えば、会社員であれば健康保険組合や協会けんぽ、自営業の方であれば国民健康保険、75歳以上の方であれば後期高齢者医療保険に属しています。いずれの場合でも、故人が亡くなった翌日には資格を喪失するため、健康保険証の返却と資格喪失の届出を速やかに行いましょう。また、故人が扶養していた家族も新たな保険に加入する必要があるため、資格取得届の提出も忘れずに行ってください。
 
故人が年金を受給していた場合には、死亡の事実を年金事務所に届け出る必要があります。国民年金の手続きは14日以内、厚生年金の場合は10日以内に行わなければならず、期限を過ぎると不正受給とみなされるリスクがあります。役所への死亡届とは別に手続きが必要なため、忘れないよう注意しましょう。

口座凍結と相続関連の準備

銀行は故人の死亡を確認すると、預金口座を凍結します。死亡届の提出だけで自動的に行われるわけではなく、遺族が銀行に連絡を入れることで実施されます。銀行側が独自に訃報を確認して凍結手続きを始める場合もありますが、基本的には遺族からの申し出が必要です。
 
口座の凍結を解除するには、相続手続きが欠かせません。主に、口座を解約して預金を引き出す、あるいは名義を変更して相続する方法があります。ただし、銀行によっては解約の選択肢しか認められない場合もあるため、事前に確認が必要です。
 
さらに、遺産相続に関する一連の準備も進める必要があります。相続人や財産の調査、遺言書の確認、相続放棄の検討、遺産分割協議、不動産の名義変更や相続税の申告など、多岐にわたる手続きが求められます。それぞれ期限があるため、計画的に進めることが大切です。遺族が混乱を避け、スムーズに財産を受け継ぐためにも、専門家の力を借りながら正確に対応していきましょう。

注意すべき手続きと期限

故人が亡くなった後、遺族が行わなければならない手続きの中には、期限が厳しく設定されているものが多く存在します。期限内の手続きを怠ると、法的な問題や予期せぬ負担が発生する可能性があるため、事前に手続きの内容と期限を正確に把握しておくことが大切です。特に、税金や公共料金、相続関連の手続きには注意が必要です。ここでは、税金や公共料金、相続に関する手続きについて解説します。それぞれの手続きには、具体的な要件や流れがあるため、早めの行動を心がけましょう。

税金や公共料金の手続き

故人が生前に確定申告を行う必要があった場合、手続きを引き継ぐのは相続人の役割です。手続きを「準確定申告」といい、故人の死亡日までの収入や経費を申告しなければいけません。故人が個人事業主であった場合や、年収2,000万円を超える給与所得者であった場合に発生する手続きです。相続発生を知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があります。
 
また、年度途中で固定資産の所有者が亡くなられた場合、故人が所有していた不動産の納税義務は、そのまま相続人に引き継がれます。支払先は不動産が所在する自治体です。さらに、遺産が相続税の基礎控除額(3,000万円+法定相続人1人当たり600万円)を超える場合、相続税の申告と納付が必要です。
 
公共料金についても迅速な対応が求められます。故人名義で契約している電気、ガス、水道などを利用し続ける場合は名義変更が必要で、不要であれば解約手続きを行います。手続きは、契約している会社や自治体に連絡を入れて進めていきましょう。なお、故人名義のクレジットカードは相続対象にならず、解約が必要です。カード会社への連絡を忘れず、未払い金があれば相続人が対応する義務があります。

相続放棄や限定承認の検討

相続では、相続人が故人の財産や義務をどのように引き継ぐか選択する重要な場面があります。その中でも「相続放棄」と「限定承認」は慎重に検討する必要があります。
 
相続放棄は、故人の資産や負債を一切引き継がない手続きです。最初から相続人ではなかったとみなされるため、故人が残した借金などの負債を免れることが可能です。
 
相続放棄とは、家庭裁判所にて手続きし、相続予定だったプラスの財産とマイナスの財産すべてを放棄することをいいます。相続放棄の手続きをすることで「最初から相続人ではない」扱いとなるのが特徴です。また、相続放棄は他の相続人に通知することなく単独で進められるため、トラブルを避けたい場合にも有効です。しかし、手続きには期限があり、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
 
一方、限定承認は、故人の財産の範囲内で負債を清算し、残った財産を引き継ぐ方法です。財産と負債のバランスが分からない場合や、負債よりも財産が多い可能性がある場合に適しています。相続放棄や限定承認を選択する際には、それぞれのメリット・デメリットをよく理解し、慎重に判断することが求められます。手続きの進行に迷った場合や複雑な事情がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、最適な対応策を見つける助けになるでしょう。

まとめ

故人の死後に必要な手続きは多岐にわたり、期限が厳しく定められているものも少なくありません。死亡診断書の取得や死亡届の提出から始まり、相続放棄や限定承認といった相続手続きまで、遺族がしっかりと対応することで、トラブルを未然に防ぎ、生活の再建をスムーズに進められます。複雑な手続きで迷った際は専門家の助けを借りながら、正確で適切な対応を心がけましょう。

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