一般の会社と銀行を比べてみました!会計仕訳はどう違う?

[取材/文責]岡和恵

会社が外部と取引をするにあたり、必ず一行は銀行など金融機関との取引があるものです。そして、会計仕訳では頻繁に当座預金や普通預金がでてきます。銀行と取引をした場合、銀行側ではどのような仕訳になっているのでしょうか?
ここでは銀行の概要や会社との取引があった場合の銀行仕訳について解説します。

2021年3月9日追記

記事中、銀行の融資の部分の記述に誤解を招く表現がありましたので、追記させていただきました。

銀行の種類、銀行の仕事とは?

銀行は全部でいくつあるの?

会社は事業を行う上で、銀行の口座を通じてのさまざまな入出金を行います。令和2年7月27日現在、全国銀行協会に正会員として117行、準会員として72行、そして特例会員としてゆうちょ銀行が登録されています。また都市銀行は「三菱UFJ」・「三井住友」・「みずほ」のメガバンク3行と規模の小さい「りそな」の合計4行があります。金融機関の種類としては、大きな分類として3つに分かれます。

 

  • 中央銀行:日本銀行
  • 政府系金融機関:日本政策金融公庫、商工中金など
  • 民間金融機関:銀行(都市銀行、地方銀行、信託銀行など)
           協同組織型金融機関(信用金庫・信用組合、農協など)

 

上記のうち、一般に預金を預かり、貸付を行うのは「銀行」と「協同組織型金融機関」に分かれます。そもそも銀行とは、内閣総理大臣の免許を受けた株式会社であり、商号には「銀行」が含まれている必要があります。したがって、信用金庫などは金融機関ではありますが、「銀行」ではありません。しかし、信用金庫などの取り扱うサービスや商品は銀行と同様です。信用金庫などは営業する地域が限定され、対象顧客にも制約があるのが特徴です。

銀行の3大業務とは?会社とのかかわりは?

まず、社会の中で銀行のもつ社会的役割(機能)についてですが、銀行の三大機能とは次のとおりです。

 

  • 金融仲介機能:資金の貸し手と借り手の仲介をすること
  • 信用創造機能:貸し付けによって預金通貨を創造できるしくみをもつこと
  • 決済機能:財・サービスの取引にかかわる支払いや受け取りに利用されること

 

これらの機能は経済社会を円滑に機能させる銀行の重要な役割となっています。

 

次に、銀行の三大業務とは一般的に次のとおりです。

 

  • 預金:会社、個人などからお金を預かる業務
  • 融資(貸付):個人や会社に貸し付ける業務
  • 為替業務:銀行口座間の資金移動などの業務(振込、手形、口座振替、外国為替)

 

どれもお馴染みの業務です。
これら三大業務に加え、投資信託の販売や損害保険、生命保険の販売等は近年になって販売が解禁されました。現在、銀行は総合的な金融サービスを提供する企業といえます。これら銀行の業務はどれも会社経営には欠かせないサービスです。中小企業の経理担当を想定して銀行とのかかわりを見ていくと、どれも銀行業務に関係していることがわかります。

 

  •  決済業務
    買掛金の支払い、従業員の給与支払い、健康保険料の納付、法人税の納付などは企業の担当が現金を移動させるには盗難などのリスクがありますが、銀行に手数料を支払い、安全な決済サービスを受けることができます。
  • 資金調達
    企業は事業資金や賞与等の原資として銀行から借り入れをし、返済します。通常は借入には審査がありますが、「当座貸越」にすると限度額まで自由に資金の出し入れが可能となります。
  • 資金運用
    銀行は定期預金や運用商品についての有利な情報を提供しつつ、企業の資金運用のアドバイザーになったりします。

 

さらに銀行は業務をあらゆる方面に広げています。興味深いところでは、クラウドファンディングです。クラウドファンディングとは、インターネットを使って不特定多数からの支援を募る資金調達の手段です。銀行とクラウドファンディング会社の提携が最近よく行われています。銀行は企業の実績を評価して貸出をしますが、それだと今まで実績が出せていなかった企業は借入できません。ところが、銀行は「うちでは貸出はできないが、クラウドファンディングはどうですか?」と提携しているクラウドファンディング会社を紹介するのです。銀行からみると紹介ビジネスです。クラウドファンディングの結果次第で、次回からは銀行からの貸し出しをすることもあるようです。

一般の会社と銀行の違うところとは?

銀行の仕訳はどうなっている?-資産・負債-

銀行も複式簿記による会計をしていますので、もちろん会計仕訳があります。銀行の仕訳がどのようになっているのかを一般の会社と対比させて見ていきましょう。はじめに、会社の現金を銀行に預ける場合の仕訳を考えてみます。

会社の仕訳では預金が増え、現金がなくなります。一方、銀行は預金をしてもらうことで資金調達をしているのです。銀行の預金業務の仕訳では預金は貸方、すなわち負債側に計上され、会社と逆の仕訳になります。

 

現金を預ける

借 方 貸 方
会 社 預金 1,000,000 現金 1,000,000
銀 行 現金 1,000,000 預金 1,000,000

 

次に、会社の事業資金を銀行から借りる場合の仕訳を考えます。会社の仕訳では、通常は借方に預金が増え、貸方には借入金が増えます。一方、銀行の貸付業務の仕訳では、借方に貸出金が増え、貸方には預金が増えます。貸出金は銀行の貸借対照表においては、中心的な科目であり、法人への事業資金、個人への住宅ローンとさまざまです。しかしながら、一般の会社における流動資産か固定資産を定めるワン・イヤー・ルール(1年基準)は銀行の貸借対照表にはありません。なお、貸出金に係る貸倒引当金については、銀行には自己査定制度と呼ばれる個々の債権や有価証券を分類し、貸倒引当金を計算する制度があるなど厳格な計算のもと計上されています。

 

資金を借りる

借 方 貸 方
会 社 預金 3,000,000 借入金 3,000,000
銀 行 貸出金 3,000,000 預金 3,000,000

 

最後は、会社の預金を取り崩すときの仕訳については、預金をするときの仕訳と逆です。銀行の仕訳は、預金が借方(減少)、現金が貸方(減少)となり、会社と逆の仕訳になっています。

 

現金を引き出す

借 方 貸 方
会 社 現金 3,000,000 預金 3,000,000
銀 行 預金 3,000,000 現金 3,000,000

 

それでは以下は、銀行特有の仕訳についてもみていきましょう。銀行は、日本銀行に開設している当座預金があり、これを「日銀当座預金」といいます。銀行は国や他の金融機関との決済を行うとき、日銀当座預金を利用するため日銀当座預金の開設が必要となります。銀行は預金の一部を日銀に預け、また、預金者が引き出すと想定される額を日銀から引き出します。

 

日銀に預ける

借 方 貸 方
銀 行 預け金 1,000,000 現金 1,000,000

 

日銀から引き出す

借 方 貸 方
銀 行 現金 1,000,000 預け金 1,000,000

 

政府から国債が発行されると、銀行は資産を現金として持つよりも国債を持つと利子が発生するため国債を買います。逆に、日銀が銀行の持つ国債を買ったときは、日銀内にある銀行の当座預金に入金されます。国債は値下がりすると、銀行が損失を負担することになります。

 

国債を買う

借 方 貸 方
銀 行 有価証券 5000,000 預け金 5,000,000

 

国債を売る

借 方 貸 方
銀 行 預け金 4,000,000 有価証券 1,000,000
売却損 1,000,000

 

また、純資産の部において、銀行は銀行法施行令によって資本金は20億円以上と定めらており、すべての銀行は会社法でいう大会社にあたります。

銀行の仕訳はどうなっている?-収益・費用-

銀行は、預金という形でお金を集め(調達)預金者に利息を支払います。また、資金調達が必要な人や会社にお金を貸し付け(融資)して、貸出金の利息を得ています。銀行が預金者に支払う利息は、銀行側からは費用となります。そして、貸出者から得る利息は収益になります。

 

預金者に利息を支払う

借 方 貸 方
銀 行 預金利息 1,000 預金 1,000

 

【費 用】
貸出金の利息を得る

借 方 貸 方
銀 行 預金 500,000 貸出金利息 500,000

 

【収 益】
一般の会社と銀行の損益計算書と比べてみましょう。

 

一般の会社の損益計算書 銀行の損益計算書
経常損益の部 売上高
売上原価
売上総利益
販売費及び一般管理費


営業利益
営業外収益
受取利息

営業外費用
支払利息

経常利益
経常収益
資金運用収益
役務取引等収益
特定取引収益
その他業務収益

経常費用
資金調達費用
役務取引等費用
特定取引費用
営業費用
その他の経常費用

経常利益
特別損益の部 特別利益
特別損失
税引前当期純利益
法人税等
当期純利益
特別利益
特別損失
税引前当期純利益
法人税等
当期純利益

 

2つの損益計算書を比較すると、経常損益までは両者は大きく異なっています。

一般の会社は、まず売上総利益で自社の商品やサービスでの利益を計算し、次いで営業利益で本業としての利益を計算するのに対し、銀行の損益計算書では経常収益から経常費用を差し引き、経常利益を求めます。

 

銀行の経常収益には、資金の運用から得られる貸出金利息、有価証券の受取利息配当金などは資金運用収益に計上され、さらに振込の手数料などサービスによる収益は役務取引等収益に計上されます。役務取引等収益の中では外国為替手数料の占める割合が高くなっています。

 

反対に銀行の経常費用においては、資金調達費用として預金者への支払利息や借用金利息、社債利息などが計上され、役務取引等費用としては支払為替手数料などが計上されます。端的に言えば、銀行は預金者に払う利息(資金調達費用)よりも高い利息(資金運用収益)でお金を貸し出し、その利ザヤで利益を上げているのです。

 

また、経常費用の営業費用に銀行員の給料など人件費、物件費が計上され、ここにきてやっと一般の会社と共通する科目が表示されます。銀行の仕訳となると難しそうに思われがちですが、基本は複式簿記であることに変わりはありません。一般の会社と異なる部分は多いですが、最終的には決算で当期純利益を求め、配当をしています。

まとめ

最近の銀行は業務範囲が広がりなどにより、銀行業務のすべて(フルバンキング)を取り扱える支店を維持する形態からネットバンキングへシフトしつつあるようです。昔は会計を担当していると銀行に出向く機会が多かったのですが、最近はほとんどの銀行とのやり取りがWEB上で完結できるようになっています。
これからも銀行の形態は時代と共に変わっていくのかもしれません。

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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