個人事業主が車を購入したら税金が安くなる?車の購入と節税について
個人事業では、物を運んだり、仕事場に出かけたりと車を使うことも多くあります。車の購入には頭金を用意したり諸経費を支払ったりとまとまったお金が必要ですが、気になるのが、経費に計上することができるかどうかということです。今回は車の購入と節税について徹底解説します。
すべての車の購入代金が経費になるわけではない
車を購入したからといって、すべての購入代金が経費になるわけではありません。ここでは、どのような車が経費になるのか、また、どれぐらいの金額が経費になるのか見ていきましょう。
経費になる車は、仕事で使う車だけ
個人事業主の場合、支出は以下のように分類されます。
(1)仕事用の支出
仕事用とプライベート用の2台の車を所有している場合は仕事用の車を指します。
(2)プライベートの支出
プライベートのみに使い、仕事では全く使わない車を指します。
(3)仕事とプライベートどちらにも使う兼用の支出
仕事とプライベートの両方で使っている車を指します。
このうち、経費になるのは(1)の仕事用の車と(3)の仕事とプライベートどちらにも使う車です。仕事用の車は特に問題ないでしょう。問題なのは、仕事とプライベートどちらにも使う車です。詳細は後述しますが、仕事とプライベート兼用の車は仕事で使う部分しか経費になりません。ガソリン代や高速代など、仕事で使ったものとプライベートで使ったものを分けて管理することが必要です。
購入金額の全額を経費にすることはできない
原則、車は購入したからといって、購入年度に購入金額の全額を経費にすることができません。仕事をするために購入した車は購入した年だけではなく、その後も数年間使い続けるため、使う年数で少しずつ経費にしていこうという会計的な考え方があるからです。このように、使う年数で少しずつ経費にしていこうという考え方を「減価償却」といい、経費にする金額を「減価償却費」といいます。また、使う年数のことを「耐用年数」といいます。この耐用年数は車の構造や種類などにより決まっています。
減価償却の方法には、毎年定額を経費にする「定額法」と、初年度に大きな金額を経費にし、それ以降、すこしずつ経費になる金額が減っていく「定率法」の2つがあります。個人事業主の場合は原則、定額法を使います(税務署に届け出して認められれば定率法も可)。
例えば、120万円の車を購入、耐用年数6年、定額法の場合は毎年20万円が経費になります。
厳密な減価償却費の計算では、数百円の誤差がでることがあります。
新車より中古車を購入した方が、税金対策になる場合がある
車を購入するときに、新車と中古車どちらにするかを迷うこともあるでしょう。税金のことを考えると、実は中古車を購入したほうが、節税になることがあります。ここでは新車と中古車を購入したときの所得税について考えていきます。
中古車の方が早く償却が終わる
中古車はすでに数年使用されている車です。そのため、新車に比べて耐用年数が短くなります。耐用年数が短くなるということは、それだけ早く償却が終わるため、購入金額を早く経費化することができることから節税につながります。
ただし、中古車を何年で償却するのか、耐用年数が何年になるかは自分で計算する必要があります。計算式は以下のとおりです。
2年落ちの中古の普通車を購入した場合を見てみましょう。
新車の普通車の耐用年数は6年です。これを上の式にあてはめると、以下の数字になります。
新車の法定耐用年数6年-経過した年数2年+経過年数2年×20%
=4.4年→4年(1年未満切り捨て)
普通車の場合、新車では6年、2年落ちの中古では4年で償却します。例えば、手元にある120万円の資金で普通車の購入を考えたとき、新車の場合は耐用年数6年なので、減価償却費は20万円、中古車の場合は耐用年数4年なので、減価償却費は30万円と中古車の方が1年間の経費になる金額が大きくなり、結果的に税金が安くなります。
30万円未満の中古車なら一括で経費にできる
「車は購入したからといって、購入年度に購入金額の全額を経費にすることができない」という話をしましたが、実は購入年度に経費にできる特例があります。それが「少額減価償却資産の特例」です。これは、取得価額が30万円未満のものを購入した場合は、年300万円まで一括で経費にできるというものです。この特例は車にも適用されるため、30万円未満の車を購入した場合は、購入した年に全額を経費にすることができます。
ただし、以下の点に注意が必要です。
(1)青色申告が条件
この特例を受けるためには、青色申告をしている必要があります。白色申告は適用できません。
(2)平成30年3月31日までが期限
この特例には期限があります。今までも何度も期限が延長されてきたことから、今後も延長される可能性はありますが、現在は平成30年3月31日までが期限となっています。
(3)適用条文番号「措法28の2」の明記が必要
この特例を受けるためには、「青色申告決算書」の「減価償却費の計算」の欄に適用条文番号「措法28の2」を明記する必要があります。また、少額減価償却資産の取得価額の明細を別途保管する必要もあるため注意が必要です。
自動車にかかる各種費用は、経費にできる
今までは、車の購入金額(取得価額)について見てきました。ここからは、車にかかる各種費用について見ていきましょう。
自動車税や自賠責保険などは経費にできる
車を使用していると、自動車保険や自賠責保険、車検代などさまざまな費用がかかります。これらの費用は仕事で使用している車であれば原則として経費にすることが可能です。ただし、リサイクル料については、経費にできないため注意が必要です。
車にかかる各種費用の主なものは以下のとおりです。
(1)経費になるもの
・自動車取得税や自動車重量税などの自動車税…租税公課
・自賠責保険、任意保険などの自動車保険…(損害)保険料
・検査登録・車庫証明手続代行…車両費又は雑費
・車検代…車両費又は修繕費、雑費
・ガソリン代…車両費又は燃料費
・駐車場代(月極)…地代家賃
(2)経費にならないもの
リサイクル料…(リサイクル)預託金
仕事とプライベート兼用の車は家事按分が必要
仕事とプライベート兼用の車は、仕事で使った分だけが経費になります。高速代など明らかに仕事で使ったものを区別できる場合は良いですが、ガソリン代や駐車場代など、仕事用とプライベート用のどちらにも関係してくる場合は一定の割合だけを経費に計上します。
これを「家事按分」といいます。一定の割合については自分で決める必要がありますが、その割合を具体的に証明しなければいけません。よく使われるのが走行距離や日数での換算です。
例えば、1か月100㎞走行した内80㎞が仕事用だと80%が経費になります。また、1週間のうち5日間は仕事でのみ車を使い、2日間がプライベートでのみ車を使う場合は5/7が経費になります。家事按分の割合は、業種ごとに適用される基準が法律で明確には定められていません。実際はケースバイケースで算出することになり、自分で出すのが難しいこともあります。割合について不安な場合は、税理士などの専門家に相談してみるのもよいでしょう。
まとめ
今回は、個人事業主が車を購入した場合の節税について解説しました。原則、車は購入したからといって、購入年度に購入金額の全額を経費にすることができません。減価償却を行い、耐用年数にわたって少しずつ経費にします。しかし、新車と中古車の場合は中古車の方が経費になる金額が大きかったり、青色申告者の場合は30万円未満の車を購入すれば、購入年度に全額を経費にできたりと、税金を安くする方法はあります。車の購入を考えている方はぜひ、この記事を参考にしてください。
参考文献・URL
『平成29年度 税務ハンドブック』コントロール社
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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