持続化給付金の不正受給「自首」すれば、“お咎めなし”で済む?
新型コロナウイルス感染症の影響で売上が大きく減った中小の法人や個人事業主に支給される「持続化給付金」。その不正受給が問題になっています。給付金を不正に受け取ったり、それを指南したりして逮捕された人が全国で30人以上に上り、そうした「不正摘発」のニュースを目にした人たちから「自分もやってしまった」といった申し出も相次いでいるそう。その場合、当然、給付金を自主返納することになりますが、気になるのは、そうすれば許してもらえるのかということ。不正受給に対して国が打ち出した方針を基に解説します。
なぜ多い? 持続化給付金の詐取
持続化給付金は、新型コロナの感染拡大に伴う営業自粛などにより大きな影響を受けた事業者を対象にした支援で、支給額は中小法人が最高200万円、個人事業主は同じく100万円となっています。
ただし、「事業者」が対象ですから、どんなに収入が減っていても、サラリーマンや主婦、学生などは、この給付金をもらうことはできません。また、あくまでも「新型コロナの影響に伴う売上減少」をカバーするのが目的なので、それとは直接関係のない減収も対象にはならないのです。
ところが、給付金申請の受付が開始された今年5月以降、そうした要件を満たさないのに給付金を申請し、実際に支給を受ける事例が多発しました。今年に入って、新型コロナ関連の給付金、助成金などが数多く新設、拡充されましたが、それらの中でも突出して不正が目立っています。
そうなる主な理由は、申請に際して多くの書類の提出を求められる他の助成金などと違い、数種類の書類を用意するだけで、パソコン、スマホから簡単に申請できること、加えて受給要件となる売上の数字が操作しやすいこと。この2つと言っていいでしょう。
発覚すれば重いペナルティ
簡単とはいえ、これは立派な国相手の詐欺です。7月には、男子大学生が個人事業主の上限である100万円を詐取したとして、逮捕されました。さきほど説明したように、そもそも学生は給付の対象外なのですが、彼は個人事業主を装って、昨年の確定申告書、今年の売上台帳などを偽造するという手口で、受給資格を「得た」のでした。
持続化給付金詐欺には、このパターンが多いようですが、多くの場合、そのノウハウを伝授したうえで、多額の成功報酬を受け取る「指南役」が存在することも明らかになっています。しかし、やはり悪事はバレます。例えば給付金支給後に行われる申請内容を確認する作業では、不審な書類が多数見つかりました。この給付金を統括する経済産業省の梶山弘志大臣は、10月6日の閣議後の記者会見で、不正受給による逮捕者が30人を超えたことを公表しました。
逮捕・起訴されたあげく有罪となり、刑事罰(詐欺罪で有罪になれば、窃盗のように罰金では済まず懲役刑)を科されるのは最悪ですが、ペナルティはそれだけではありません。お金を手に入れるために手立てを尽くしたにもかかわらず、逆に大きな経済的損害を被ることになるのです。
今回の持続化給付金については、不正が発覚すると、振り込まれたお金を丸々返還するのはもちろんのこと、
- 受給の翌日から起算して年3%の「延滞金」が科される
- さらに、その合計額の20%相当の「加算金」が科される
ことになっています。
仮に100万円を不正受給して、1年後に返す場合、「100万円×1.03=103万円×1.20」の123万6,000円が請求されるわけです。
また、経産省は、悪質な場合には給付金を詐取した会社の社名や個人名を公表する、としています。仮に逮捕はされなくても、なんらかのかたちで詐欺の事実が公になれば、社会的な信用の失墜は免れません。場合によっては、事業の遂行が難しくなるかもしれません。
ちなみに、中には、詐欺の意思はなかったものの、要件などの不理解から自らも受給対象者に該当すると誤解して申請し、給付を受けるケースも考えられます。これも、容易に申請できることの副作用とも言えますが、間違いだったとはいえ、原則として延滞金などのペナルティは避けられないことを肝に銘じましょう。申請の際には、自分に受給資格があるのか、しっかり調べる必要があります。
給付金の申請は、2021年1月15日までとなっています。「手軽に」申し込めるからといって、制度の悪用を考えるのは、絶対にやめましょう。
経産省は、「自主返納すれば、加算金などは科さない」方針
では、「どうせ見つからないだろう」とほんの出来心で不正に受給したり、あるいは間違えて受給してしまったことに気づいたりして、「やはり返したい」と申し出た場合、どう扱われることになるのでしょうか?
実際、さきほどの大学生を皮切りに、持続化給付金詐欺の摘発が新聞やテレビで大きく報じられるようになると、経産省や国民生活センター、警察などに「不正受給をしてしまった」「SNSで勧誘された」「知人に不正受給をしようとしている人間がいる」といった相談や情報提供が、多数寄せられるようになったそうです。
梶山経産相は、10月6日の会見で、こうした自主返納への対応も明らかにしました。具体的には、「中小企業庁が調査を始める前に自主的に変換すれば、延滞金、加算金は求めない」という内容です。経済的なペナルティは科さないというかたちで、自主返納を促す方針を明確にしたわけです。
同時に梶山大臣は、「刑事罰については、別途、警察が判断することになる」としました。平たく言えば、「それは経産省の決めることではない」ということです。ただ、仮に詐欺の容疑で逮捕されても、100%起訴される(裁判になる)わけではありません。また、裁判で懲役刑が言い渡されても、執行猶予がつく可能性もあります。自ら不正を申し出たかどうかは、そうした判断に影響を与えるかもしれません。
身に覚えのある場合には、速やかに自主返納の手続きを取るべきでしょう。返還の受け付けは、給付金事務局のコールセンターまで。ただし、事務局のホームページでは、「中小企業庁による不正受給の調査や警察の捜査が開始されている場合等、返還を受け付けられない場合があります」とされています。
まとめ
申請後の調査で、持続化給付金の不正受給が次々に明るみに出ています。軽い気持ちで不正に手を染めると、事業も自分自身も大きな傷を負うことになりかねません。万が一、不正受給に該当する場合には、速やかに(役所の調査が開始される前に)返還すべきです。
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