結婚したら60万円もらえる!?政府が「結婚新生活支援事業」を拡充へ
内閣府が、2021年度から、新婚世帯を経済的に援助する「結婚新生活支援事業」を拡充する方針を明らかにしました。新聞などで「新婚生活費補助が60万円に倍増」といった見出しで報じられ、「行政からそんなお金がもらえるのか」と話題にもなりました。なにかと出費の多い結婚時に資金援助してもらえるのはありがたいこと。そんな制度は、「使わなければ損」とも言えるでしょう。ただし、残念ながら、これは「結婚したカップルが、全員もらえるお金」ではありません。どういう場合に支給対象になるのか、解説します。
「最大で」60万円が支給される
実は、この「支援事業」は、「拡充」と書いたように、すでに実施されている制度です。結婚に際しての経済的な負担を軽減することで婚姻件数を増やし、ひいては出生率を高めたい――つまり少子化対策の一環として、2016年に始まりました。実施主体は地方自治体(市区町村)で、事業を実施する自治体に対して、国が地域少子化対策重点推進交付金を交付します。
ただ、これも説明したように、支給には要件も設けられていて、現行制度の仕組みは、次のようになっています。
- ◆対象世帯
- 夫婦ともに婚姻日の年齢が34歳以下
- 世帯年収が約480万円未満
- ◆補助対象
- 婚姻に伴う住宅取得費用または住宅賃借費用(家賃や敷金、礼金)、引っ越し費用
- ◆補助率
- 1/2
- ◆補助上限額
- 1世帯当たり30万円(国は15万円補助)
「新生活支援」とは、具体的には、「新婚生活を営む住居の確保に必要な費用と、そこへの引っ越し費用の1/2を、30万円を上限額として補助します」ということ。例えば、関連するコストが50万円だったら1/2の25万円、100万円かかっても上限の30万円が支給額ということになるのです。
この制度について、新たに発足した菅内閣が、来年度から次のように拡充する(来年度予算の概算要求に盛り込む)ことを明らかにしました。
- ◆対象世帯
- 夫婦ともに婚姻日の年齢が39歳以下
- 世帯収入が約540万円以下
- ◆補助上限額
- 1世帯当たり60万円(国は40万円補助を検討)
なお、「補助対象」、「補助率」は現行のままです。ひとことで言えば、晩婚化の現実も踏まえて「年齢制限」を緩和し、収入条件も緩和して対象者の幅を広げるとともに、実際の支給額も引き上げを図ったわけです。
事業を実施する自治体は15%程度にとどまる
この政府方針を受けて、メディアが「来年度から補助額を倍増」「対象年齢や年収条件を緩和」などと報じたこともあり、「とにかく結婚すれば60万円もらえる」という誤解も広がりました。中には、補助金目当ての結婚詐欺を心配する声まで出ているそうです。
ただ、実際には、上記のような要件が定められているうえに、受給にはさらに「高い壁」があります。さきほど述べたように、制度の実施主体はあくまでも自治体なのですが、そもそもこの事業を実施している自治体は、少数にとどまっているのです。
その主な理由は、「自治体の負担」です。国からの交付金は、事業の満額をカバーするわけではありません。国の補助率は現行の1/2から、拡充後は2/3に高まる予定ですが、それでも自治体の負担額は、上限額(30万円→60万円)で、15万円から20万円に増加する計算です。
現在、この事業を行っているのは、全国で281市町村(今年7月10日時点)で、全体の15%程度にとどまっています。東京都、福井、山梨、広島県には、実施自治体はありません。
どの自治体で実施されているのかについては、以下「地域少子化対策重点推進交付金(結婚新生活支援事業) 交付決定状況」を参照してください。
サポートはありがたいけれど
この制度が作られた背景には、最初に述べたように、深刻な少子化の進行があります。2019年の出生数は、ついに90万人を割り込み、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)も1.36という数値にとどまりました。一方で、結婚後の夫婦は2人程度の子どもをもうけていることから、「とにかく結婚してもらう」ことが、事態を打開する有効策であることは、間違いありません。
国立社会保障・人口問題研究所の調査で、結婚に踏み切れない理由として「結婚資金」と回答したのが、未婚男性(18~34歳)の43.3%、未婚女性の41.9%(同)に上るなど、「未婚化」の主たる要因が経済的なものであることは、明らかです。内閣府が2010年に公表した調査結果でも、「結婚を希望する人に対して、行政に実施してほしい取組」について、「結婚や住宅に対する資金貸与や補助支援」を挙げた人が、42.3%に達しています(回答は20~30代の未婚及び結婚3年以内の男女)。
ですから、新婚家庭を経済面からサポートすることには大きな意味があります。しかし、肝心のサポートされる側が限定されているのでは、大きな効果は期待できないでしょう。ちなみに、2019年の東京都の合計特殊出生率は、1.15と全国最低を継続しました。人口も飛び抜けて多い首都がまったくカバーされていないという現実が、この制度の持つ問題を象徴しているのではないでしょうか。
とはいえ、制度自体を知らなかったために、対象になるのに支援を受けなかったというのでは、もったいないかぎり。結婚を考えるのならば、自分たちが補助の要件を満たすのかどうかを、しっかり調べてみる必要があるでしょう。
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まとめ
結婚の際に、住宅の家賃などを補助してくれる「結婚新生活支援事業」が、来年度から拡充されます。結婚を予定しているのなら、新居を構える自治体が事業を実施しているかなど、最新情報をチェックするようにしましょう。
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