令和2年度の税制改正による利子税や還付加算金の引き下げとは
税金として主要なものに、法人税や所得税、相続税などがあります。しかし、これら主要な税金以外の大事な税金のひとつが、利子税や還付加算金、延滞税などです。
実は、令和2年度の税制改正で、利子税や還付加算金が引き下げられます。ここでは、利子税や還付加算金に関する令和2年度の税制改正を解説します。
延納や還付があった場合の税金とは
利子税や還付加算金は、簡単に言うと延納や還付があった場合の税金のことです。
ここではまず、延納や還付があった場合の税金について見ていきましょう。
延納や還付があった場合の税金には、主に次の3つがあります。
①利子税
利子税とは、正当な手続きを経て、税金の本来の納付期限を超えて納付した場合にかかる税金です。
所得税や相続税、法人税などの支払いは、原則一度に納める必要があります。しかし、金銭で一括納付することが難しい事情がある場合などは、所定の手続きをすることで分割払いが認められています。これを「延納」といいます。相続税の納税猶予を行った場合などにも利子税が課されます。延納をしている人に利子税を課すことにより、期限内に納税している人とのバランスをとっています。
ただし、税務署などに正当な手続きを経て、納付期限を超えた納付をしているため、後述する延滞税よりも低い税率になっています。
②還付加算金
還付加算金とは、国から税金の還付を受ける場合に、税金と一緒に受け取る一種の利息にあたるものです。税金の納付が遅れると、延滞税などが課されることとの整合性をとるために、還付加算金の制度がとられています。
③延滞税
延滞税とは、定められた納付期限までに税金が納付されない場合に、課される利息に相当する税金のことです。原則、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に対して、延滞税が課されます。
利子税・還付加算金・延滞税の計算方法
延納や還付があった場合に課税される税金として、利子税や還付加算金、延滞税があります。その際、気になるのが、利子税や還付加算金、延滞税が、どれぐらいの金額になるのかということです。
そこで、ここでは利子税・還付加算金・延滞税それぞれの計算方法について見ていきましょう。
①利子税
利子税の計算は、次の算式で求めます。
利子税の期間計算は、所得税と法人税は日割計算、相続税と贈与税は月割計算です。
例えば、納税猶予の金額が1,000万円、税率が1%、期間が1年の場合の利子税は次のようになります。
利子税の計算はそこまで難しくありませんが、実は税率がいくらになるのかの計算が複雑です。
利子税の税率は、その年の「特例基準割合」をそのまま使います。利子税特例基準割合とは、財務大臣が告知する平均貸付割合に年1%を加算した金額のことをいいます。
例えば、利子税特例基準割合が8%の場合は、利子税の税率は8%です。しかし、利子税特例基準割合が7.3%未満の場合には、次のようになります。
・相続税、贈与税に対する利子税
延納利子税割合は、財産の価額の合計額のうちに占める不動産等の価額の割合によって異なります。利子税の税率(割合)や延納利子税割合については、国税庁のホームページでも公表されています。
・相続税、贈与税以外の税金に対する利子税
その年の利子税特例基準割合をそのまま使います。
②還付加算金
還付加算金の計算は、次の算式で求めます。
還付加算金の期間は日割計算になります。
例えば、還付金の金額が100万円、税率が7.3%、支払決定日までの期間が100日の場合の還付加算金は次のようになります。
還付加算金の税率は、原則7.3%です。しかし、その年の特例基準割合が7.3%未満の場合は、その年の特例基準割合をそのまま使います。
③延滞税
延滞税の計算は、次の算式で求めます。
延滞税の期間は日割計算になります。
延滞税の税率は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて異なります。
具体的には、法定納期限の翌日から2か月を経過する日までの税率と、2か月を経過する日の翌日から完納の日までの税率が異なります。
- 法定納期限の翌日から2か月を経過する日までの税率
年「7.3%」と「特例基準割合+年1%」のいずれか低い割合
令和2年では、年2.6%になります。 - 2か月を経過する日の翌日から完納の日までの税率
年「14.6%」と「特例基準割合+年7.3%」のいずれか低い割合
令和2年では、年8.9%になります。
法定納期限の翌日から2か月を超えると税率が大きく高くなるため、万が一税金の支払いが遅れる場合は、納付期限から2か月以内に納付したほうが良いでしょう。
利子税や還付加算金の引き下げとは
ここまでは、利子税・還付加算金・延滞税の内容と計算方法について見てきました。
令和2年度の税制改正では、利子税や還付加算金の引き下げが決定されています。利子税や還付加算金の引き下げの適用は、令和3年1月1日からになります。
利子税・還付加算金・延滞税の改正前と改正後の状況をまとめると、次の表のとおりになります。
利子税・還付加算金・延滞税の改正
改正前(令和2年以前)
税率(その年の特例基準割合が7.3%未満の場合) | 令和2年 | ||
---|---|---|---|
相続税、贈与税以外の税金に対する利子税 | 特例基準割合 (財務大臣が告知する平均貸付割合+年1%) |
1.6% | |
還付加算金 | 特例基準割合 (財務大臣が告知する平均貸付割合+年1%) |
1.6% | |
延滞税 | 2か月以内 | 特例基準割合+年1% | 2.6% |
2か月超 | 特例基準割合+年7.3% | 8.9% | |
納税猶予 | 特例基準割合(財務大臣が告知する平均貸付割合+年1%)+年1% | 1.6% |
改正後(令和3年以降)
税率(その年の特例基準割合が7.3%未満の場合) | 令和3年※ | ||
---|---|---|---|
相続税、贈与税以外の税金に対する利子税 | 特例基準割合 (財務大臣が告知する平均貸付割合+年0.5%) |
1.1% | |
還付加算金 | 特例基準割合 (財務大臣が告知する平均貸付割合+年0.5%) |
1.1% | |
延滞税 | 2か月以内 | 特例基準割合+年1% | 2.6% |
2か月超 | 特例基準割合+年7.3% | 8.9% | |
納税猶予 | 特例基準割合(財務大臣が告知する平均貸付割合+年0.5%)+年1% | 1.1% |
※令和3年の平均貸付割合が令和2年と同じだったと仮定して計算
令和2年度の税制改正では、相続税、贈与税以外の税金に対する利子税と還付加算金、納税猶予の税金に対する延滞税について、改正が入りました。変更されたのは以下の3点です。
- 相続税、贈与税以外の税金に対する利子税の計算で使う特例基準割合の数値
- 還付加算金の計算で使う特例基準割合の数値
- 納税猶予の税金に対する延滞税の計算で使う特例基準割合の数値
上記の数値を下げることにより、実際に税金額で使う税率を低くしています。現状、その年の特例基準割合が7.3%以上になることはありませんので、上記のものが実際に使う税率となります。
なお、通常の延滞税については、引き下げはありません。また、上記の表にはありませんが、相続税、贈与税に対する利子税も特例基準割合を使って計算するため、令和3年の税率は低くなります。
まとめ
利子税や還付加算金、延滞税の計算は複雑なため、自分で計算を行うことは、ほとんどありません。
しかし、相続税や贈与税などの場合には、もともとの税額が大きいため、利子税や還付加算金、延滞税の金額も大きくなる可能性があります。場合によっては、資金の調達を考える必要が出てくるため、おおまかな計算方法を知っておいて損はありません。
もともとの税額が大きい場合で、利子税や延滞税が課される場合は、できるだけ早く税理士などの専門家に相談するようにしましょう。
▼参照サイト
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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