あの支出も実は経費に?家事按分で賢く節税を!

[取材/文責]山田隆裕

個人事業主の方の中には、独立した職場が存在せず、自宅と仕事場が同じという方も多いのではないでしょうか。そのような場合、自宅兼仕事場の光熱費や家賃、さらには駐車場の費用までもが経費として計算できるかもしれません。今回は身近な支出を節税に繋げられる「家事按分」についてご説明していきます。

そもそも「家事按分」とは?

自宅で仕事をしている場合、家賃のように、生活費と事業費の区別がつかない費用が多々あると思います。これを家事関連費と言います。その家事関連費から、使用頻度などの割合を基に事業費の割合を計算し、その分の費用を必要経費として計上することを家事按分といいます。この家事按分をすることによって、必要経費として計上できる金額が増えるので、節税に繋がるというメリットがあります。

家事按分の対象になる支出一覧

基本的に、取引の記録などから、業務に直接必要であったと認められる設備やサービスにおける支出が家事按分の対象となります。
以下に挙げる具体例は、家事按分の対象となることが多いものです。

・家賃
・電気・水道・ガス代などの水道光熱費
・電話・FAX・インターネット代などの通信費
・ガソリン代、高速自動車道の通行料、駐車場代などの車に関連する費用

☆ヒント
家事按分の代表格とされることの多い家賃ですが、事業主が生計を同じくする親族に支払う場合の家賃は必要経費に計上できないので注意しましょう。ただしこの場合、親族の支払う固定資産税・減価償却費は元来親族の必要経費でしたが、事業主の必要経費となります。
このように税金の世界には例外がいくつもあります。その全てをご自身で網羅するのは非常に大変ですので、プロフェッショナルに相談してみてはいかがでしょうか。ビスカスでは、優秀な税理士を多数紹介しています。

家事按分の割合はどのように計算するのか?

家事按分の対象となる支出を整理しましたが、次はそれぞれについて事業費の割合の計算方法を確認していきましょう。

家賃

家賃の計算方法は2通り考えられます。

●面積によって計算する方法

全体の居住スペースの面積と、業務に使用するスペースの面積の割合を家賃に掛け合わせることで計算します。たとえば、自宅全体が100㎡で業務に20㎡利用している場合は、家事按分の割合は20%になります。このとき、家賃が200,000円であれば、20%を掛け合わせて、40,000円を必要経費として計上できることになります。この場合、部屋全体が作業スペースである、またはパーテーションで作業スペースが区切られているなど、明確な区別ができることが望ましいです。

●時間によって計算する方法

居住スペースと作業スペースを都合によって区別できない場合が考えられます。このときには、時間によって区別するようにすると良いでしょう。たとえば、月曜から金曜までは毎日9時間業務を行っていて、土曜と日曜は業務を行っていない場合は、1週間=168時間のうち45時間業務を行っているということになるので、約25%の割合での業務利用となります。つまり、家賃が200,000円であれば、50,000円を必要経費として計上することができます。
以上2つの方法がありますが、より的確に業務と普段の生活を区別しているという点で、前者の方が望ましいといえるでしょう。

●電気・ガス・水道代

ガス・水道代に関しては、料理教室を営む場合など特別なケースでは家事按分が可能です。IT関係の仕事の場合など、直接的にガス・水道が業務に関連しない仕事には当てはまりにくいので注意しましょう。
電気・ガス・水道代に共通して適用可能な計算方法は2つあります。

・時間によって計算する方法

ITの仕事などをしている場合、業務中はパソコンをメインで利用することになり、電気の使用量は業務時間に依存して変化するでしょう。そのため、電気代は時間によって計算するのが一般的です。たとえば、月曜から金曜までは毎日9時間業務を行っていて、土曜と日曜は業務を行っていない場合は、1週間に168時間あるうちの45時間業務を行っているということになるので、約25%の割合での業務利用となります。よって電気代が10,000円であれば、2,500円を必要経費として計上できます。ガス・水道代も同様に考えます。

・自宅を事務所にした前後の料金を比較する方法

これは、自宅を事務所にしたことによって増えた費用が、業務に必要な費用という考えのもとで計算されます。たとえば、自宅を事務所にする前に、電気・ガス・水道代は20,000円であり、事務所にした後に25,000円になったとします。このとき、自宅が事務所になることによって増えた5,000円を必要経費として計上できます。
また上記2つの他に、電気代のみにあてはまる特殊な計算方法があります。

・コンセントの数によって計算する方法

この方法は、業務の性質上四六時中電気を利用している場合や、業務時間中も家族が他の部屋で電気を利用していて時間では正確に利用割合を測れない場合に利用すると良いでしょう。たとえば、家の中に20個コンセントがあり、業務の作業スペースで頻繁に利用するコンセントが5つあるとします。この場合、業務で利用されているコンセントは全体の25%と求められます。従って、電気代が10,000円であれば、2,500円を必要経費として計上できます。

通信費

通信費は、上記の家賃や電気・ガス・水道代と同様に、業務の作業時間によって家事按分するのが一般的といえるでしょう。

車に関連する費用

車に関連する費用は、ガソリン代や高速自動車道の通行料、駐車場代、修理費、車検代、自動車税など多岐にわたります。これらは、一括して同じ割合によって家事按分すると良いでしょう。この際の計算方法は、2つあります。

・走行距離から計算する方法

こちらが一般的な方法となっています。この方法では、業務に要した走行距離を毎回記録することによって、業務とプライベートを合わせた走行距離との割合を出し計算します。たとえば、業務とプライベートを合わせた走行距離が10,000kmであり、業務に利用した走行距離が4,000kmであった場合、家事按分の割合は40%になります。つまり、車に関連する費用は、全ての項目によって40%分を必要経費として計上することができます。この方法は、業務に利用した走行距離を毎回記録しなくてはいけないので手間がかかるのがデメリットではありますが、按分の割合を正確に求めることができます。

・車の利用日数から計算する方法

おおまかな計算方法ですが、車の利用日数から計算することも可能です。たとえば、週5日使うという場合には、一週間に7日あるうちの5日で、約70%利用しているということになります。つまり、約70%を必要経費として算入できることになります。しかし、日数にしてしまうと、車を業務に利用していた量を大掴みにとらえるので、家事按分の割合の正確性が低くなるというデメリットがあります。

按分の割合が妥当性に乏しいとどうなる?

以上見て来たように、家事按分の割合の計算には複数の方法がありますが、できるだけ正確に業務における利用割合を示しているものを採用しましょう。また、その利用割合について根拠をもって説明できることがポイントとなります。按分の割合が高いからといってその割合を用いていると、却って不利益を被ることになりかねません。実際に、按分割合が妥当性に乏しいと税務調査によって認められてしまうと、脱税を働いたということになり、追加徴税されることになります。場合によっては数年さかのぼり、すべて追加徴税され、新たに支払うべき金額が膨れ上がることもあります。

まとめ

今回は、家事按分について詳しく解説?してきました。家事按分をすることによって、経費計上できる金額が多くなり、節税の効果があるのでぜひ利用しましょう。その際に、適切な計算によって按分割合を求めるということが最大のポイントといえます。

慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。

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