個人事業主の受取利息は、貸方「事業主借」ですご存知でしたか?
法人税法は、法人所得だけを対象とする税法です。したがって、法人は全ての取引を法人所得と関連づけて処理すれば良いということになります。また、所得税法では「利子所得とは、預貯金や公社債の利子……」と定義しているため、金融機関に振り込まれた預貯金の利息は利子所得であり、事業所得で処理する取引ではありません。詳しくみていきましょう。
所得税法での受取利息の処理の3つのポイント
受取利息の意義と具体例
受取利息とは広くいえば、預金利息、国債や社債の利息、取引先に 対する融資金の利息、従業員に貸与たお金の利息、個人的に貸したお金の利息などをいいます。
一口に受取利息といっても、所得税法では所得を10種類に分類しています。利子所得計算でも、個人事業主の所得計算でも、また、副業の雑所得計算でも受取利息は生じます。「受取利息」として処理できるわけではありません。利子所得としての受取利息、事業所得の総収入金額としての受取利息、雑所得の収入額としての受取利息に区分されます。どれに該当するかにより処理が異なります。
利子所得となる受取利息の取扱
所得税法では、「利子所得とは、預貯金や公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得」と定義しています。
また、先ほど述べたように、所得税法では、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類の所得に区分しています。ここから、個人事業主の所得は事業所得ということがわかります。
さて、所得税の計算は原則総合課税ですが、その原則は崩れつつあります。その最たるものが利子所得です。利子所得は他の所得と合算しない源泉分離課税制度が採られています。それは、利息の支払側が税金分をあらかじめ差し引いて支払い、受取る側は他の所得と合算しないで「利子所得」として処理することからもわかるでしょう。
各所得の計算は、収入金額から必要経費を控除しますが、利子所得に関しては収入額がそのまま所得金額になるため、確定申告の必要はありません。
利子所得になる受取利息と利子所得にならない受取利息
利子所得とされ源泉徴収される受取利息
所得税法は、金融機関等から振り込まれる利息は利子所得としているので、振込まれた金額はそのまま利子所得であって、事業所得の総収入金額には加算されません。
① 源泉徴収される税目と課税率
分離課税される利子所得の受取利息から控除される税金は次のとおりです。
国税の源泉所得税 15%
国税の復興特別所得税 0.315%
地方税の都道府県民税利子割 5%
合計20.315%が差引かれ、口座に79.685%が振込まれます。
注)0.315%は、復興特別所得税の税率が所得税の2.1%で計算されることから15%に2.1%を乗じて計算されたものです。
② 金融機関に振り込まれた利息は普通預金の増加となり、収入額はそのまま利子所得となります。
個人事業主の事業所得計算では、振込まれた預金の増加分だけ記帳します。そのため個人事業主の場合、受取利息は記帳されません。
利子所得にはならず源泉徴収されない受取利息
取引先に対する融資金、従業員に対する貸付金または個人的な友人に貸したお金の利息等は、所得税法が定義する利子所得に該当しません。事業を円滑に進めるための取引先に対する融資の利息、従業員に資金を貸与して受取った利息は、実質的には受取利息です。しかし、所得税法上は事業所得計算上の雑収入としての受取利息です。もちろん、「受取利息」で処理して構いません。
また、友人に貸したお金の利息も受取利息ですが、これも所得税法が定義する利子所得ではありませんし、個人事業とのかかわりもありませんから副業による収入と考えます。このような副業による所得は雑所得と呼びます。この雑所得は収入金額から必要経費を控除して算出するので、この受取利息は雑所得を算出する収入額に加算します。
個人事業主が利息を受取ったときの仕訳3パターン
「事業主借」勘定で処理しなければならない場合の仕訳
① 受取利息が利子所得となる場合
預金口座に利息100,000円から源泉所得税等20,315円が控除されて79,685円振込まれた場合を想定します。
・取引の全体額で仕訳する方法
(借方)普通預金 | 79,685 | (貸方)事業主借 | 100,000 |
事業主借 | 20,315 |
・取引を省略したかたちで仕訳する方法
(借方)普通預金 | 79,685 | (貸方)事業主借 | 79,685 |
※個人事業の場合には、確定資本金という意識に縛られることなく必要な資金は随時持込み、 持出しできます。利息が振込まれたら、それは事業主の個人的な入金によるものと考えます。決算時には、「事業主借」を「元入金」に振替えて元入金を増やします。
② 受取利息が雑所得の収入金額として計算される場合
事業資金から友人に貸した100,000円と利息5,000円を現金で回収し直ちに普通預金とした場合を想定します。
本業の事業所得の仕訳
貸付時 | (借方)事業主借 | 100,000 | (貸方)現金預金 | 100,000 |
回収時 | (借方)現金預金 | 105,000 | (貸方)事業主借 | 105,000 |
※副業の雑所得の仕訳で利息分5,000円を雑所得の収入金額とします。個人事業主の事業所得計算では、友人に貸した場合、貸与時は事業主の現金預金持出しとし、回収時は現金預金の回収として処理します。もちろん、個人事業主の帳簿に受取利息はありません。
「受取利息」勘定で処理できる場合の仕訳
個人事業主の事業所得計算過程で利息を受取った場合の具体例は以下となります。
取引先に融資した100,000円を利息5,000円と共に回収し、直ちに普通預金とした。
(借方)普通預金 | 105,000 | (貸方)貸付金 | 100,000 |
受取利息 | 5,000 |
※ 受取利息で仕訳するのですが、事業所得に関連して生じた雑収入としての受取利息であって所得税法がいう利子所得としての受取利息ではありません。
まとめ
法人税法は企業所得税法です。企業活動で生じたすべてのものを企業所得計算に絡めて処理しなければなりません。例えば、受取利息は、法人税法では法人の営業活動をその都度仕訳をするのでどういう経緯で生じたかを問わず、受取利息として認識し、受取利息として仕訳します。
所得税法上の個人事業主は事業所得に係る取引だけを仕訳します、金融機関から利息が振込まれた場合、受取利息の仕訳処理は利子所得計算で行います。ただ、事業所得計算過程で利息分の資金流入がありましたら、これは仕訳しなければなりません。事業主からの資金持込みとして「事業主借」で処理します。もちろん、個人事業主が事業活動で得た受取利息は受取利息ですし、勘定科目も受取利息となります。
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