法人・個人事業主のための福祉車両にまつわる税金について徹底解説
最近は福祉についての関心が高まりつつあります。それに対応するため、国や地方公共団体は福祉車両に対して優遇税制や助成金の支給などでバックアップしています。いったい、法人や個人事業主にどのような恩恵をもたらすのでしょうか。そこで、福祉車両にまつわる税金を中心に徹底解説します。
福祉車両は消費税が非課税である
福祉車両は消費税が非課税です。たとえば、税抜価格100万円の車両を購入するとします。一般自動車の場合、税抜価格に「100万円×消費税率」を上乗せした金額で購入しなければなりません。一方、福祉車両は消費税が非課税であるため、本体価格のままで購入できます。このように車両は税抜価格の金額が大きいため、消費税の課税・非課税によって負担額に差が生じます。
そもそも非課税の対象となる福祉車両とは何か?
福祉車両とは、身体障害者に配慮した車両のことを指します。大きくは2つに区分されます。
(1)介護車
同乗する身体障害者が車いすなどと一緒に搬送できるよう施した車両のことをいいます。
(2)自操車
身体障害者が自ら運転することができるように施した車両のことをいいます。運転者の身体の状況に応じて、運転用改造座席の補助手段が講じられているなどが一般自動車との違いです。
福祉車両の購入費用・修理費用は消費税が非課税
基本的に福祉車両の購入費用・修理費用は消費税が非課税です。購入・修理をしてもらう側だけではなく、販売・修理サービスを提供する側も同様に非課税です。
たとえば、キャンピングカーを福祉車両に改造して、本体価格300万円で販売するとします。販売する側は300万円に消費税を上乗せして請求しないのはもちろん、誤って経理処理で課税売上高に含めないように注意する必要があります。
これは自動車修理業に当てはまり、一般自動車と福祉車両の修理代金の経理処理で課税・非課税の区分が求められます。
一般自動車の改造費用の課税・非課税はケースバイケース
福祉車両を購入するのではなく、一般自動車の購入後に改造して身体障害者の仕様にするケースがあります。改造するタイミングによって、課税・非課税の金額が異なってきます。
(1)購入と同時に改造した場合
当初から福祉車両の使用目的で、一般自動車の購入と同時に改造を行った場合、福祉車両を購入したのと実質的に同じなので、購入費用・修理費用が非課税です。たとえば、一般自動車を税抜価格200万円で購入し、改造費用を税抜価格20万円負担したとします。改造したタイミングが同時なら、合計額220万円が非課税です。
(2)購入後に改造を依頼した場合
既に一般自動車に使用していた物の改造費用は非課税ですが、購入費用は消費税の課税対象となります。上記(1)の例で、福祉車両へ改造したタイミングが一般自動車の購入後の場合、非課税の対象は改造費用の20万円のみです。一般自動車の購入費用200万円は課税対象となります。
福祉車両のリースも非課税の対象
福祉車両のリースも消費税は非課税です。そのため、リース料に消費税は上乗せされません。たとえば、車のリース期間が5年間、リース料が月額5万円(税抜価格)とします。福祉車両の場合、リース総額は「5万円×12ヵ月×5年間=300万円」です。一方、一般自動車の場合、リース総額300万円に消費税が上乗せされます。要するに消費税が課税・非課税によって、リース総額に大きく影響します。
福祉車両は自動車取得税・自動車税・軽自動車税が優遇される
自動車取得税・自動車税・軽自動車税は各自治体が課税する税目です。そのため、自治体ごとで具体的な内容を確認する必要があります。そこで、自動車取得税・自動車税は東京都を、軽自動車税は横浜市を例に見ていきましょう。
自動車取得税・自動車税の優遇税制~東京都の場合~
福祉車両にまつわる自動車取得税・自動車税の優遇税制はいろいろありますが、具体的には「構造減免」に当てはまります。申請することで、全額免除されます。
(1)免除される福祉車両
車いす移動車、身体障害者輸送車、入浴車など8ナンバーの特種用途自動車のことを指します。
(2)使用目的
使用目的は問われません。つまり、事業活動に利用する場合でも免除の対象となります。
(3)免除の対象とならない福祉車両
・車いす移動車で脱着シートを取り付けたものなど車いすの移動専用として使用していない福祉車両
・自動車販売業者などが展示用・販売用に所有している福祉車両
(4)申請期限
①新規登録により取得(新車・中古車新規登録)した自動車 | |
---|---|
申請期限 | 登録(取得)の日から1ヵ月以内(※) |
減免対象税目 | 自動車税・自動車取得税 |
②既に所有している自動車 | |
申請期限 | 4月1日から5月31日まで(※) |
減免対象税目 | 自動車税 |
※申請期限の末日が土日、休日、年末年始の場合は翌開庁日までとなります。
(出典:東京都主税局)
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/info/car-genmen.html#
軽自動車税の優遇税制~横浜市の場合~
横浜市の場合、身体障害者に配慮した福祉車両について軽自動車税が4年間全額免除されます。それでは、詳しい内容を見ていきましょう。
(1)免除される福祉車両
・車いす移動車
・身体障害者輸送車
・入浴車
・入浴・寝具乾燥車
(出典:横浜市)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kohoku/siminzei/keiji-genmen.html
(2)使用目的
使用目的は問われません。つまり、事業活動に利用する場合でも免除の対象となります。
(3)申請期限
毎年5月1日から5月末日となります。5月末日が土曜日、日曜日の場合は翌月曜日です。たとえば、5月31日が日曜日の場合、申請期限は6月1日の月曜日です。
福祉車両に対する主な助成金と税金について解説
福祉車両には助成金が受けられる一方、税金の計算ミスを誘発しやすい項目です。それでは、主な助成金と税金について解説します。
重度障害者等通勤対策助成金を紹介
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の助成金制度です。目的は障害者雇用の促進であり、身体障害者が対象です。
(1)概要
一定の条件に当てはまる身体障害者の従業員が自ら運転して通勤するため、福祉車両を法人・個人事業主が購入した場合に対する助成金です。
(2)助成金の運転対象者
新規に雇用した身体障害者、健常者から身体障害者になった場合に限られます。つまり、もともと雇用されている身体障害者のために福祉車両を購入しても助成金は受けられません。
(3)公共交通機関での通勤が困難であること
バスや電車で通勤できる場合は助成金の対象外です。
(4)新車であること
中古車は助成金の対象外です。
(5)助成金の金額
購入費用の4分の3(150万円が限度、1,2級の両上肢障害は250万円が限度)
身体障害者用自動車改造費補助を紹介~東京都小平市の場合~
各自治体が個人の一般自動車を福祉車両に改造したことに対して支給する助成金です。そのため、法人名義の一般自動車は助成金の対象外です。つまり、個人事業主に限定されています。
(1)受給対象者
障害の程度が上肢・下肢・体幹機能障がい1・2級の個人
(2)条件
本人が車を所有し、自ら運転することが条件です。
(3)助成金の金額
改造費用(13万3,900円までが限度)
福祉車両の助成金を受給した場合の税金の計算方法
助成金を受給した場合は収入に計上します。また、実際に入金されていなくても、助成金の対象となる福祉車両の購入・改造をした場合は、受給される予定額を収入に計上します。受給される予定額が正確に決まっていない場合は、予測額を見積もり計上しなければなりません。
しかし、福祉車両の購入・改造費用が20万円以上で固定資産に当てはまる場合は、助成金を収入に計上しないことが認められる特例制度が設けられています。これを「国庫補助金等の圧縮記帳」といいます。計算方法が特殊なので、詳しい内容は専門家に確認することをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか。
福祉車両にまつわる税金・助成金は優遇されています。消費税の非課税と自動車税など税目や助成金の種類によって、福祉車両の範囲が若干異なります。「この福祉車両は本当に優遇税制の対象になるのか」など購入・改造する前に確認しましょう。
参考サイト
- http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6201.htm
- http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6214.htm
- http://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/10/02.htm
- http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/info/car-genmen.html
- http://www.city.yokohama.lg.jp/kohoku/siminzei/keiji-genmen.html
- http://www.jeed.or.jp/disability/subsidy/om5ru80000001p8p-att/om5ru80000001ql1.pdf
- http://www.city.kodaira.tokyo.jp/kurashi/055/055714.html
- http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_01_06.htm
- http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/10/10_02.htm
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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