帳簿をつければオトク!青色申告特別控除ってどんな制度?
青色申告制度とは
青色申告制度とは、納税者が複式簿記などの手法に基づいて帳簿を記帳し、所得や税金を計算して正しい申告をすることで、不動産所得、事業所得、または山林所得のある人が、所得金額の計算などにおいて有利な扱いが受けられる制度のことです。
不動産所得、事業所得、山林所得のある人は、申告の承認を受けようとする年度の3月15日までに納税地の所轄税務署長に青色申告承認申請書を提出することによって、青色申告制度を利用することができます。
会計業務や申告は、納税者自身が行っても税理士が代行してもよく、申告書における計算にはソフトなどを活用することもできますが、青色申告で利用される複式簿記は会計の知識がないと難しいというボトルネックがあります。
そのため、事業を始めて軌道に乗るまでは、税理士に記帳や決算を依頼する個人事業主の方も多いので、税理士をうまく活用することも視野に入れてみると良いでしょう。
青色申告と白色申告の相違点
青色申告の申請を行っていない事業主が使用しなければならない申告を、白色申告といいます。ここでは青色申告と白色申告それぞれのメリット・デメリットを項目別に紹介していきます。
①青色申告を利用すると最大で65万円の控除が受けられる
青色申告を利用すると、所得の計算方法が納税者にとって有利なものになります。白色申告では、青色申告で受けられるような特別控除などを適用することはできません。
青色申告では、経費に加えて最大で65万円の青色申告特別控除を引いた金額が課税所得となり、課税額を減らすことができます。青色申告特別控除額には10万円と65万円の2種類がありますが、その違いについては後程紹介します。
②青色申告では30万円未満の固定資産が全額経費になる
家具やソフトウェア、車など、1年以上利用する備品で10万円以上のものは、耐用年数に渡って費用に計上する減価償却を行う必要がありますが、青色申告を提出している事業者は少額減価償却の特例が適用され、30万円未満の固定資産を全額経費に計上することができます。白色申告の場合は一括で経費とすることのできる減価償却資産額は10万円未満です。青色申告の方が白色申告に比べて早く償却できるので、それだけ税金を安くすることができます。
しかし、適用を受ける資産の合計金額が年間300万円までと上限が決まっているため、注意が必要です。
③青色申告なら家族に給与を払いながら節税できる
家族でお店を経営しているという個人事業主の方も多いと思いますが、白色申告では、従業員である家族への給与は事業専従者控除が適用され、配偶者には最大で年間86万円、配偶者以外の家族には最大で年間50万円経費として認められます。
しかし青色申告では、前もって税務署に届けることで、家族に支払った給与の全額を経費に計上することができます。青色申告では、その事業で働く家族についても他の従業員と同様に、経費から家族へ給与を出すことができるので、節税対策として大変有効です。
④青色申告は赤字の繰り越しが3年間できる
赤字が発生した場合について、青色申告ではその年の赤字を確定申告で損失申告することにより、翌年から3年間繰り越しをすることができます。つまり、その年の事業の赤字を、翌年以降の3年間に発生した黒字と相殺できるのです。
前年度も青色申告を申請していて、前年度は黒字だったが今年度は赤字だったという場合には、前年度の課税所得金額から本年度の赤字額を引いた金額を還付してもらうことも可能です。この繰り越し制度は、事業を立ち上げたばかりの事業主や、さらに事業を拡大しようと投資している事業主にとってありがたい制度です。
一方で白色申告の場合は、事業年度をまたいで赤字を黒字で相殺させるようなことはできません。白色申告では、前年度が赤字であろうと、今年度黒字ならばその分課税されてしまいます。
《前年度の赤字額=300万円、今年度の黒字額=300万円 の場合》
(白色申告の場合)
(青色申告の場合)
⑤青色申告では自宅などの経費が一部事業の費用になる
自宅がオフィスを兼ねている事業主の場合、家賃や電気代などの一部を必要経費として家事按分をすることで、事業の経費に計上できます。しかし、全額を経費計上できるわけではなく、その費用全体のうち何%が売上に貢献したか、客観的に判断したときに明確な根拠を提示する必要があります。
例えば家賃の場合は、自宅として使用した分とオフィスとして使用した分を面積で按分するのが一般的です。他にも電気代などは作業時間や作業日数、コンセントの数などで按分することができます。節税対策において、家事按分をどうするかということは重要なポイントとなってくるため、個人事業主の方で節税対策に困っている場合は、税理士と相談してどうすれば最適化できるのかを一緒に考えると良いでしょう。
⑥青色申告は手間がかかる
青色申告は事前に税務署へ申請の手続きが必要ですが白色申告の場合は不要ですので、青色申告に比べて白色申告は手間が省けます。また提出書類に関しても、青色申告・白色申告ともに記帳の義務はありますが、青色申告で65万円の特別控除を受けるためには確定申告書1枚と決算書3枚の計4枚を提出しなければならないのに対し、白色申告では確定申告書1枚と決算書2枚の計3枚のみの提出になります。青色申告は白色申告と比較して手間がかかることは否めません。ちなみに、この白色申告における記帳方法を単式簿記といい、青色申告の記帳方法を複式簿記といいます。
しかし実際は、青色申告の場合でも控除額によって、単式簿記にするのか複式簿記にするのか記帳方法を選択することができるため、白色申告のメリットは税務署に申請しに行かなくてよいという点のみになります。
細かい点においては青色申告の方が手間はかかってしまうのは事実ですが、税理士と相談し、うまく特別控除を適用することで手間以上の恩恵を被ることができると言っても良いでしょう。中小企業にとって、会計業務上の節税対策というのは非常に大きなウェイトを占めることになりますから、節税対策に強い税理士と相談してみると良いでしょう。
青色申告特別控除とは
10万円と65万円
青色申告特別控除の種類には10万円の控除と65万円の控除の2種類があります。この2種類は記帳の仕方が異なります。
10万円の控除額の場合は、単式簿記という家計簿のような記帳方法が取られ、貸借対照表を含む3ページの青色申告決算書が必要ですが、65万円の控除額の場合には複数簿記といわれる貸借一致するように入力する記帳方法がとられ、貸借対照表を含む4ページの青色申告決算書が必要になります。
また、記帳するタイミングも異なり、10万円の場合は現金の入出金があった時点を基準として記帳をする一方で、65万円の場合は現金の入出金があったときではなく、お金の動きが確定した時点、つまり取引が行われた時点を基準に記帳します。
気を付けるポイント
青色申告を利用するにあたって、次のような注意点があります。
● 事前の届け出は延滞厳禁
● 経費に含まれる家族は専従者のみ
● 記帳はミス厳禁
● 収入から経費を引いた金額が65万円以下の場合、控除額は40万円
まず、青色申告をするためには事前に届け出が必要です。期限日は申告したい年度の3月15日です。仮に期限に間に合わなかった場合でも、申告書の提出ができなくなるというわけではありませんが、期限後申告として扱われ無申告加算税や延滞税が課されます。期限後申告の場合は、確定申告書を提出した日が納付期限になります。また、1月1日から1月15日までの間に開業した場合は3月15日までが提出期限ですが、1月16日以降に開業した場合には開業日から2か月以内が提出期限です。くれぐれも遅れないように注意してください。
次に、青色申告において、事業を手伝う家族の給料を全額経費に計上する場合、その事業に専従である場合に限ります。個人事業だけでは生計を立てることができず、その家族が事業とは別にパートやアルバイトを掛け持ちしているという場合は、その家族の給与を全額経費に含めることはできません。
また65万円が控除される複式簿記での青色申告は、簿記の知識がほとんどない人にとっては難しいものになっています。知識がない状態で挑んでみても逆にミスが増え、追徴課税が生じることもあるので注意してください。単式簿記はある程度簡単にできるので、白色申告から青色申告に変えたいけれど税理士は雇いたくないという人は単式簿記からはじめるのも良いかもしれません。しかし、この場合の控除額は10万円です。
最後に課税所得の計算方法について、65万円の青色申告特別控除が受けられる状態で、収入から経費を引いた金額が65万円未満である場合には、控除額が65万円ではなく40万円になってしまうので、注意が必要です。
まとめ
青色申告の仕組みを理解していただけたでしょうか?複式簿記が難しかったり、経費として計上できるものを判断したりするのは確かに面倒くさそうかもしれませんが、それ以上に青色申告にはメリットがたくさんあります。税理士と相談して、節税対策を練ってみてはどうでしょうか。
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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