マンション管理組合にも納税義務が!収益事業を営む際の注意点
最近はマンション管理組合が収益事業を営むケースが増えていますが、法人税の申告と納税をしなければならないことをご存じない方も少なくありません。この記事では、マンション管理組合の納税義務について解説しますので、「納税義務があるのでは?」と思われた方は一度税理士に相談してみましょう。
マンション管理組合に税金がかかるって本当?
収益事業を営んでいなければ非課税
マンション管理組合が法人税法の適用を受けるのかどうか、さまざまなウワサがあるようです。
実際には、法人化されていないマンション管理組合は「人格のない社団等」に該当するため、法人税法の適用を受けます。また、管理組合法人は法人税法上公益法人等とみなされる(区分所有法第47条13項)ため、同じく法人税法の適用を受けます。
とはいえ、法人化されているかどうかにかかわらず、マンション管理組合が通常のマンション管理業務のみを営んでいる場合には法人税は課税されません(法人税法第7条)。あくまで「収益事業」を営んでいる場合に、収益事業から生じた利益にのみ法人税が課税されます。
法人税法施行令には収益事業として34種類の事業が挙げられています。これらのうち、マンション管理組合は以下のような事業を営んでいることが多いようです。
マンション管理組合が法人税を課税される主な事業
マンション管理組合が営んでいる収益事業には、以下のようなものがあります。
<スペースの提供>
多くのマンションでは、屋上には携帯電話の基地局を、また敷地内には自販機や電柱、インターネット関係の機械や公衆電話を設置しています。住民も便利にそれらの施設を利用していますので、収益事業を営んでいるという認識ではないかもしれません。
しかし、設置に伴い地代や場所代、負担金などの名目で金品を受け取っている場合には不動産貸付業として法人税の課税対象となります。
<共用部分や備品の貸出>
最近はマンションの住民が利用するための会議室やプレイルーム、カラオケルームなどを住民以外の地域の方々に有料で開放しているマンション管理組合も多いようです。また、住民が利用するための卓球台その他の備品を有料で貸し出すケースも増えています。
これらの賃貸も、使っていない部屋や備品を貸し出して管理費の足しにしているだけで、収益事業を営んでいるという認識が薄いかもしれません。しかし、有料でこれらの賃貸をする場合には、不動産貸付業や物品貸付業として法人税の課税対象となります。
<駐車場の賃貸収入>
特に首都圏では車離れが進んでおり、マンションの駐車場が余っているケースが見受けられます。それに伴い、空いている駐車スペースを近隣の方に貸し出すケースが増えています。
駐車場を住民にのみ貸し出している場合には原則として課税対象とはなりませんし、駐車場を貸し出していると言っても余っているスペースだけでしょうから、収益事業を営んでいるという認識ではないでしょう。しかし、住民以外の方に駐車場を貸し付けている場合には駐車場業として法人税の課税対象となります。
なお、以下のような事業は収益事業とはなりません。
<自販機等の設備の電気代相当額>
携帯電話基地局や自販機、インターネット設備の設置を認めている場合には、電気代に相当する金額を事業者から受け取るケースがあります。この電気代相当額は、実際の電気代と概ね同額である場合には収益事業とはなりません。本来事業者が支払うべき電気代をマンション管理組合が立替払しているにすぎないからです。
ただし、電気代相当額の名目であっても、実際に発生した電気代を毎月大幅に超えるような場合には、実態が設置料ですから収益事業となってしまうことに注意しましょう。
<補助金・助成金の受取>
国や地方自治体がマンション管理組合に補助金や助成金を支出していることがあります。補助金や助成金を受け取った場合には、収益があったことにより税金の申告をしなければならないと思われる方もいるかもしれませんが、補助金や助成金の受取は収益事業には該当しません。
<イベント>
バザーやチャリティーなどのイベントからマンション管理組合が利益を得ることがありますが、原則として収益事業には該当しません。
一定期間、または定期的に継続して営んでいるものでなければ収益事業には該当しませんが、バザーやチャリティーなどのイベントを継続的に開催している管理組合は稀でしょう。ただし、大規模かつ定期的にそれらのイベントを開催している場合には収益事業に該当するケースもありますので、判断に悩まれる場合には税務署や税理士に相談することをお勧めします。
収益事業と指摘されないための注意点
区分所有者のための事業であることが大切
マンション管理組合が区分所有者のために行っている事業であれば、どれだけ収益が上がっていても収益事業ではありませんから法人税が課されません。
一般的に、以下の3要件を満たした場合には区分所有者のために行っている事業と認められます。
- 区分所有者同士の共済的な性質をもつこと
- 支払う料金はあくまでマンションやマンション管理組合のリソースを余分に使うための負担金であり、マンション管理組合に利益をもたらすものではないこと
- 受け取った収入を区分所有者に分配するのではなく、管理費や修繕積立金に充当すること
例えば、余分な駐車場があり、住民以外に貸し出している場合には、住民と住民以外の間で駐車料に差をつける必要があります。
住民と住民以外の間で料金に差がない場合には、区分所有者同士の共済的な性質をもつとは言えませんから、住民から受け取る駐車料も含めて、すべての駐車料が収益事業だと指摘される可能性があります。
住民同士の共済的な性質をもつことや住民の利用頻度が十分であることを証明するために、住民と住民以外の利用頻度を記録しておくことをお勧めします。
区分所有者の利用頻度を記録するのは消費税対策にも有効
マンション管理組合も一般の会社と同様に、収益事業の課税売上高が1,000万円を超えた場合にはその2期後に消費税の課税事業者となってしまい、消費税の申告と納税をしなければなりません。
住民から受け取る収益は収益事業からの収益ではありませんから、課税売上高には含まれません。区分所有者から受け取る収益とそれ以外の収益を区分して記録すると、住民同士の共済的な性質を持つことを証明できることに加えて消費税の課税売上高が少ないことを証明することに繋がり、消費税の節税にも繋がります。
マンション管理組合の税務の注意点
共通経費の按分に注意!
マンション管理組合の支出のうち、収益事業のためにも非収益事業のためにもなる経費のことを共通経費といいます。収益事業から生じた収益から差し引くことができるのは、共通経費の全額ではなく、非収益事業に要した比率の金額差し引いた金額のみです。
個人事業を営んでいる方にとっては、事業所得の所得税を申告する際に電気代や携帯電話代を事業用と個人用に区分する必要があるのと同様だとイメージするとわかりやすいでしょう。
なお、具体的にどのくらいの割合を収益事業の経費とできるのかとのご質問を受けるケースが多いのですが、画一的な基準がなく、一概には説明できません。判断に悩まれる際は税務署か税理士にご相談されると良いでしょう。
住民税に特例があるかも?
マンション管理組合法人は、収益事業を営んでいるかどうかにかかわらず、住民税のうち均等割という税金が課税されます。
しかし、地方自治体によっては申請することでマンション管理組合法人の均等割を減免するなどの優遇措置を設けていることがあります。マンション管理組合法人がある地方自治体に、一度そのような制度がないかどうか確認することをお勧めします。
マイナンバーの取得が必要
マンション管理組合法人が法人税の申告をするにあたり、理事・従業員やお願いしている税理士などの士業のマイナンバーを取得しなければならないケースがあります。
通常の会社の場合も同様にマイナンバーを取得しなければなりませんから、会社を経営していたり経理に携わっていたりする方、士業の方にとっては意外には感じないでしょう。しかし、普段あまり経理に携わっていない理事・従業員の方にマイナンバーの提出をお願いすると、マンション管理組合法人にマイナンバーを伝える必要があるのかと疑問に思われることもあるようです。
通常の会社と同じく、マンション管理組合法人も一定の方のマイナンバーを取得する必要があることについて事前に説明しておくとスムーズです。
まとめ
税務署がマンション管理組合に狙いを定めて税務調査を実施していることで、徐々に法人税を納税しなければならないことが知られてきています。しかし、まだまだマンション管理組合の経理、税務は会社の経理ほど真剣に取り組まれていないことも事実です。
この記事で、ご自身が関与しているマンション管理組合に納税義務があるのではないかと思われた方は、一度税理士に確認してみることをお勧めします。
早稲田大学商学部に在学しながら会計事務所に勤務、その後経営学修士を取得し、記帳代行業・海事代理士業を営む。
自分自身が個人事業主・同族企業の会社役員として法人税・所得税・消費税・相続税を「自分ごと」として日々取り扱っている経験をいかし、皆様にとって有意義な情報をご提供します。
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