法人が税金を安くするために知っておきたい節税対策とは

[取材/文責]長谷川よう

法人が、1年間の事業活動で利益を得た場合は、法人税などの税金を納める必要があります。どうせなら税金を安くして、設備投資など事業拡大への投資に回したいところです。きちんとした節税対策をすることで、納める税金を低くすることができます。ここでは、法人が知っておきたい節税対策の方法について解説します。

納める税金を低くするためには、節税対策が必要

節税と脱税の違いとは

納める税金を低くするためには対策が必要です。ここで重要なのは、その対策が「節税」であること。脱税であってはいけません。納める税金を低くする対策が脱税とならないためにも、まずは節税と脱税の違いについて知っておく必要があります。

①節税とは

節税とは、簡単にいうと、法人税などの税法にのっとって、税金を安くするための方法や手段を講じることです。具体的には、税法に定められた方法で経費を計上して所得を下げたり、税額控除などを使って納める税額を低くしたりすることをいいます。

 

実は、税法は結構な割合で改正が行われます。それは政府の政策や社会情勢などに合わせて、法律を改正していくためです。例えば、世の中の景気が悪い場合は、経済市場でお金の動きを活発化し、景気を良くようとします。そこで一定の物品を購入すると経費の計上を多くしたり、税金の控除や非課税枠を多くしたりします。このように、税法に記載されたものを上手に活用し、節税します。

②脱税

脱税とは、節税と違い、税法で定められた範囲を超えて、不正に納める税金を低くすることです。不正に納める税金を低くしているため、当然、脱税には罰則があります。一般的には、罰金としての性格を持つ延滞税や加算税などを支払います。

 

脱税には計算間違いなど故意でないものと、明らかに不正と知りながら行う故意のものがあります。故意のもので悪質なものは、逮捕される場合もあるので注意が必要です。

節税には、大きく分けて2つある

節税には、永久節税型の節税対策と繰延節税型の節税対策の2つがあります。

 

永久節税型の節税対策とは、その事業年度以降に影響することなく、税金の支払いを抑えることができる節税対策です。繰延節税型の節税対策とは、税金の支払いを将来に繰り延べることで、今の税金の支払いを抑えることができる、いわばその事業年度以降に影響をあたえる節税対策です。

 

節税の対策を立てる場合は、それが永久節税型なのか、繰延節税型なのかを理解したうえで行う必要があります。

永久節税型の節税対策

永久節税型の節税対策は普段から行う永久節税型の節税と、決算前に行う永久節税型の節税に大きく分かれます。それぞれについて見ていきます。

普段から行う永久節税型の節税

①役員給与と役員賞与

あまり知られていませんが、実は役員への給与や賞与は、原則、経費(損金)として計上できません。ただし、次の場合のみ経費にすることができます。

・役員給与

役員給与は、原則、毎月一定額(同じ金額)を支給する場合にのみ経費(損金)にすることができます。決算終了後に毎年行われる、株主総会や取締役会などでの役員給与の金額の変更(事業年度の開始の日から3ヵ月以内に行われるものに限る)以外は、通常、期中での変更は認められません。

 

期中に利益が出たから役員給与を増やしたり、逆に利益が少ないので役員給与を減らしたりすると経費として認められなくなります。役員給与を一定額にしておくことで節税につながります。

・役員賞与

役員賞与は、いつ、いくらの金額を支払うかを事前に税務署に届け出ることで経費にし、節税することができます。届出の提出期限は原則、次のうちいずれか早い日となります。

 

  • 株主総会等の決議があった日から1ヵ月を経過する日
  • その会計期間開始の日から4ヵ月を経過する日

 

役員賞与を支払う日や金額が事前に届け出たものと異なる場合は、一切経費にできないので注意が必要です。

②出張旅費規程

出張が多い法人の場合、出張手当を経費にできるのかという問題があります。実費であれば問題ありませんが、定額の出張手当等を支給している場合は、出張旅費規程を整えることで、定額の出張手当等を経費にすることができます。

 

ただし、不当に大きい金額や、一定の人にのみ高い金額を支払っている場合などは経費にできないので、注意が必要です。

決算前に行う永久節税型の節税

①少額減価償却資産の特例

少額減価償却資産の特例とは、30万円未満の資産を購入した場合に、年間300万円に達するまではその購入価格の全額を経費にできるというものです。

 

販売商品や材料などを除き、通常は、1つあたり10万円以上の資産を購入した場合は購入金額の全額を経費にすることはできません。毎年減価償却し、少しずつ経費にしていきます。少額減価償却資産の特例を使えば、30万円未満の資産であれば、購入価格の全額を経費にできます。決算時に利益が出そうな場合は、必要な資産を駆け込みで購入することで、節税となります。

 

ただし、この特例は中小企業(資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人など)しか利用できないので、注意が必要です。

②消耗品の購入

これも、考え方は少額減価償却資産の特例と同じです。1つあたり10万円未満のものは、購入価格の全額を経費にできるため、必要な資産があれば、決算時に購入することで、駆け込みの節税となります。

繰延節税型の節税対策

繰延節税型も普段から行う繰延節税型の節税と、決算前に行う繰延節税型の節税の2つに分かれます。それぞれについて見ていきます。

普段から行う繰延節税型の節税

①生命保険の活用

生命保険の中には、満期時や途中解約の際に一定の保険金を受け取ることができるものがあります。

 

定期保険や養老保険といったものがその代表的なものです。それぞれ毎月の掛け金の全額や半額など(受取人が誰かなどの契約状況により異なる)が支払い時に経費になるため、節税商品の代表的なものとなっています。

 

ただし、満期や解約などで保険金を受け取った場合は、収益として計上する必要があります。保険料の支払い時は経費として節税となりますが、受取時には収益となり税金が高くなるため、受取時に、退職金の支払いなど別の対策が必要になります。

②日本型オペレーティングリース取引(JOL)の活用

ここ最近になって、注目を集めているのが日本型オペレーティングリース取引(JOL)です。JOLとは、簡単にいうと、SPCというオペレーティングリースを行う特別目的会社に出資すること。出資金は全額経費になります。JOLの概要は次のとおりです。

 

  • ①まずSPC(特別目的会社)が、投資家から出資金を募ります。
  • ②その出資金などで、SPCは航空機や船舶、海上コンテナといった大型な資産を購入。
  • ③購入した大型資産をリースし収益を計上。
  • ④出資金額に応じて、投資家に収益を分配金として分配。

 

出資金の全額を経費にできるため、節税になります。ただし、後日出資金が戻ってくる場合に、その受け取った出資金は収益になります。出資金の支払い時は経費として節税となりますが、受取時には収益となり税金が高くなるため、受取時までに、繰越損失を作っておくなど、別の対策が必要になります。

決算前に行う繰延節税型の節税

①決算賞与

決算時に利益が出ている場合に、よく行われる節税対策が従業員への決算賞与です。下記の条件を満たす場合は、支払いがまだであっても、未払計上することでその年の経費にすることができます。

 

  • 決算期末までに同時期に支給を受ける全ての従業員全員に、支給額を通知しておくこと
  • 決算日の翌日から1ヵ月以内に、通知したすべての従業員に通知した金額を支給すること。

 

決算賞与は、あくまで経費の前倒しです。翌年度、実際に決算賞与を支払った時には経費にできません。この節税方法を使う場合は、翌年度の利益のことも考慮しておく必要があります。

②未払費用・短期前払費用

お金の支払いには、サービスの提供などを受けたが支払いが翌期になるものと、サービスの提供などは翌期だが、先にお金を支払っているものの2つのパターンがあります。サービスの提供などを受けたが支払いが翌期になるものが「未払費用」、サービスの提供などは翌期だが、先にお金を支払っているものが「(短期)前払費用」です。

 

本来、経費に計上する時期は、お金の支払い時ではなく、サービスの提供などを受けた時です。そのため、サービスの提供などを受けたが支払いが翌期になるもの(未払費用)で、まだ経費計上していないものがあれば、今年度に計上することで節税となります。

 

また、支払った日から1年以内に、サービスなどの提供を受ける場合で、毎年同じように継続して年払いしているものは、前払い時にその全額を経費にすることが可能です。

例えば、保険料や年払いの家賃などが該当します。これを短期前払費用の特例といいます。

ただし、毎年継続して支払い時に経費にする必要があります。

 

未払費用や短期前払費用は、今まで翌年度に経費にしていたものを、今年度に経費とするものです。そのため、翌年度の利益のことも考慮しておく必要があります。

まとめ

今回は、代表的な法人の節税方法についてご紹介しました。ここで紹介したもの以外にも多くの節税対策があります。ただし、節税対策の選択を間違えると、効果が出ないケースも多くあります。節税において、いちばん大事なのは、自社に合った節税対策をするということです。どのような節税対策が自社に合っているのか不明な場合は、あらかじめ税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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