法人がキャピタルゲインを生み出す資産を所有していた場合の税金とは

[取材/文責]長谷川よう

個人の資産投資などでよく耳にするキャピタルゲイン。日本でも最近、キャピタルゲインに対する税制が整備されてきました。実はこのキャピタルゲインは、個人だけに関係するものではなく、法人にとっても関係があります。そこで、法人がキャピタルゲインを生み出す資産を所有していた場合の税金について解説します。

キャピタルゲインとインカムゲイン

キャピタルゲインと対を成す言葉にインカムゲインがあります。キャピタルゲインを理解するためには、インカムゲインも一緒に見ておく必要があります。

ここでは、それぞれどのようなものかを見ていきましょう。

キャピタルゲインとはどんなもの?

キャピタルゲインとは、持っている資産の価値が上昇したことによる利益を指す言葉です。例えば、好景気による市場の活性化や近隣の再開発などで地価が上がり、所有している不動産の価値が上昇した場合や、企業の業績が順調で、所有している株式の価値が上昇した場合などの上昇部分がキャピタルゲインに相当します。

キャピタルゲインには、資産を売却して利益を実現した場合と、資産を保有し続けて利益を実現していない場合に分かれます。日本で税金が課されるのは、資産を売却して利益を実現した場合です。そもそも、キャピタルゲインには税金を課さないという国もあります。

インカムゲインとはどんなもの?

一方、インカムゲインとは、資産を保有することによって得ることのできる利益を指す言葉です。キャピタルゲインのように、資産の価値の上昇によって利益を得るのではなく、所有していることで利益を得ます。

例えば、株式を所有している場合に受け取る配当金や利息、アパートや賃貸マンションを所有している場合の家賃収入、FXのスワップポイントなどです。インカムゲインは利益が実現しているものなので、その利益に対して税金が課されます。

株式を売買した場合の税金と処理方法

キャピタルゲイン課税の代表的なものが株式と不動産です。ただし、どちらも個人と法人で税金の計算方法が異なります。そこで、それぞれについて税金の計算方法を見ていきましょう。まずは株式を売買した場合です。

個人が株式を売買した場合の税金と処理方法

個人の場合、収入の種類によって、給与所得や事業所得などさまざまな所得に分類し、所得金額や税金の金額を計算します。株式を売却して得た収入は、原則「譲渡所得」に該当します。株式の売却の譲渡所得は、他の所得と分けて一定の税率を乗ずる「分離課税」という方法で、納める税金を計算します。株式売却の税率は次のようになっています。

 

所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5% 合計20.315%

 

では、税金の計算をしてみましょう。

 

例)100万円で購入した株式を20万円の経費を支払い、200万円で売却した場合

①譲渡所得の金額
売却金額200万円-(購入金額100万円+経費20万円)=80万円
②納める税金の金額
80万円×所得税率15%=12万円
80万円×復興特別所得税率0.315%=2,520円→2,500円
80万円×住民税率5%=4万円
合計        162,500円

 

株式の売却をした場合は、所得税の確定申告が必要です。ただし、証券会社などの特定口座(源泉徴収あり)で株式の売買をしている場合は、売却の都度、税金が源泉徴収されているため、確定申告は不要です。

法人が株式を売買した場合の税金と処理方法

法人は、個人と異なり、原則、収入の種類によって税金の計算方法を変えるということはありません。事業であれ株式の売買であれ、すべての利益を合算し、そこに法人税率を乗じて納める税金の金額を計算します。法人税の税率は次のようになっています。

法人税の税率(普通法人)

  平30.4.1以後
開始事業年度
中小法人
年800万円以下の部分
19%(15%)※
中小法人
年800万円超の部分
23.2%
中小法人以外の普通法人 23.2%

※平成31年(2019年)3月31日までの間に開始する事業年度は15%

 

では、法人税の計算をしてみましょう。

 

例)100万円で購入した株式を20万円の経費を支払い、200万円で売却した場合 この他本業の利益が300万円あり

 

①所得の計算

本業の利益300万円+株式の利益80万円=380万円

 

②法人税の計算

380万円×15%=57万円

 

この他、法人市町村民税や法人道府県民税、法人事業税などがかかります。税率は地方自治体によって異なります。

 

法人の場合は、仕訳による帳簿付けも必要となります。

 

仕訳などについては、以下のページをご参照ください。

不動産を売買した場合の税金と処理方法

次に不動産を売買した場合の税金と処理方法について見ていきます。

個人が不動産を売買した場合の税金と処理方法

不動産を売却して得た収入は、株式の売却と同じように、原則「譲渡所得」に該当します。不動産の売却の譲渡所得も不動産と同様、他の所得と分けて一定の税率を乗ずる「分離課税」で、納める税金を計算します。ただし、不動産と株式では税率が異なります。

不動産の売却の場合は、その不動産を売却した年の1月1日において何年所有していたかによって、税率が次のように決まっています。

・短期譲渡所得(所有期間が5年以下)

所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9% 合計39.63%

・長期譲渡所得(所有期間が5年超)

所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5% 合計20.315%

 

では、税金の計算をしてみましょう。

 

例)3,000万円で購入した土地を600万円の経費を支払い、4,000万円で売却した場合(所有期間は5年超である)。

 

①譲渡所得の金額

売却金額4,000万円-(購入金額3,000万円+経費600万円)=400万円

②納める税金の金額

400万円×所得税率15%=60万円
400万円×復興特別所得税率0.315%=12,600円
400万円×住民税率5%=20万円
合計        812,600円

 

不動産の売却をした場合は、所得税の確定申告が必要です。

この他、所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合などの特別な場合は、税率が異なったり、特別控除があったりするので、注意しましょう。

法人が不動産を売買した場合の税金と処理方法

法人は、すべての利益を合算し、そこに法人税率を乗じて納める税金の金額を計算します。これは不動産の売却の利益であっても同様です。所有期間なども関係ありません。

では、法人税の計算をしてみましょう。

 

例)3,000万円で購入した土地を600万円の経費を支払い、4,000万円で売却した。この他本業の利益が300万円あり。

 

①所得の計算

本業の利益300万円+不動産の利益400万円=700万円

②法人税の計算

700万円×15%=105万円

 

この他、法人市町村民税や法人道府県民税、法人事業税などがかかります。税率は地方自治体によって異なります。

 

法人の場合は、仕訳による帳簿付けも必要となります。

 

仕訳などについては、以下のページをご参照ください。

 

不動産を売却した場合、個人と法人に共通する問題として、建物の減価償却があります。減価償却とは、建物を購入してから売却までの価値の減少部分のことをいいます。土地の場合は減価償却はありませんが、建物を売却した場合は、減価償却費を計算して建物の購入価格から差し引き、売却益の計算をしなければならないので注意しましょう。

 

例)2,000万円の建物を1,500万円で売却した。所有期間の減価償却費を計算すると800万円だった。

 

この場合の売却益の計算は、次のようになります。

 

売却金額1,500万円-(購入金額2,000万円-減価償却費800万円)=300万円

 

このように、購入価格より安く売却しても、利益が出るケースもあるので注意が必要です。

まとめ

キャピタルゲインとは、持っている資産の価値が上昇したことによる利益のことです。キャピタルゲインは、資産を売却して利益を実現した場合と、資産を保有し続けて利益を実現していない場合とに分かれますが、税金がかかるのは売却した場合のみです。キャピタルゲインを生み出す資産の代表的なものとして、株式と不動産が挙げられます。株式と不動産を売却し、利益が出た場合は、税金がかかるので注意しましょう。

会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

新着記事

人気記事ランキング

  • banner
  • banner