【太陽光発電の税金】法人が太陽光発電を設置した場合における事業税

[取材/文責]阿部正仁

太陽光発電を設置すると優遇税制に注目されがちですが、法人の場合は事業税の計算方法が独特です。しかも、製造業など電力供給に伴う収入を副収入としている場合、計算方法が複雑になります。そこで、太陽光発電を設置した場合における事業税について解説します。

太陽光発電を設置した場合の法人事業税のアウトライン

太陽光発電の設置法人は電気供給業

そもそも太陽光発電を設置し、実際に電気を供給している事実のある法人は電気供給業に該当します。電気事業法に基づく登録や許可などを要する事業であるか否かを問わないため、どの業種でも太陽光発電を設置すれば、電気供給業に該当する可能性があります。

 

電気供給業に該当する法人の法人事業税は他の業種と違って、税額計算の方法が独特です。

課税標準と税額の計算方法

電気供給業に該当する場合における法人事業税の課税標準と税額の計算方法は次の通りです。

(1)課税標準

通常の業種のように所得割(付加価値割、資本割を含む。以下 所得割等)で計算するのではなく、収入金額をベースとした収入割で計算します。算式は次の通りです。
 

課税標準となる収入金額 = ① 収入金額 - ② 控除すべき金額

(2)税率

税率も所得割等で税額計算する場合におけるパーセンテージが違います。中小企業など小規模法人に用いる標準税率は0.9%、大規模法人に用いる超過税率は0.965%です。

他の事業と兼業する場合の税額計算

たとえば、主要事業である部品メーカーが太陽光発電を設置し、電気を他の事業者に供給した場合、製造業と電気供給業を兼業することになります。兼業した場合の税額計算の原則と特例は次の通りです。

(1)原則

電気供給業と他の事業にかかる事業税を別々に計算します。部品メーカーを例にすると、製造業と電気供給業にかかる収入金額など課税標準のベースになる金額を区分経理し、所得割等と収入割を別々に計算します。

(2)特例

特例は主たる事業にかかる税額計算に準じます。部品メーカーを例にすると、製造業の計算方法に準じるため、電気供給業の収入金額も所得金額に含め、所得割等で計算します。特例の要件は電気供給業が独立した事業部門とは認められない程度の軽微なものになります。

電気供給業の事業税の具体的な計算方法は?

電気供給業の法人事業税を計算するにあたり、他の業種と比較して分かりにくいのは次の2点でしょう。

(1)課税標準の計算方法

収入金額から控除する「収入金額と控除すべき金額」の範囲は幅広く、控除もれによって余分な法人事業税を納付するリスクがあります。

(2)他の事業と兼業する場合

前述の通り、課税標準のベースとなる金額を経理区分しますが、経理区分のポイントを知らないと税額計算が面倒になってしまいます。

収入割の課税標準について解説

収入割の課税標準は「収入金額」と「控除すべき金額」をいかに集計するのかがカギを握ります。それでは、詳しく見ていきましょう。

収入金額とは

収入金額は「収入すべき金額の総額」に後述する細かい微調整を加えた金額になります。具体的には、次の通りです。

(1)収入すべき金額の総額

次のように定義されています。

 

各事業年度において収入することが確定した金額で、その事業年度の収入として経理されるべきその事業年度に対応する収入をいいます。(通(県)3章4の9の1)

 

具体的には、次の項目を収入すべき金額に計上します。

  • 各種電灯料収入
  • 各種電力料収入(新エネルギー等電気相当量を含む)
  • 遅収加算料金
  • せん用料金
  • 電球引換料
  • 配線貸付料
  • 諸機器貸付料
  • 受託運転収入
  • 諸工料
  • 供給雑益に係る収入
  • 設備貸付料収入
  • 事業税相当分の加算料金など原則として電気供給業の事業収入に係るすべての収入

(2)微調整する金額

  • 値引きまたは貸倒れがあった場合:収入金額から控除する
  • 建設仮勘定などに電力供給をする自家消費分:収入金額に含めない
  • 電力料金にかかる消費税:課税事業者(消費税の納税義務者)は収入金額から除き、免税事業者は収入金額に含める

控除すべき金額とは

控除すべき金額の項目はおもに次の通りです。

  • 国または地方団体から受けるべき補助金
  • 固定資産の売却収入
  • 保険金、有価証券の売却収入
  • 不用品の売却収入
  • 受取利息・受取配当金
  • 需要者などから収納する工事負担金など
  • 損害賠償金
  • 投資信託に係る収益分配金
  • 社宅貸付料
  • 電気供給業を行う他の法人から電気の供給を受けて電気を供給する場合に供給を受けた電気の料金として支払うべき金額に相当する収入金額

兼業する場合の税額計算について解説

兼業する場合の税額計算について詳しく見ていきましょう。

原則計算のアウトライン

前述の通り、税額計算の原則は他の事業は所得割等電気供給業は収入割で計算し、合算します。また所得割等は、外形標準課税の対象・対象外によって税額計算の方法が次の通りになります。

(1)外形標準課税の対象外法人

他の事業は所得割で計算します。所得割とは、電気供給業以外のもうけに相当する所得金額に税率を掛けて求めた税額のことを指します。

(2)外形標準課税の対象法人

他の事業は所得割、付加価値割、資本割の3つの要素で計算します。付加価値割は、収益配分額(報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料)と単年度損益(累積赤字に相当する繰越欠損金を控除する前の所得金額)の合計額に税率を掛けて求めた税額のことを指し、資本割は、資本金等の額(≒出資金額)に税率を掛けて求めた税額になります。

所得割の計算方法

そもそも所得金額は損益計算書の利益をベースにするため、「売上-経費」で計算します。売上は他の事業と電気供給業に経理区分しやすいですが、経費を経理区分することは簡単ではありません。役員報酬などの経費は他の事業と電気供給業の両方に共通するためです。そこで、各事業部門に共通の収入・経費については、売上金額など最も妥当な基準により按分計算をします。そのため、経理区分の難しい経費を他の事業、電気供給業、按分計算の対象となる本社経費(管理部門経費、役員報酬、利息など)に区分するのが所得割を計算するポイントになります。

 

また、経理区分は次の点に留意しましょう。

  • 事業部門の売上金額に相当する収入が損益計算書上で売上高に計上されていない場合には(例:営業外収益に計上されているなど)、その金額も売上金額に含めて按分計算をする
  • 事業部門の利益がマイナスとなる按分基準は、妥当ではない

特例計算が適用できる判断基準

前述の通り、特例の要件は電気供給業が独立した事業部門とは認められない程度の軽微なものになります。具体的に軽微とは、電気供給業が主たる事業に比して社会通念上独立した事業部門とは認められない程度の軽微なものであり、法人の実態に即して判断することになります。ただ、一般的に軽微とは、次のすべてを満たすことを意味します。

  • 電気供給業の売上金額が主たる事業の売上金額の1割程度以下
  • 事業の経営規模の比較において他の同種類の事業と権衡を失しないもの

まとめ

電気供給業の法人事業税は独特であり、他の事業と兼業する場合には税額計算の方法が複雑になります。しかし、電気供給業が独立した事業部門と認められない程度の軽微なものなら計算方法は通常と同じです。法人が太陽光発電を設置し電力を供給する場合、事前に専門家に相談し、法人事業税の計算方法について確認することをおすすめします。

TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。

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