【名古屋市の法人限定】寄付で税金を取り戻す!企業寄付促進特例税制

名古屋市で新たに寄付すると税金が戻ってくる企業寄付促進特例税制が設けられました。他の寄附金税制と比較しても画期的な制度であり、利用することを検討する価値はあります。しかし、厳しい条件をクリアしなければなりません。そこで、企業寄付促進特例税制を詳しく解説します。
企業寄付促進特例税制とは
企業寄付促進特例税制のアウトラインを見ていきましょう。
寄付による節税額
平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間に終了する年度における法人の寄付金の額に応じて、いずれか少ない金額が還付金になります。
- 寄付金の69%
- 法人市民税(※)の2.5%
※法人市民税は「法人税(所得金額の15%~22%)の9.7%~12.1%に相当する法人税割」と「企業規模に応じて課税される均等割」で構成されています。
たとえば、所得金額500万円、法人税75万円、法人市民税12万円の中小企業が100万円寄付した場合、還付金の額は次の通りです。
- 寄付金100万円×69%=69万円
- 法人市民税12万円×2.5%=3,000円
少ない金額の3,000円が還付されます。
なお便宜上、法人市民税は1,000円未満を切り捨てて計算しています。
還付を受けるためのタイムスケジュール
企業寄付特例促進税制の独自の還付を受けるためのタイムスケジュールについて説明します。
- ①法人住民税の確定申告と同時に「企業寄附促進特例税制に係る法人の市民税減免申請書」を名古屋市に提出する
- ②還付金に相当する金額を控除する前の住民税をいったん納付する
- ③上記①の申請書が承認される
- ④減免承認通知書と還付請求書が送付される
- ⑤還付の手続きをする
- ⑥指定口座へ還付金が振り込まれる
実は多くの法人が増税の対象
そもそも企業寄付特例促進税制はすべての法人に対する市民税の減税措置を取りやめた代わりに設けた制度であり、寄付しない多くの法人にとっては住民税の増税につながります。
たとえば、中小企業の法人税割の税率は「9.215%→9.7%」、均等割は「4万7,500円→5万円」に増税されます。
そのため、名古屋市から申請書の承認を受けて還付されないと増税分だけ損してしまいます。
還付を受ける条件
企業寄付特例促進税制はすべての条件を満たないと還付は受けられません。それでは、詳しく見ていきましょう。
5,000円以上寄付する
企業寄付特例促進税制は寄付する金額の最低金額が年度あたり5,000円以上です。たとえば、寄付した金額が6,000円の場合、内訳が前年度3,000円、今年度3,000円なら、年度当たり5,000円を超えていないため、還付の条件から外れます。
申請期限を厳守する
企業寄付特例促進税制の申請期限は市民税の確定申告の申告期限であり、遅れて申請書を提出しても還付は受けられません。たとえば、市民税の確定申告は電子申告で申告期限までに送信しても、紙媒体での申請書の提出を忘れると企業寄付特例促進税制の条件から外れてしまいます。
指定対象先に寄付する
企業寄付促進特例税制は名古屋市が指定している対象先に寄付することが還付を受ける条件になっています。そのため、名古屋市のホームページを参照するなど対象先を事前に確認することをおすすめします。
対象先は次の3つになります。
- ①名古屋市に対する寄附金
- ②愛知県共同募金会または日本赤十字社愛知県支部に対する寄附金(ただし、災害義援金および救援金を除く)
- ③名古屋市が条例で指定している団体に対する寄附金
なお、日本私立学校振興・共済事業団を通じて学校法人へ寄附を行う「受配者指定寄附金制度」を利用した場合は企業寄付促進特例税制の対象外となるため、注意しましょう。
現金主義である
現金主義とは、現金収支が伴う取引のことを指し、実際にお金を支出しないと企業寄付促進特例税制の適用を受けることができません。
たとえば、ある指定対象先に対し、今年度に1万円支払うことが確定したとします。しかし、実際に寄付したのが翌年度の場合、還付も翌年度になります。
企業寄付促進特例税制の特色~別の寄付金税制と比較検証する~
企業寄付促進特例税制の特色について、別の寄付金税制と比較検証して見ていきましょう。
赤字でも還付が受けられる
企業寄付促進特例税制の計算ベースに均等割も含まれるため、赤字でも還付を受けることができます。たとえば、ある零細企業が10万円を寄付し、不良在庫の処分により赤字を計上したとします。法人市民税は均等割のみの5万円となり、還付金は次の通りになります。
=1,250円→1,300円(百円未満が切り上げられるため)
個人の寄付金控除
そもそも個人の寄付金控除は所得控除であり、事業所得や給与所得などを合算した総所得金額等の40%が限度になります。そのため、赤字やもうけが少ない場合には、節税効果も少なくなります。たとえば、個人事業主の事業所得が10万円なら寄付金控除の限度額は「総所得金額等10万円×40%=4万円」です。
なお、寄付金控除の金額は次の通りです。
- 支出した特定寄附金の額の合計額
- 総所得金額等の40%相当額
法人の寄附金の損金不算入
法人の寄附金の損金(経費)に算入できる限度額は所得金額と企業規模を示す資本金(資本準備金などを含む)をベースに計算します。そのため、赤字の場合、寄附金のほとんどが損金に算入できない可能性が高くなります。
株式会社や合同会社など営利企業の場合、損金に算入できる限度額は次の通りです。
-
- ①資本金等の額 ×12/今年度の月数×0.25%
- ②所得金額×2.5%
- ③(①+②)÷4=損金算入限度額
たとえば、資本金1,000万円、所得金額1,500万円の1年決算法人の場合、損金に算入できる限度額は次の通りになります。
-
-
-
- ①資本金1,000万円×12/今年度の月数12×0.25%=2万5,000円
- ②所得金額1,500万円×2.5%=37万5,000円
- ③(①+②)÷4=損金算入限度額10万円
-
-
ふるさと納税
ふるさと納税は寄付した金額から2,000円を控除した残額が税額控除の対象になる制度です。しかし、税額控除の限度額の計算ベースは住民税所得割であり、節税効果は所得金額に比例します。たとえば、年収300万円の給与所得者が専業主婦、大学生、高校生を扶養している場合、所得金額が少なくなるため、税額控除額の限度額は0円と試算が出ています。
企業版ふるさと納税
企業版ふるさと納税は寄付した金額の6割が税額控除の対象となり、残り4割が企業負担になる制度です。しかし、税額控除の限度額は法人税、法人住民税のうち法人税割額、法人事業税の所得金額が計算ベースであるため、赤字なら節税効果は得られません。税額控除のイメージ図は次の通りです。

(出典:内閣府地方創生推進事務局)
まとめ
企業寄付促進特例税制は2年間に限定されています。赤字でも還付が受けられるため、業績が良い年度に在庫処分などで赤字計上しても、対象先への寄付による節税効果が得られます。この記事を機に社会貢献として寄付することを検討してはいかがでしょうか。
▼参考URL
- http://www.city.nagoya.jp/zaisei/page/0000104243.html
- http://www.city.nagoya.jp/zaisei/cmsfiles/contents/0000104/104243/ichiran.pdf
- https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_3.htm
- https://www.satofull.jp/static/calculation01.php
- https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/1610/documents/furusato23tebiki.pdf
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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