個人事業主が税金を納付する方法にはいくつある?どれが有利?

[取材/文責]岡和恵

個人事業主が税金を支払う場合、最近は口座振替、電子納税、クレジットカード納付、コンビニ納付等いくつもの選択肢があります。スマートフォンの普及により、金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまなサービスであるFintech(フィンテック)が格段に進んだ現在、どのような納税方法があるのか、そして、それぞれのメリット、デメリットは何かをまとめました。

個人事業主の支払うべき税金は4種類

個人事業主の支払うべき税金のおさらい

個人事業主として、1年間に支払うべき税金は何種類あるのでしょうか?多くの個人事業主が支払う税金としては、所得税、消費税、住民税、事業税の4種類が挙げられます。

 

これら税金には国税地方税があります。所得税や消費税は国税です。消費税には地方消費税もありますので、国税と地方税をまとめて納付することになります。そして、住民税とは都道府県民税市町村民税の総称で、事業税とともに地方税です。また、個人事業主の場合、事業税は個人事業税と呼ばれ、個人が営む事業に対して課される税金であり、事務所や事業所などのある都道府県が行政サービスを提供するための財源として利用されます。したがって、個人事業税は都道府県に納付します。

 

さて、これらの税金のうち所得税や消費税は、納税者が自ら税務署へ所得を申告し、税額を確定させ、自ら納付する申告納税制度を採用していますが、住民税や個人事業税は行政が税額を確定する賦課課税制度を採用しています。

したがって、実際に税金を支払う際に必要な納付書については、国税は税務署や金融機関に備え付けの用紙を使用し、地方税については税務署からの納付書が送付されます。

個人事業主の支払う税金の納付期限

では、それぞれの税金の納付期限はいつまででしょうか?所得税の納期限はその年の3月15日、消費税は4月1日と決まっています。しかし、納税方法によっては実際の引き落とし日は1ヵ月程度後になることもあります。

また、住民税の納付については、6、8、10、1月(年4回)または6月のみのどちらかを選択することができ、個人事業税は8月に都道府県税事務所から納税通知書が送られてくるので、8、11月(年2回)または8月の納付となります。この納期限については実務上、資金繰り等もあり重要なポイントなので計画的な納税を心掛ける必要があります。

納税方法は大きく分けて3パターン、現金納付ではコンビニがラク

現金による納税方法は銀行・税務署・コンビニで

さて、納税方法ですが、大きく分けて現金、口座振替、インターネットの3つがあります。

順にみていきましょう。

 

現金での納付は一番オーソドックスであり、金融機関または税務署の窓口やコンビニエンスストアにて直接支払う方法です。ただし、コンビニでは支払う税金が30万円以下の場合に限られますが、時間を選ばず、いつでも支払えるため便利です。

他に、金融機関の窓口やATMで現金で支払えて、即時に支払い情報が収納機関に通知されるサービスとして、ペイジーがあります。これはPay-easy(ペイジー)マークが付いている納付書であれば利用可能です。

現金納付のメリットとしては、即時性があり、収納印がもらえ、納税証明等の取得も早いことが挙げられますが、窓口の営業時間内に行かないといけないことや現金を用意する必要があるなど煩雑さがデメリットです。

コンビニにおけるバーコードについて

ここでコンビニでの納付がさらに便利になったことに触れておきます。国税のコンビニ納付は、今まではバーコード付きの納付書がなければ利用できませんでした。しかし、2019年からはバーコードに加え、QRコードで支払うことが可能になったのです。

納付用のQRコードは、国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」や「コンビニ納付用QRコード作成専用画面」にて作成することができ、コンビニの端末でバーコードを発行させて納付するしくみです。

ただし、残念なことに2019年6月現在セブンイレブンはこのQRコード決済はまだ検討中とのことです。

個人事業主は振替納税が一番ラク

最もシンプルで税務署も推奨する振替納税

2017年度の統計では、納税方法のうち現金に次いで2番目に利用が多いのがこの振替納税です。振替納税とは、納税者自身の名義の預貯金口座から口座引落しにより、国税を納付する手続です。

利用にあたっては、事前に税務署及び希望する口座の金融機関へ専用の口座振替依頼書を提出する必要があります。また、地方税についても同様に口座振替依頼書を金融機関に提出することで振替納税が可能です。

振替納税を勧める理由(口座振替のメリット・デメリット)

振替納税では、振替日は納期限の翌月となるのが最大のメリットです。2019年の所得税の場合ですと、納期限3月15日に対し振替日4月22日となっているので、現金納付より1ヵ月以上後の支払いとなります。

振替納税の他のメリットとしては、一旦振替依頼すると自動的に次回以降も同じ税金については振替納税が行われるので、支払い忘れがないことです。また、1枚の依頼書で所得税、消費税について振替依頼できることもメリットです。

デメリットとしては一部の銀行が未対応なことや、転居や口座変更は自分で変更届を出す必要があること、依頼書を提出してからの手続きに時間がかかることです。また、当然ですが、残高不足の場合は「未納」になるので残高の事前確認は必要です。

どんどん進化するインターネットによる納付

事前準備が必要な電子納税

納税方法の中で、一番その進化がめざましいのが電子納税、つまり、インターネット経由の納税であり、実に多様です。

 

まず、ダイレクト納付というものがあります。前提条件として、電子申告をする必要がありますが、電子申告書を提出した後、即時または指定日に、口座引落しにより国税を納付することができます。メリットは、インターネットバンキングの契約が不要なこと、事前に口座を確認しておけば、顧問税理士が納税者に代わって納付手続を行えることです。

また、銀行に行く代わりにインターネットバンキングから支払えることも利便性が高いといえます。

このダイレクト納付やインターネットバンキングからの支払いはどちらも事前にe-Taxの開始届出書を税務署に提出しておく必要があるので要注意です。

 

次に、2017年から始まったクレジットカードによる支払です。これは、国が指定した納付受託者を介して納付するもので、インターネット上での事前手続きが必要となります。クレジットカードも非常に便利ですが、支払額によって決済手数料が必要となることがデメリットと言えます。還元率の高いクレジットカードで対応するほうが良さそうです。

スマートフォンでカンタンに支払う地方税

スマートフォンの普及により、電子納税も大きく様子が変わってきました。先にあげたペイジーは、現金だけでなく、インターネットバンキングを利用することもできます。たとえば都税は、ペイジーマークのある都税の納付書があれば、インターネットでもモバイルバンキングでもATMでも支払えるというわけです。

都税ではさらに、納付書に印刷されたバーコードをスマートフォンのカメラで読み取り、自分の口座のモバイルバンキングに接続して税金を納付できる「モバイルレジ」というサービスがあります。また、Apple PayやLINE Payなどの電子マネーにより住民税の支払いができるところも増えています。

まとめ

納税における現金、口座振替、インターネットの3つの支払方法は時代と共に変化し、今後もさらに多様化すると思われます。これはマイナンバー制度の拡充とともに、インターネットを介したフィンテックの技術が発達した結果なのでしょう。

従来の銀行窓口での納税方法から、電子マネーに代表されるように「安く、早く、便利」な納税方法に変えていこうとする動きは、今後もますますさかんになると思われます。

これらの技術にさらに期待したいのは、「税金の還付」についても同様に早くできないかということでしょう。従来の還付金は金融機関の指定口座に入金されますが、忘れたころに入ってきます。今後は電子マネーやスマートフォンに新たな工夫がされて、還付金が早く戻ってきたらいいですね。

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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