まかないで節税できる?飲食業従業員の食事代の扱いについて
飲食業を営んでいる方なら、アルバイトや従業員に「まかない」を提供することもあるかもしれません。しかし、そのまかないですが、その材料費が会計上どのように処理されるべきかご存知でしょうか?今回は飲食店経営者ならば必ずチェックしておきたい、「まかない」に関する節税対策について解説していきます。
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「まかない=給与の現物給与」の罠
飲食店の求人を見ると「まかない付き」という文言をよく目にします。本来なら処分されるはずの食材を有効利用できるのでお店側にとってもメリットですし、従業員にとっても1食分浮かすことができるため、お互いにとってありがたい「まかない」ですが、実は税務調査では「現物給与」に該当すると指摘されてしまう可能性があります。
一般的に、食事代は従業員が自分で負担すべきものとされています。そのため、従業員が無料や著しく低い価格で食事の支給(まかない)を受けた場合、その人は「支払うべき食事代を払わなくて済んだ」というように解釈されます。つまり、まかないを支給された従業員は経済的な利益を得ているため、店側から食事という形で給与を受け取っていると見なされます。このことを「給与の現物支給」といいます。
給与の現物給与が起こると、その分源泉徴収をしなければならず、本来よりも多く税金を納める必要がでてきてしまいます。もし、税務調査でまかないについて指摘されれば、その分の所得税と不納付加算税を支払う必要が生じてしまいます。このような事態に備えるべく、まかないについても普段から気をつけなければなりません。そこで、まかないを現物支給ではなく、課税対象に当たらない「福利厚生費」として取り扱う術を次の項で紹介します。
きちんと税制に関するルールを把握し、税務調査でなるべく指摘を受けないような体制を作ることが安定経営する上で必須でしょう。そのような体制を作るためにも、飲食業の税制に詳しい税理士とよく相談して健全な経営体制を整える必要があります。
福利厚生費として取り扱うには?
まかないを給与ではなく福利厚生費として扱うことで、課税から免れることが可能になります。そのためには以下の2つの要件を満たさなければなりません。
①役員や使用人が食事の価格の半分以上を負担していること
②(食事の価格)-(役員や使用人が負担している金額)が1ヶ月あたり3,500円以下であること
しかし、これらの要件をどちらか一方でも満たしていなければ、(食事の価格)-(役員や使用人の負担している金額)が、給与として課税課税対象となってしまいます。
ちなみに、ここでいう食事の価格とは、
(ア)仕出し弁当などを取り寄せて支給している場合には、業者に支払う金額
(イ)社員食堂などで会社が作った食事を支給している場合には、食事の材料費や調味料など食事をつくるために直接かかった合計費用
を指します。
まかないが現物給与にあたることを知らずに、支払うべき所得税を滞納していると、万が一税務調査が入った際に追徴課税されてしまいます。税務調査が入ると大体過去3年さかのぼって修正申告を求められるので、ミスがないようにしておくことが重要です。
残業時間の食事代の扱いは?
宿日直や残業など、通常の勤務時間外に仕事に従事した者に対して支給する食事に関しては、全額を法人で負担しても給与扱いにはならず、課税対象にもなりません。従業員の残業時間に関する食事代の扱いについて以下の点に注意しておくと良いでしょう。
●残業時間の食事であっても、食事代を金銭で従業員に渡した場合には課税対象になってしまうので注意が必要です。
●出前をしてもらった際の領収書などは、現物支給であることを証明する貴重な証拠になるので忘れずに保管しておきましょう。
●また深夜の勤務であっても、食事をとった時刻が勤務時間内に入っていれば、残業時間の食事とは見なされず課税対象となります。
*ただし、深夜勤務者に現金で食事代を補助する場合、「1食あたり300円(税抜)以下の金額を給与で支給する」場合にのみ、課税対象外になります。
●社内等での会議に際して出されるお弁当の費用は会議費として扱われるため、給与課税はされません。
まとめ
今回紹介したまかないに関する給与事項は、多くの飲食店で見落としがちなポイントかもしれません。しかし、税務調査が入った際、「知らなかった」では済まされず、知らず知らずのうちに脱税していたことになってしまいかねないので注意が必要です。
慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。
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