グリーン投資税制減税って何?制度概要と適用事例を紹介!

[取材/文責]山田隆裕

環境問題への対策として、省エネの推進や再生可能エネルギーを導入することが考えられますが、これらに向けた投資が減税に繋がる「グリーン投資減税」を知っていますか?
グリーン投資減税ともいわれるこの税制の仕組みを解説していきます。

グリーン投資減税とは?

2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故を受けて以来、日本は環境対策に力を注いでいて、その一環で省エネや再生可能エネルギーの使用を推進することを目的に作られました。

制度解説

青色申告書を提出する個人及び法人が、対象となるエネルギー環境負荷低減推進設備を取得、製作または建設し、かつ1年以内に事業の用に供した場合に、取得価額の30%特別償却又は7%税額控除(中小企業者等のみ)のいずれかを選択し税制優遇が受けられる制度です。

特別償却や税額控除に関する具体的な限度額は以下の2種類からなっており、どちらか一方を選択することができます。

①特別償却について

平成28年4月1日から平成30年3月31日までの期間内に取得等し、その日から1年以内に事業の用に供した場合、事業の用に供した日を含む事業年度において30%の特別償却ができます。(太陽光発電設備及び風力発電設備の即時償却はそれぞれ平成27年3月31日、平成28年3月31日で終了しました。)

②税額控除について

中小企業者等は、特別償却及び即時償却に加え、7%の税額控除との選択が可能です。ただし、供用年度の所得に対する法人税の額(個人の場合は供用年の事業所得に係る所得税の額)の20%相当額が税額控除の限度となります。

また、対象となるエネルギー環境負荷低減推進設備の中でも、プラグインハイブリッド自動車、エネルギー回生型ハイブリッド車、電気自動車等の車輛及び運搬具に関しては税額控除が認められず特別償却のみとなってしまいます。

メリットなど

上に紹介した特別償却と税額控除どちらを利用しても、節税効果を得ることができます。特に特別償却については、繰越欠損金の繰越ができ、設備導入によって赤字が生じた場合、将来の黒字と相殺することが可能になります。この特別償却は、税金の総支払額自体が減るわけではありませんが、本来納めるべき税金を先延ばしにすることができるため、その分のお金を運用資金に企てたり、投資したりするなど、金利メリットが生じます。

税額控除については、計算で出た所得税額より、直接一定の金額をマイナスできるものなので、その分支払うべき税金が減ることとなります。上に紹介したもので、どちらを適用させるかについては、資金繰りや今後の計画と照らし合わせて考える必要があります。

☆ヒント
特別償却と税額控除、どちらの制度を選択した方がお得に税金を節約できるかは利用したエネルギー環境負荷低減推進設備の取得価額や税額の状況、さらには国の経済政策の状況などによって変わってきます。税理士に相談して、複数の要因の下に判断してもらいましょう。

適用の対象となる設備は?

適用の対象となっている設備は以下のようになります。以下の設備を取得等した日から1年以内に国内にある事業で対象設備を用いた場合のみ税制の使用が認められます。また、適用には期限があり平成28年4月1日から平成30年3月31日までの期間に取得等した設備にのみ限られます。

新エネルギー利用のための設備
1 太陽光発電設備で出力が10キロワット以上のもの
2 風力発電設備で出力が1万キロワット以上のもの
3 中小水力発電装置
4 地熱発電装置で出力が1,000キロワット以上のもの
5 管内設置型の下水熱利用設備
6 ①木質バイオマス発電設備(2万キロワット未満)、②木質バイオマス熱供給装置(160GJ/h未満)、③バイオマス利用メタンガス製造装置、④バイオマスエタノール製造装置、⑤下水汚泥固形燃料貯蔵設備
CO2の排出を抑制するための設備
1 コンバインドサイクル発電ガスタービン
2 プラグインハイブリッド自動車
3 エネルギー回生型ハイブリッド車
4 電気自動車

国や地方公共団体の補助金を受けて以上の設備を製作または設置した場合は、例外的に特別償却や税額控除を受けることができないのでお気を付け下さい。

グリーン投資減税適用例

実際にグリーン投資減税を用いるとどれくらい節税できるのでしょうか。例を見てみましょう。

特別償却

まずは特別償却を用いた場合について紹介します。
とあるタクシー会社A社は環境に優しい会社であることをアピールするため、電気自動車100台を2億7,000万円で購入しました。

A社は平成28年4月に電気自動車を取得し、平成29年8月に事業用に供しました。なお、A社の償却方法は定率法です。その時の節税額は以下のようになります。

取得価額 2億7,000万円 / 法定耐用年数6年
①通償却限度額
 2億7,000万円(取得価額)×0.167×8/12=3,006万円
②期の償却限度額
 2億7,000万円(取得価額)×0.3=8,100万円(特別償却30%)
普通償却の場合と特別償却を利用した場合では約5,000万円もの差が生じます。

税額控除

次に税額控除を用いた場合を紹介します。

B社は保有する工場での電気使用量が多く度々停電を起こしていました。停電のたびに生産ラインがストップしてしまって損害に繋がってしまうことを懸念し、工場の屋根にソーラーパネルを設置し太陽光発電によって電源の一部を賄うことに決めました。

B社は、平成28年4月に取得価額2,700万円でソーラーパネルを工場の屋根に設置し、平成29年8月に事業の用に供しました。当期の法人税額は700万円であり、翌事業年度の法人税額は760万円でした。その時の節税額は以下のようになります。

<当期>
2700万円(基準取得価額)×7%(税額控除率)=189万円(1)
700円(当期の法人税額)×20%(限度率)=140万円(2)

この場合、(1)、(2)いずれか低い方となるので、(2)の140万円が当期の控除額となります。本来控除できる189万円との差額49万円((1)-(2)) については翌期に繰り越しができます。

<翌期>
760万円(翌期の法人税額)×20%(限度率)=152万円 (3)
繰越税額=49万円 (4)

この場合、(4)が(3)以内であるので、49万円を控除できます。一方、仮に翌期の法人税額が少なく、60万円しかなかった場合、翌期法人税額の20%相当額は

60万円(法人税額)×20%(限度率) =12万円(5)

となり、(4)と(5)のいずれか低い方となるので、(5)の12万円が控除額となります。

この場合、本来控除できる49万7200円との差額37万7200円((4)-(5))については、再繰越ができず放棄されます。(引用:経済産業省資源エネルギー庁HP「グリーン投資減税 手続き事例」)
http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/green_tax/greensite/green/green-case.html

☆ヒント
今回紹介したグリーン投資減税は、対象となるエネルギー環境負荷低減推進設備を導入するインセンティブを設けることによって、環境に配慮した社会を形成するための制度です。全ての税理士がこのような税制に詳しいわけではなく、常に最適なアドバイスを提供できるとも限りません。
医者なら内科や外科といった専門領域があるのと同じように、税理士についても得意分野があります。自社の業界に詳しい税理士であれば、その業界にとって有利な情報を提供できる可能性も高くなります。
グリーン投資減税についても同様で、具体的にどのような業種が積極的に適用するべきなのか、業種や会社の状況によって全く異なります。資金繰りや経営についてアドバイスをくれる税理士の位置付けは重要なものになりますので、改めて自分の会社の顧問が適切な税理士なのか考える必要があるかもしれません。

まとめ

グリーン投資減税は新エネルギーを利用し省エネにつながるような設備を設置することで環境に配慮することができると同時に、そうした設備が減税の対象となり節税もできるという一石二鳥の制度です。しかし、すべての税理士がグリーン投資税に詳しいというわけではありません。自社の税理士がどの領域の専門なのかを把握し、最適なアドバイスが受けられる環境づくりを心がけましょう。

慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。

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