個人事業主が利用可能な資金調達方法は?融資元・選び方を解説!
事業規模が小さい個人事業主は、社会全体の景気悪化のダメージも大きく受けます。コロナ禍では営業自粛のような様々な経済活動の制限により、収入が激減して資金不足に陥っている個人事業主は多いでしょう。個人事業主が事業継続のために必要な資金を調達する方法について、ご説明します。
事業資金調達で融資元を選ぶポイント
ポイント①かかる金利
融資を受ける際、金利は最重要とも言えるポイントです。事業継続のための資金に限らず、設備投資資金や事業拡大のための資金調達、生活資金、その他の借金すべてにおいて、まず検討すべき点になります。金利は年単位か月単位で表示されますが、事業資金のような長期的な融資は一般的に年単位の金利(年利)で示されます。例えば金利2.0%で100万円を受けると、1年間に2万円の利息がかかります。
民間企業による融資よりも公的融資の方が、金利は低く設定されています。また審査基準が高く担保も必要な融資は低金利、審査基準が低く担保不要ですぐに受けられる融資は高めの金利になっています。
ポイント②借りやすさ
融資は審査を通過しなければ受けられません。審査は返済能力の有無を確認する目的で、事業開始からの経過年数や経営成績、財務状態などを幅広く対象にして行われます。融資ごとに審査の通過基準は異なり、一般的に好条件の融資ほど厳しくなっています。
厳しい審査が行われる融資では、確定申告書や納税証明書、決算書など、多くの書類を提出する必要があります。時間も労力もかかる点に注意が必要です。
ポイント③融資実行までのスピード
審査が厳しい融資はそれだけ様々な点で細かなチェックを行わなければならず、時間がかかります。スピーディな融資実行は不可能で、時間的余裕がない資金調達には向きません。しかし融資スピードは遅い方がその他の条件は好ましいので、置かれている状況に合わせて選択することが大切です。
個人事業主が利用できる資金調達方法
日本政策金融公庫から融資を受ける
日本政策金融公庫は国民一般、中小企業者、農林水産業者の資金調達を支援するための金融の機能を担う、政府系金融機関です。一般の金融機関による金融を補完し、国民生活を向上する目的で2008年10月1日に設立されました。大規模災害や感染症等による被害に対処するための金融業務も行っています。
個人事業主への融資は国民生活事業の一般貸付として行われます。ほとんどの業種で利用可能で4,800万円を限度額とする融資です。運転資金として融資を受けた場合の融資期間は5年以内で、設備資金の場合の融資期間は10年以内とされています。短期の運転資金の融資も取り扱われています。
日本政策金融公庫からの融資は金利が低く、融資期間も長期であるため、無理のない返済が可能です。金融業や投機的事業、一部の遊行娯楽業等の業種以外を営む、多くの個人事業主が融資を受けられます。税務申告を2期以上行っている個人事業主は担保・保証人不要で融資を受けることもできます。
しかし審査は厳しく、簡単には融資が受けられません。事業の状況から返済能力の有無が厳しくチェックされ、多くの資料提出も求められます。融資実行まで時間がかかる点にも注意が必要です。
銀行や信用金庫から融資を受ける
銀行や信用金庫と言った金融機関も個人事業主に対して融資を行っています。日本政策金融公庫ほどではないものの、以降に紹介するビジネスローンやオンライン融資などよりは低い金利で融資が受けられます。
信用金庫はその土地の企業や住民との関係性を大切にする、地域に密着した金融機関です。営業規模が小さいため信用が得られにくい個人事業主に対して、銀行よりもフレキシブルな対応が望めます。また融資が少額である点も、銀行が個人事業主への融資を敬遠する理由の1つに挙げられますが、信用金庫では小口の融資にも対応しています。
個人事業主が金融機関から融資を受ける際は、とくに次の3点に注意が必要です。
- ① 開業届を出し損なっていないか
所得税法第229条により、新たに事業を開始したときは届け出ることが義務付けられています。「個人事業の開業・廃業届出書」に必要事項を記入し、開業日から1ヵ月以内に税務署に届け出る必要があります。罰則がないため出し損なったまま事業を継続しているケースが多いものの、金融機関から融資を受けるにはきちんと開業を届け出ていなければなりません。 - ② きちんと確定申告をしているか
毎年きちんと確定申告をしていることも、金融機関から融資を受ける大切なポイントです。確定申告を不備なく正確に行うためには、記帳などの日々の経理作業もしっかりとされていなければなりません。事業に対する態度・姿勢の高評価へとつながり、融資に対してもプラスに働きます。 - ③ 利益が出ているか
金融機関から融資を受けるためには、基本的に利益が出ていること、黒字であることが求められます。
ビジネスローンを利用する
ビジネスローンは事業用資金に特化した融資です。金融機関もビジネスローンを取り扱っていますが、信販会社や消費者金融による貸付を指すことが一般的です。審査基準が低いため借りやすく、スピーディに融資が受けられます。金額によっては即日で融資を受けることもでき、急に資金調達が必要になった場合の対応も可能です。カードを使用してATMで借入手続きや返済を行えるものも多くあり、手軽に利用できます。
一方金利が高いこと、融資限度額が少ないことがビジネスローンのデメリットです。手軽である故に利用を繰り返し、自転車操業に陥ってしまう危険もあります。完済を基本とした、計画的な利用が求められます。
オンライン融資を受ける
オンライン融資はすべての手続きがインターネットで行われ、一切の書類の提出を必要としない融資です。会計ソフトデータや銀行口座使用状況などがオンラインでデータ送信され、融資の可否や限度額が判断されます。これらの審査にはAIが用いられ、過去のデータの蓄積により適した融資が提案されます。LENDYやアルトアといったオンライン融資事業者の他、メガバンクであるみずほ銀行や三菱UFJ銀行もサービス提供を行っています。
オンライン融資では必要なデータのやり取りはオンラインですべて行われるため、提出書類を作成したり揃えたりする必要はありません。審査にも時間はかからず、スピーディな融資が受けられます。担保や保証人も不要ですが、金利は高めに設定されています。
好条件で事業資金を調達する方法
自治体の融資を受ける
自治体によっては個人事業主に対して融資を行っているところがあります。自治体の発展を目的に公的サービスの一環として行われるもので、低金利で融資が受けられます。
しかし審査は厳しく、多くの書類や帳票の提出が求められます。積極的な情報アナウンスもないため、自治体にどのような融資制度があって利用可能かどうかは自分で調べる必要があります。
給付金・助成金を活用する
コロナ禍では個人事業主向けの給付金・助成金も準備され、給付が行われています。持続化給付金や家賃支援給付金は申請締切日が、2021年1月15日から2月15日に延長されました。感染拡大の状況によっては追加の支援策が行われる可能性があり、引き続き動向を注視していく必要があります。
また緊急事態宣言下で東京都が休業や時短営業に応じた飲食店に対して協力金を支給するように、自治体によって感染拡大の措置を行った特定業種の事業者に対して協力金や支援金の支給・交付を行っている場合があります。自治体のHPを参照したり直接問い合わせたりして、対象となっている支援がないかを確認しましょう。
まとめ
個人事業主の事業資金調達方法には日本政策金融公庫や銀行・信用金庫からの融資、ビジネスローンやオンライン融資の利用があります。金利や借りやすさ、融資スピードと言った条件を比較・検討し、希望に合う、または近い方法を選択しましょう。自治体実施の融資や給付金・助成金が利用できる場合もあります。積極的に情報収集を行って好条件で事業資金を調達し、事業継続を図りましょう。
複数の企業で給与計算などの業務を担当したことから社会保険や所得税などの仕組みに興味を持ち、結婚後に社会保険労務士資格とファイナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。現在はライターとして専門知識を活かした記事をはじめ、幅広い分野でさまざまな文章作成を行う。
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