定款って何?会社設立を円滑にする作成方法と定款認証について解説
会社に必ずあるのが定款(ていかん)です。決算書と違いなじみの薄い書類でしょう。そのため、定款の作成はとっつきにくいかもしれません。しかし、会社設立には避けて通れない書類であり、手続きを円滑にするカギを握っています。そこで、定款の作成方法と定款認証について解説します。
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定款とは
会社を設立するなら必ず作成するのが定款です。それでは詳しく見ていきましょう。
定款は会社の憲法にあたる
定款は会社の憲法にあたる位置づけです。運営する上で必要とされる基本的な規則を定めます。たとえば、法人の住所も、管轄する税務署の根拠となるため、定款に記載しなければなりません。ほかにも資本金の金額など、会社の運営に欠かせない項目も基本的な規則に含まれます。
定款認証によりはじめて効力が発生する
株式会社などの組織形態の場合、定款作成後に公証人の認証を受ける必要があります。公証人(国の公務である公証事務を担う公務員)が、正当な手続きにより定款が作成されたと証明することを、「定款認証」と呼びます。
公証人の認証を受けることで、定款に初めて法的効力が発生し、後日紛争になった場合の証拠として、不正行為を防止することができます。
定款を作成する前に決めるべき事項
会社の実務上、定款を作成する前に決めるべき事項を説明します。
(1)発起人・株主
出資や定款作成など会社設立の手続きをする人のことを「発起人」といい、出資した資本金の金額に応じて経営権に相当する株式が発行され自社の株主となります。たとえば、資本金の全額を1人で出資した場合、自社株式の保有比率は100%であり、経営権を完全に掌握することができます。
(2)事業目的
会社は事業目的で定められた内容のみの事業が認められるため、会社の方向性を決める大切な項目です。
具体的にどう書けばよいか・どこまで盛り込むかは、同業他社の事業目的を確認してみることをおすすめします。
確認方法は、
- 同業他社のホームページを確認する
- 法務局で所定の手数料を支払い、登記事項証明書(登記簿謄本)を確認する
- 登記情報提供サービスを利用する(有料サービス)
などがあります。
(3)会社名(商号)
会社名を決めるポイントはさまざまですが、次の3つは最低限考慮しましょう。
- 社名に株式会社などの組織形態を記載する
- 誤解を招く社名を使用しない(例 卸売業の社名が「株式会社〇〇法律事務所」)
- 有名企業の社名を避ける(例 オリックス株式会社)
また、希望の会社名(商号)を検索して、既に存在する会社と重複しないかも確認しておきましょう。
確認方法は、
- 国税庁法人番号公表サイトで検索する
- 登記情報提供サービスで検索する
- 登記・供託オンライン申請システムで検索する
などがあります。
(4)本店所在地
会社の正式な住所であり、管轄する税務署などの基準になります。
(5)事業年度
正式には営業年度であり、決算日の基準となる事業年度とほぼ同じ意味です。
(6)株式譲渡制限会社にするかどうか
株式譲渡制限会社とは、株主が経営権に相当する株式を売却することを制限する会社を意味します。株式譲渡の制限により会社にふさわしくない人に株式がわたるのを阻止できるメリットがあります。そのため、設立当初は株式譲渡制限会社にするのが一般的です。
(7)役員構成
誰を役員にするかによって、事業活動の明暗を左右することがあります。取締役や代表取締役などの会社法に定められている役割はもちろん、CEO(最高経営責任者)や取締役CFO(最高財務責任者)など、法律以外の細かい職責もきちんと決める必要があります。
(8)資本金の額
資本金の額は会社の信用度合いを示し、受けられる優遇税制の範囲や許認可の申請にも影響を及ぼします。また、代表者などの自己資金を示す金額でもあり、創業融資の引き出しの成否にかかわってきます。
定款作成を円滑にするためには?
定款には決めるべき事項が多く、作成する時間は会社設立の中で多くのウェイトを占めます。そのため、手続きをスムーズにするためにも、定款作成を円滑にするのがポイントになります。
定款の作成方法
会社設立をスムーズにするためにも、円滑に定款を作成する方法をきちんと押さえましょう。
紙の定款と電子定款を選択する
そもそも定款は「紙の定款」と「電子定款」の2種類が存在します。両者の違いは次の通りです。
紙の定款 | 電子定款 | |
---|---|---|
作成方法 | 紙媒体 | 電子媒体 |
提出方法 | 公証人役場へ出向く | オンライン申請 |
保存方法 | 紙媒体 | フロッピーディスクなどの電磁的記録 |
収入印紙代 | 40,000円 | 免除 |
電子定款のほうが作成する場合の利便性や、収入印紙代4万円が節約できる点で優れています。
紙の定款の作成手順
紙の定款の作成手順はさまざまですが、ここでは日本公証人連合会が公開している株式会社の定款記載例(wordのテンプレート)に必要事項を入力する場合について紹介します。テンプレートの種類は次の通りです。
- 中小会社1 小規模会社Ⅰ(株式非公開、取締役1名、監査役非設置、会計参与非設置)
- 中小会社2 小規模会社Ⅱ(株式非公開、取締役3名以内、取締役会非設置、監査役非設置)
- 中小会社3 中規模会社(株式非公開、取締役3名以上、取締役会設置、監査役設置)
- 大会社 (株式公開、取締役設置、委員会設置、会計監査人設置)
今回は1人社長の会社を例に説明します。
- (1)テンプレート「中小会社1 小規模会社Ⅰ」を選択する
- (2)商号・目的を入力する
- (3)本店所在地を「東京都〇〇区」など市区町村まで入力する
- (5)発行可能株式総数(最大で発行できる株式数)を入力する(例 発行株式数の10倍など)
- (6)通常の事業年度を入力する
- (7)資本金の金額を入力する
- (8)取締役の氏名を入力する
- (9)発起人の住所・氏名・株式数・出資額を入力する
電子定款の作成手順
電子定款の作成手順は次の通りです。
(1)以下の事前準備をする
- PDFファイルの作成ソフト「Adobe Acrobat」を用意する
- 公的個人認証サービスなどの電子証明書を取得する
- wordなどの文書作成ソフトを用意する
(2) 文書作成ソフトに必要事項を入力する
日本公証人連合会が公開している株式会社の定款記載例を利用するのがおすすめです。
(3) 文書作成ソフトで作成した定款を、Adobe AcrobatやSkyPDFなどのPDFファイル作成ソフトに「PDF署名」の機能を追加した「PDF署名プラグインソフト」によりPDF化し、電子署名をする
定款認証のルール
上記のように円滑に定款を作成するためには、定款認証の基本的なルールを知ることが大切です。
定款認証が必要な会社
定款認証が必要な会社の種類は次の通りです。
- 株式会社
- 一般社団法人および一般財団法人
- 税理士法人、司法書士法人、行政書士法人、土地家屋調査士法人、社会保険労務士法人、弁護士法人、監査法人、特許業務法人、特定目的会社、相互会社、金融商品会員制法人
- 信用金庫、信用中央金庫および信用金庫連合会
なお、いわゆる持分会社の合同会社などは定款認証が不要です。
テレビ電話による認証制度が導入された
2019年3月29日からテレビ電話による認証制度が導入されました。公証人役場へ出向かなくてもテレビ電話で公証人の認証を受けることが可能ですが、その条件は電子定款で作成することです。
「実質的支配者となるべき者の申告制度」もすでに追加されている
暴力団員などによる法人の不正使用(テロ資金供与など)を抑止する目的で、「実質的支配者となるべき者の申告制度」が2018年11月30日から追加されました。実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配する個人です。出資者や代表取締役とは別に、実際に会社の人事などで権限を行使する実質的経営者が存在する場合、定款認証のタイミングで申告します。申告した結果、実質的支配者が暴力団員などに該当した場合、定款の認証は受けられません。
電子定款での作成が会社設立を円滑にする
所定の手続きで要する移動時間の節約は会社設立を円滑にする大事なポイントになり、その点では、紙の定款よりも電子定款のほうが優れています。また、収入印紙代の免除など、電子定款での作成を奨励していると考えられます。
公証人役場までの移動時間が節約できる
電子定款をオンライン申請しても、公証人役場へ出向いて認証を受ける必要がありました。しかし、テレビ電話による認証制度により、画面上で定款認証が完結できるようになります。認証後も法務局に提出する定款を郵送で請求でき、公証人役場へ出向く必要がなくなります。
法務局へのオンライン申請にも利用できる
会社の設立登記における法務局へのオンライン申請で添付できる定款は電子定款のみとなっており、紙の定款と比べて法務局までの移動時間を節約することができます。また、申請書類のチェックに引っかかっても、オンライン申請なら法務局へ出向かなくても、パソコン上で訂正することが可能です。
まとめ
会社設立を円滑にする定款の作成方法は①決めるべき事項をきちんと決めること、②電子定款で作成することに尽きます。①および②を実行するためには、ある程度の専門知識が必要です。不安なら税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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