被災地支援にも首里城再建にも申告いらずの「ふるさと納税」で寄付できる

[取材/文責]マネーイズム編集部

今年(2019年)は、豪雨や台風による甚大な被害が相次ぎました。また、10月31日未明には、沖縄のシンボル首里城が焼け落ちるという、ショッキングな事件も。報道で状況を目にして、寄付というかたちで支援したい、という思いを募らせた方も多いはずです。そうした寄付金は、税金の控除の対象にもなるのですが、手続きはどうしたらいいのでしょう? 実は、「ふるさと納税」制度を活用すれば、基本的に確定申告の必要などもなく、寄付したい自治体に迅速に思いを届けることができるのです。わかりやすく解説します。

上限額の範囲内なら、「寄付額-2,000円」が全額控除される

被災地への寄付金の届け方としては、自治体が開設した口座に直接振り込む、あるいは日本赤十字社、中央共同募金会やNPO法人、公益法人などの支援団体・組織に送る――といった方法があります。さらに、そうしたオーソドックスなやり方に加えて、ここ数年、2008年にスタートした「ふるさと納税」を活用した寄付が増えているのを、ご存知でしょうか?

 

制度を利用したことのない人のために、ふるさと納税のあらましを説明しておきましょう。「納税」とネーミングされていますが、法律的には寄付行為になります。納税者は、自分が選んだ好きな自治体に対して寄付(ふるさと納税)を行うことができます。この場合、寄付額から2,000円を超える部分が、所得税と住民税合計で、原則として全額税額控除されるのです。

 

例えば30,000円のふるさと納税を行った場合、その年の所得税、住民税から合わせて28,000円(30,000円-2,000円)が差し引かれる(控除される)ことになります。複数の自治体に寄付しても、寄付額から引かれるのは1年に2000円です。ただし、いくらでも控除されるというわけではありません。控除の対象となる寄付額には、「総所得額等の40%」という上限が設けられていますから、その点には注意が必要です。

 

テレビコマーシャルなどでもおなじみのように、このふるさと納税を行うと、普通は寄付した自治体から、その金額に応じて「地場産品」の返礼品が送られてきます。当然のことながら、義援金を寄付する場合には、返礼品はありません。現地の復興、被災者支援に100%役立てることが、その代わりになるわけです。ちなみに、寄付の窓口であるふるさと納税サイトに自治体が自らを掲載してもらう際には、サイトに対して手数料などが支払われています。しかし、災害支援などの寄付に関しては、手数料の徴収などは行われません。

5自治体まで、サラリーマンは確定申告不要

さきほども触れたように、寄付は複数の自治体に対して行うことができます。さらにサラリーマンでも、年間5自治体までの寄付であれば、確定申告なしで控除を受けられるのも、この制度の使いやすいところと言えるでしょう。もちろん、申告を行って6自治体を超えて寄付することもできます。

 

この仕組みを「ワンストップ特例制度」といいます。指定の申請書を寄付した自治体に送付すれば、その適用を受けることができます。災害支援の寄付については、各自治体が設けた専用口座に直接振り込む場合にも、このふるさと納税のルールが適用されます。

 

日本赤十字社、中央共同募金会が開設した専用口座に送金した場合にも、控除の扱いは変わりません。ただし、こちらは、「ワンストップ特例制度」の対象外です。控除を受けるためには、寄付すると発行される受領書を添付して、確定申告を行う必要があるのです。

首里城再建も支援できる

では、ふるさと納税制度を活用した被災地支援の方法について、具体的に説明します。すでに制度を利用している人にはおわかりのように、「ふるさとチョイス」「さとふる」といったふるさと納税サイトが“入り口”になります。被災自治体がふるさと納税による寄付を受け付けていれば、自治体ホームページにこうしたサイトのリンクが張られていますから、そちらから入ることもできるでしょう。

 

各サイトには「災害支援」の専用ページが設けられていて、例えば「令和元年台風19号被害緊急支援募金」といったかたちで、寄付を求める自治体の一覧が掲載されていますから、自治体を選び、サイトの指示に従って必要事項を記入、選択していけばOKです。「ワンストップ特例」申請書の送付も、このとき同時に依頼できます。決済は、原則としてクレジットカードでも銀行振り込むでも可能です。

 

こうしたふるさと納税を利用した被災地支援は年々拡充し、自然災害以外にも対象が広がっています。例えば、最大規模のふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」では、焼失した首里城のクラウドファンディング(※)による再建プロジェクトが展開されています。来援3月31日までを期限にスタートしたのですが、すでに目標額(1億円)を大幅に上回る4億3,790万円(11月9日現在)を集めました。ふるさと納税制度が、こうした寄付を募るのに適した仕組みであることを証明する事例とも、言えるのではないでしょうか。

 

※クラウドファンディング 群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、「インターネットを介して、不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」ことを指す。

まとめ

ふるさと納税を利用して、税金の控除を受けながら、被災地に対する寄付を行うことができます。ただし、控除が可能な寄付の金額には、上限のあることに注意しましょう。不明な点は、税の専門家である税理士に相談を。

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