「ふるさと納税」の季節そこで気をつけたい各種控除との関係

[取材/文責]マネーイズム編集部

今年も、「ふるさと納税」のテレビCMが目立つ季節になりました。触発されて、各地の特産品をもらってお正月に楽しもうと考える人も、多いのではないでしょうか。ただし、一つ気をつけたいのが、ふるさと納税制度が適用される「寄付額」には、所得に応じた上限がある、ということです。さらに「医療費控除」などの控除を利用すると、上限額などに影響する可能性も。ふるさと納税と各種控除の関係を、わかりやすく解説します。

所得の40%まで寄付が可能

はじめに、ふるさと納税の仕組みについて概観しておきましょう。総務省のホームページでは、次のように定義されています。

 

ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)を行った場合に、寄付額のうち2,000円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です(一定の上限はあります。)。

例えば、年収700万円の給与所得者の方で扶養家族が配偶者のみの場合、30,000円のふるさと納税を行うと、2000円を超える部分である28,000円(30,000円-2000円)が所得税と住民税から控除されます。

 

1年間に2000円を負担すれば、いくつの自治体に寄付しても可。寄付額が全額控除(本来支払うべき所得税、住民税から減額)されたうえに、寄付した自治体からお礼の品として地場産品などが送られてくるという、お得な制度なのです。

 

とはいえ、際限なく寄付できるわけではなく、控除の対象となるふるさと納税額の上限は、「総所得金額等の40%」と決められています。それを超えて寄付を行っても、その分は控除されません。

 

寄付上限の計算のベースとなる「総所得額等」は、当然、寄付した年のもの。特に月ごとの売上の変動が大きな事業の場合などには、その年の年末近くにならないと、正確な数字が読めないこともあります。毎年、この時期にふるさと納税の「駆け込み」が増えるのには、そうした理由もあるのです。

「住宅ローン控除」と併用すると……

そのように、上限額を意識しなくてはならないふるさと納税ですが、盲点になりやすいのが、他の控除との関係です。「無関係で併用可能」とはいかないケースもありますから、さらに注意を払う必要があるのです。

 

まず、「住宅ローン控除」について、ふるさと納税を確定申告で行う場合について、考えてみましょう。住宅ローン控除は、ローン開始から10年間、ロ-ン残高の1%が所得税から控除され、そこから控除しきれなかった分がある場合には住民税から控除される、という仕組みになっています。

 

ふるさと納税と住宅ローン控除を併用すると、まず所得税からそれぞれが控除されます。その際、先に控除が行われるのは、ふるさと納税。住宅ローン控除は残った所得税から、という順番になります。今説明したように、それで控除不足分が生じた場合には、住民税からの控除になるのですが、実は住民税には、住宅ローン控除の上限が設定されているのです。

 

もし、その限度額を超えたら、その分は控除が認められず、自己負担ということになってしまいます。それを避けるためには、ふるさと納税の所得税からの控除を、「所得税から“あふれた”住宅ローン控除が、住民税の上限までに収まる範囲」に、とどめる必要があるわけです。

 

ちなみに、ふるさと納税の控除上限額のベースとなる住民税所得割額(※)は、住宅ローン控除適用前のものになります。ですから、住宅ローン控除の利用が、ふるさと納税の控除上限額そのものに影響を与えることはありません。

 

なお、サラリーマンの場合は、5件までなら確定申告なしでふるさと納税を行える「ワンストップ特例制度」を利用することができます。この制度では、控除はすべて住民税から行われます。一方の住宅ローン控除は所得税がメインなので、確定申告のようにその限度額超過をさほど気にすることなく、両者を併用することが可能なのです。

 

※住民税所得割額
住民税のうち、所得部分に課税される税額。住民税額は、これと全員に均等にかかる「均等割額」の合計になる。

「医療費控除」はどうか?

他方、同じ控除でも、「医療費控除」の場合は、事情が違ってきます。まず、医療費控除を受けようと思ったら、サラリーマンでも確定申告をしなくてはなりません。ふるさと納税をそれと併用する場合には、さきほどのワンストップ特例制度を使うこともできず、こちらも確定申告ということになるのです。

 

この医療費控除は、住宅ローン控除と違い「所得控除」である点がポイントです。所得税は、所得からこの所得控除を差し引いた「課税所得」に税額を掛けて計算されます。つまり、所得控除を受ければ、その分所得税そのものが減額され、「総所得金額等の40%」というふるさと納税の上限額自体も、下がることになるわけです。所得は去年と変わらないけれど、今年は入院したから、かなりの医療費控除を受けられそう、というような場合には、ふるさと納税の上限額に要注意です

 

所得控除には、医療費控除の他に次のようなものがありますから、「しまった!」にならないように気をつけましょう。

 

  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)を始めた=小規模企業共済掛金等控除
  • 生命保険に入った=生命保険料等控除
  • 地震保険に入った=地震保険料控除
  • 配偶者が仕事を減らした=配偶者控除、配偶者特別控除

まとめ

ふるさと納税と各種控除との関係は、

 

  • 住宅ローン控除
    →ふるさと納税の上限額には影響しないが、住宅ローン控除の限度額に注意
  • 医療費控除などの所得控除
    →ふるさと納税の控除上限額自体が、ダウンします!

 

不安な場合には、税理士に相談を。

中小企業オーナー、個人事業主、フリーランス向けのお金に関する情報を発信しています。

新着記事

人気記事ランキング

  • banner
  • banner