特別償却・税額控除が認められる?生産性向上設備投資促進税制について解説

[取材/文責]山田隆裕

事業者が、機械装置等を導入した場合、特別償却又は税額控除が認められます。この制度は、先端設備や生産ラインやオペレーションの改善に資する設備を取得や製作等した場合に、特別償却(取得価額の50%、ただし建物・構築物は25%)又は税額控除(取得価額の4%、ただし建物・構築物は2%)が選択適用できるというものです。
本記事では、制度の概要、期間、適用条件、手続き、対象設備などを解説していきます。

生産性向上設備投資促進税制とは

生産性向上設備投資促進税制とは、先端設備を導入、または生産ラインやオペレーションの改善につながるような設備の導入をした企業に対して、特別償却や税額控除などの減税措置を行う制度です。民間投資を促進するための制度になります。

生産性向上設備投資促進税制の適用対象は業種や業態、企業の規模にかかわらず幅広いものとなっています。一方で対象となる設備に関しては様々な条件が存在しており、制度を利用する際には注意が必要です。

※生産性向上設備投資促進税制は、平成26年1月20日から平成29年3月31日までに取得等をし、かつ、事業の用に供した設備が対象となります。
A類型(先端設備)については、各設備の性能証明になりますので、取得日に対し事後の証明でも問題ありません。そのため、平成29年4月以降も、各工業会において証明書の発行手続きを行っています。設備ユーザーが行う実際の確定申告時までに証明書の取得をする必要があります。
B類型(生産ラインやオペレーションの改善に資する設備)については、経済産業局による確認書の発行手続きを終了しています。

適用期間

生産性向上設備投資促進税制は、平成26年1月20日から平成29年3月31日までに行われた設備投資に対して適用されます。つまり、平成26年1月20日から平成29年3月31日までの期間が含まれる事業年度について、生産性向上設備投資促進税制を適用することが可能です。

適用対象

生産性向上設備投資促進税制は、確定申告・決算申告の際に青色申告書を提出する個人事業主または法人であればすべて、適用対象となります。業種や業態、企業の規模にかかわらず適用対象となるため、中小企業でなくとも利用することが可能です。

対象設備

本制度の対象設備は、各事業者において、下記表に記載の設備のうち、中古設備・貸付設備(賃貸資産)・海外で使用する設備・生産等設備に該当しないもの等に該当しないものです。なお、購入設備のみならず、自社製作した設備も本税制措置を利用可能となっています。
【A:先端設備】

設備の種類 用途または細目
機械装置 全て
工具 ロール
器具備品 試験又は測定機器
陳列棚及び陳列ケースのうち、冷凍機付又は冷蔵機付のもの
冷房用又は暖房用機器
電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気又はガス機器
氷冷蔵庫及び冷蔵ストッカー(電気式のものを除く。)
建物 断熱材
断熱窓
建物附属設備 電気設備(照明設備を含み、蓄電池電源設備を除く。)
冷房、暖房、通風又はボイラー設備
昇降機設備
アーケード又は日よけ設備(ブラインドに限る。)
日射調整フィルム

<中小企業者等の場合のみ対象>

設備の種類 用途または細目
器具備品 サーバー用の電子計算機(その電子計算機の記憶装置にサーバー用のオペレーティングシステムが書き込まれたもの及びサーバー用のオペレーティングシステムと同時に取得又は製作をされるもの)※
ソフトウエア 設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの

【B:生産ラインやオペレーションの改善に資する設備】

設備の種類 用途または細目
機械装置 全て
工具 全て
器具備品 全て※
建物 全て
建物附属設備 全て
構築物 全て
ソフトウエア 全て

※器具備品のうち、サーバー用の電子計算機については、情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部又は一部の提供を行う事業を行う法人が取得又は製作をするものを除く。

先端設備(A類型)

対象設備のうち以下の(1)及び(2)に該当すること。
(1)最新モデル(ソフトウエア組込型機械装置は、一代前モデルも含む)
(2)旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するもの(ソフトウエアについては適用外)

生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)

以下の算式による投資利益率が15%(中小企業者等の場合5%)以上となることが見込まれるものとして経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載されている対象設備。

<算式>
投資利益率 = 「営業利益+減価償却費」の増加額 ÷ 設備投資額

税制措置

「先端設備」「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」を取得した場合、以下の税制措置の適用が可能です。
(1) 平成26年1月20日から平成28年3月31日まで
即時償却または税額控除5%(建物・構築物は3%)
(2)平成28年4月1日から平成29年3月31日まで
特別償却50%(建物・構築物は25%)または税額控除4%(建物・構築物は2%)
ただし、税額控除における税額控除額は、当期の法人税額の20%が上限です。

手続き

冒頭にも示した通り、B類型(生産ラインやオペレーションの改善に資する設備)については、経済産業局による確認書の発行手続きを終了しています。
先端設備(A類型)証明書発行の手続きについては、事業者は、当該設備を生産した機器メーカー等に証明書の発行を依頼し、送られてきた工業会等の証明書を確定申告の際に添付することで、生産性向上設備投資促進税制を利用することができます。
発行手続きの詳細は、証明書発行団体にお問合せ下さい。

☆ヒント
生産性向上設備投資促進税制を活用することによって、生産性を高められると同時に節税対策を行うことが可能です。生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)の場合は終了してしまいましたが、先端設備(A類型)は引き続き申請可能です。
しかし、この制度を利用するためには、必要な手続きがいくつもあり、すべて問題なく行うためには手間と確かな知識が必要不可欠です。制度を正しく利用し、適切な節税を行うためにも、まずは税務のプロである税理士に相談し、税理士のもとで会計処理を行うことを強くお勧めします。

まとめ

生産性向上設備投資促進税制を利用することで、効果的な節税が可能となります。対象設備に関するいくつかの条件やその手続きなど、利用に際して煩雑な面はありますが、業種や業態などの制限がなく幅広い事業者が利用することが可能です。
制度を正しく利用し、適切な節税を行うためにも、利用を検討する際には、まずは一度税理士に相談してみましょう。

慶應大学卒。現、同大学院所属。
大学4年時に公認会計士試験に突破。
自分の知識の定着も兼ねて、会計・財務などに関する知識を解説していきます。

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