2020年度の社会保険の電子申請義務化スタートで中小企業がするべき準備

[取材/文責]マネーイズム編集部

2020年度から社会保険の電子申請義務化がスタートします。対象は大企業ですが、中小企業でも数年のうちに同様に社会保険の電子申請が義務化されると考えられます。早めの準備でスムーズな導入のほかに、さらなる効率化が図れます。社会保険の電子申請について中小企業が今から準備しておくべきことをご紹介します。

社会保険の電子申請は義務化スタート

2020年度からスタートする社会保険の電子申請義務化の内容

大企業などを対象に、2020年度から社会保険の電子申請義務化がスタートします。対象となる企業と手続きは次の通りです。

対象企業

  • 資本金や出資金、銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
  • 保険業法における相互会社
  • 投資信託及び投資法人に関する法律における投資法人、
  • 資産の流動化に関する法律における特定目的会社

対象となる手続き

  • 健康保険・厚生年金保険
    ○被保険者報酬月額算定基礎届
    ○被保険者報酬月額変更届
    ○被保険者賞与支払届
  • 労働保険
    ○年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書)
    ○増加概算保険料申告書
  • 雇用保険
    ○被保険者資格取得届
    ○被保険者資格喪失届
    ○被保険者転勤届
    ○高年齢雇用継続給付支給申請
    ○育児休業給付支給申請

中小企業でも社会保険の電子申請義務化に

2020年度は対象となっていない中小企業も、いずれは社会保険の電子申請が義務化される見通しです。電子申請には行政手続きを簡略にできる、ペーパーレスが実現できるなどの利点があります。効率性や利便性の高さから企業にとっては生産性アップ、行政機関にとってはサービスの質の向上につながると期待され、電子申請は今後、さらなる推進のために義務化が進むと考えられます。

今回は対象となっていない中小企業でも、社会保険の電子申請義務化スタートに向けて、しっかりと準備しておく必要があります。慌てることなくしっかりと対応するためにも、早めに準備態勢を整えましょう。

社会保険の電子申請の内容とメリット

社会保険の電子申請とは?

会社が行う社会保険・労働保険の手続きを従来の紙でのやり取りではなく、データを受け渡す方法が社会保険の電子申請です。政府は行政手続きを簡略化するため、会社や個人が各行政機関に対して行う手続きや届出について電子申請することを推進しています。

 

社会保険や労働保険を管轄している厚生労働省も、2017年6月に「『行政手続きコスト』削減のための基本計画」を策定しました。2020年度からスタートする社会保険の電子申請義務化もこの計画に基づくもので、またこの計画では「義務化の要件に該当しない事業所についても、あわせて電子申請への移行を促すこととする」とされています。

社会保険の電子申請のメリット

社会保険の電子申請を行うことで、業務の効率化を図れます。社会保険・労働保険の手続きを従来の紙で行う方法では、記入・事業主の押印、社会保険事務所や労働基準監督署への持参という手間がかかります。電子申請ではデータを直接オンラインで送ることができ、作業にかかる労力を大幅に削減できます。

 

また電子申請は24時間・365日、いつでも手続きを行えます。従来の紙による手続きでは社会保険事務所やハローワークの業務時間内に訪問し、窓口での提出を済ませる必要があります。電子申請では時間や曜日、祝祭日を気にせず手続き可能で、社会保険の手続き業務のために予定を開けたりスケジュールを調整したりする手間をなくせます。交通費の削減にもつながります。

社会保険の電子申請の実務

社会保険の電子申請に用いられている2つの形式とは?

社会保険の電子申請にはe-Gov形式API形式という2つの形式のうち、どちらかで行います。e-Gov形式は総務省が運営する「e-Gov電子政府の総合窓口」サイトにアクセスし、データを入力する方法です。画面を開いて1件ずつ申請内容を入力していきます。基本的には紙での手続きと同じです。

 

API形式はソフトウェア上のデータを用いて、社会保険の電子申請を行う方法です。APIは「Application Programming interface(アプリケーション プログラミング インターフェース)」の略で、プログラム同士でのデータの受け渡しを可能にするやり取り方法です。人事・労務ソフトのデータを、社会保険の電子申請に使用します。

中小企業の社会保険の電子申請におすすめの形式は?

中小企業の社会保険の電子申請には、e-Gov形式よりもAPI形式を用いる方法が向いています。人事・労務ソフトのデータがそのまま利用でき、社会保険の手続きのために別にデータを準備する手間を省けます。ソフトが必要なデータを集めてくれるので、紙での手続きでありがちな必要事項の記入漏れがありません。記入・入力ミスの心配もなく、確実に必要な社会保険手続きを行えます。

中小企業が社会保険の電子申請をスムーズに導入する方法

e-Gov形式は電子証明書が必要!

e-Gov形式で社会保険の電子申請を行うには、電子証明書が必要です。電子証明書は身分証明書や印鑑のようなもので、データが安全であることを証明するために用いられます。紙での手続きをする際に用紙に全ての項目の記入を終えてから押印するのと同じように、電子申請でもデータの入力を終え、最後に電子証明書を添付してデータを送信します。電子証明書の発行は認証局が行うので、「e-Gov電子政府の総合窓口」サイト上の操作とは別に、前もって準備しておく必要があります。

 

またe-Gov形式はWindowsしか対応してなく、Macintoshパソコンでのe-Gov形式の社会保険の電子申請はできません。ブラウザはInternet Explorer、Edge、Firefox 、Chromeが使用可能ですが、古いバージョンでは対応していない場合もあります。ポップアップブロックの解除や信頼済みサイトへの登録が必要な場合もあるので、パソコンの環境も整えておくとスムーズに社会保険の電子申請を行えます。

API形式なら対応ソフトの活用が便利!

社会保険電子申請対応の人事・労務ソフトを導入すると、スムーズに社会保険の電子申請を行えます。労働者の氏名・住所・生年月日などの個人情報、給与データなどの活用により、社会保険の電子申請を簡単に行えます。また、社会保険の手続きの効率化に加え、ソフトを導入することで人事・労務管理の効率化も図れます。

 

社会保険の電子申請に対応している人事・労務ソフトには人事労務Freee、SmartHR、奉行Edge労務管理クラウドなどがあります。「e-Gov電子政府の総合窓口」サイトでも主要なソフトが、ソフト事業者のコメントとともに紹介されています。

まとめ

2020年度から社会保険の電子申請義務化がスタートします。まずは大企業などが対象とされていますが、そう遠くない時期に中小企業でも義務化されるでしょう。社会保険の電子申請には業務効率化のメリットがあります。また中小企業では対応する人事・労務ソフトの活用によっても、よりいっそうの効率化が期待できます。早めの準備で対応を万全なものにしておきましょう。

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