税金の支払いに法人は納付先まで出向くの?納税方法の新制度について解説
事務の合理化が叫ばれる中、税金を納めるのに納付先まで出向く時間を省きたいと考えている法人は多いでしょう。年号が「平成」から「令和」に変わり、納税方法に新制度が導入されました。便利になった納税方法を利用し、事務的手間を省いている法人も存在します。そこで、新制度を中心に納税方法について解説します。
法人にかかる税金の種類と納付先
法人に課税される税金の種類とその納付先を紹介します。
申告をする税金
- 国税:本店所在地の所轄する税務署
- 地方税:それぞれの本店と支店の所在地を所轄する都道府県と市区町村
法人が確定申告をする税金の納付先は次の通りです。
(1)国税
法人税と消費税の納付先は本店所在地を所轄する税務署になります。本店所在地とは、登記簿謄本に記載されている本店の住所のことを指します。
(2)地方税
住民税と事業税(事業所税を含む)の納付先は本店と支店の所在地を所轄する都道府県と市区町村になります。
給料にかかる税金
- 国税:本店所在地を所轄する税務署
- 地方税:それぞれの従業員の住所を所轄する市区町村
給与から天引きし、従業員の代わりに納付する税金の納付先は次の通りです。
(1)国税
給与天引きの源泉所得税の納付先は法人税や消費税と同じく、本店所在地を所轄する税務署になります。
(2)地方税
特別徴収の住民税の納付先は、給与天引きの対象になった従業員の住所を所轄する市区町村になります。そのため、納付先は複数の市区町村になる傾向にあります。
(3)社会保険料
給与天引きの社会保険料の納付先は日本年金機構(年金事務所)になります。
その他の税金
上記以外の税金の納付先は次の通りです。
- 固定資産税:固定資産を保有している支店などの住所を管轄する市区町村
- 事業所税:支店の住所を管轄する市区町村
- 自動車税:車を保有している住所(=車検証の登録住所)を管轄する都道府県
- 軽自動車税:車を保有している住所(=車検証の登録住所)を管轄する市区町村
実際に納付する場所は?
税法上の納付先は税務署・都道府県・市区町村です。しかし、実際の納付場所は次の通りになります。
- 税務署、都道府県、市区町村の窓口
- 金融機関の窓口
- クレジットカード納税
- コンビニ納税
- 電子納税(ATM、パソコンやスマートフォンなどによるオンラインでの納税)
クレジットカード納税と電子納税は時間や場所の制約がないため、たとえば隙間時間や電車移動中に税金の支払いが可能です。ただし、クレジットカード納税には決済手数料がかかってしまいます。ここからは納税方法の新制度と関連する電子納税に絞って説明します。
電子納税の基礎知識→見出し②は全体的に軽く説明します。
電子納税とは、インターネットなどを利用して国や地方公共団体へ税金を納税する仕組みのことを指します。
国税の電子納税
国税の電子納税は事前にe-Taxの利用開始手続きが必要であり、具体的な方法は次の2つに大別できます。
(1)ダイレクト納付
電子申告または納付情報登録をe-Taxで送信後に、納税額を指定した預貯金口座から振り替えるのがダイレクト納付です。ダイレクト納付の実施予定日よりも1ヵ月前ぐらいに「国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書」を税務署に提出する必要があります。
(2)インターネットバンキング等による電子納税
インターネットバンキング、モバイルバンキング、ATMからPay-easy(ペイジー:税金・各種料金払込みサービス)で納付します。ペイジーが使える金融機関のインターネットバンキング口座またはモバイルバンキング口座を開設する必要があります。
地方税の電子納税
令和元年10月から地方税共通納税システムが導入されました。電子納税に対応できる税目が地方公共団体ごとで違うというデメリットを解消する狙いがあると考えられます。次からは地方税共通納税システムについて詳しく見ていきます。
地方税共通納税システムとは
地方税共通納税システムのアウトラインについて説明します。
共通納税とは
共通納税とは、電子納税により地方税をすべての地方公共団体へ一括納税するシステムです。対象税目は次の通りです。
(1)申告する税金
- 法人都道府県民税(=住民税)
- 法人事業税
- 特別法人事業税(地方法人特別税)
- 法人市町村民税(=住民税)
- 事業所税
(2)給料にかかる税金
- 特別徴収にかかる個人住民税
言い換えれば、地方税でも共通納税システムの対象から外れている税目(固定資産税や自動車税など)は従来通りです。電子納税の対応の有無は地方公共団体ごとによって違ってきます。
共通納税のメリット
導入前に比べて、共通納税のメリットは次の通りになります。
- すべての都道府県、区市町村を対象として、複数の地方公共団体へ一括納税ができるため、事務負担が軽減される
- 電子申告データや特徴税額通知データを共通納税システムに連動させて納税ができる
- 事前に登録した銀行口座を指定して、地方税のダイレクト納付ができる
- 地方公共団体が指定する金融機関以外の金融機関からも納税ができる
- 共通納税システムの利用による手数料は無料
共通納税の手数料
共通納税システムの利用による手数料は無料ですが、納税方法ごとに金融機関への手数料は次の通りになります。
- ダイレクト納付:無料
- インターネットバンキング等:金融機関によって手数料が発生する場合もある
納税の手続きの方法
共通納税システムの肝となる納税の手続きの方法について深く掘り下げて説明します。
電子申告データと連動させる方法
電子申告データおよび電子データによる特別徴収税額通知と連動させて納付する方法です。「法人事業税などのeLTAXで電子申告した税目」および「税額通知が電子的に送付されている退職所得に係る納入申告・特別徴収の個人住民税」が連動の対象になります。
納付金額等を直接入力する方法
納税先となる地方公共団体、税目、納税額などの情報を新規入力して納税する方法です。共通納税システムの対象税目のうち、電子申告データなどと連動できない次の税金が直接入力の対象になります。
- 法人事業税などの申告する税金の見込納付、みなし納付、更正・決定に関する納付
- 税額通知が電子的に送付されていない特徴徴収の個人住民税
まとめ納付(複数の地方公共団体へ一括納付)の方法
まとめ納付の手順について説明します。
(1)納税メニューを開く
納税メニュー画面で「電子申告連動」をクリックします。
(2)納付したい申告情報を選択する
納付対象申告一覧画面で事業年度などの検索条件を指定し、納付したい申告情報を選択します。事業年度ごとに同一手続(同じ税目)の申告について複数の地方公共団体へ一括納付できます。
(3)納付先の明細を確認する
納付・納入金額一覧で納付先の明細を確認します。たとえば、特別徴収をした個人住民税は従業員の住所を管轄する地方公共団体が複数でも一回の手続きで納付することが可能です。
(4)納付情報発行依頼をする
納付・納入金額確認画面で納税額などを確認し、納付情報発行依頼をします。
(5)納付情報出力結果の確認し、納税を実行する
納付情報一覧画面で、納付情報発行後、納付状況が「納付可」であることを確認し、該当する納付情報を選択・納付をします。
まとめ
ユビキタス社会の「いつでも、どこでも」というキーワードが象徴するように税金の納付先や時間の制約がなくなりつつあります。2019年10月から導入された地方税共通納税システムによりユビキタス社会を加速させる可能性が高まっています。このタイミングで電子納税に積極的に対応してはいかがでしょうか。
▼参考URL
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6617.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6617_qa.htm#q1
- https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/24200042/noufu_houhou.htm
- https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20150515-01.html
- https://www.eltax.lta.go.jp/kyoutsuunouzei/gaiyou/
- http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/car.html
- https://www.e-tax.nta.go.jp/tetsuzuki/tetsuzuki4.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/pdf/24100030_4-2.pdf
- https://www.pay-easy.jp/where/
- https://www.city.gifu.lg.jp/32618.htm
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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